「競合からいかに学び成長するか」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第35回
競合は自社の成長にとってかけがえのない存在
競合分析はなぜ行うのか?競合とは自社にとってどのような存在なのでしょうか?競合は以下のようないくつもの理由で自社にとって大変重要な存在です。
- 自社の商品が顧客から引き出す顧客経験価値の独自性を比較する対象であること。自社の違い、独自性を考えさせてくれること
- 自社に常に緊張感と、生存や成長意欲を与えてくれる存在であること
- 共に市場をつくり、顧客に認知してもらい、拡大する仲間であること
- 自社と競合とサプライヤーやデュストリビューターを育成して、エコシステムを強く大きくすること(共生)
- 競い合い、学習しあう中で、互いの商品や事業が強くなっていくこと(共進化)
一方ライバルを意識するあまり、競合に打ち勝つことばかり考え、顧客から目が離れてしまう場合もあります。その結果、大事な顧客経験価値は放っておかれ、競合とのスペック競争となってしまっている産業も少なくありません。競合を常に意識し、競争意識を失わないことは大事ですが、その結果、それぞれの独自性を発揮し、互いに棲み分け、エコシステム自体が繁栄すれば良いと思います。
競合の種類と最も脅威となる競合とは
競合にはいくつかのカテゴリーがあります。
一つ目は戦略グループというもの。これはある特定範囲で常に競争関係になっている競合商品です。例えば、自動車で言えば、同じセダンで排気量1500CCから2000CCのクルマという感じです。常に顧客の比較検討対象になっている競合範囲です。
二つ目は産業内競合です。真っ先には顧客の比較検討にはなりませんが、少し検討を進めると選択に入ってくる領域です。同じクルマの例で言うと、セダンだけでなくワンボックスカーやコストパフォーマンスのよい軽自動車までの少し範囲を広げた競合です。
三つ目は代替品、新規参入です。これは全く異なる業界ではあるが、顧客経験価値の奪い合いという点で競合になっている商品や企業です。これまでも述べてきましたが、市場において既存企業と呼ばれる存在の最大の脅威はこの代替品・新規参入です。
革新的な顧客経験価値創造という点では、自社商品が代替品、新規参入の存在となります。インターネット普及後の世界では、業界間競争、エコシステム間競争による破壊的な参入が今日の市場競争のメインだと思います。
競合の現在と過去だけを分析してもあまり意味がない
競合分析とは競合の何を分析するのでしょうか。よくあるのが情報として入手しやすい競合の現在と過去だけを分析して終わるケースです。しかし競合と競い合うのは将来です。従って重要なのは競合の将来戦略を読み取ることです。
競合の将来戦略はどうしたら解るのか?もちろん完全には解りません。私の経験知ですが、競合の部長クラスが把握している競合情報の20%も入手するのが限界で、それ以上把握しようとすれば膨大なコストがかかったり、自社の挙動が競合の知るところとなり、むしろ不利になったりする可能生があります。その限られた中で、競合の情報収集の方法はいくつかあります。
①公開されている競合のトップマネジメントの戦略や方針から読み解く
上場企業であれば、経営トップは株主はじめステークホールダーに対し、将来戦略をある程度公表します。新聞などマスコミ、業界紙へのニュースリリース、会社のホームページなどです。そういったものを丹念に読み、戦略を推定します。競合の経営トップの発言をテキストマイニングしてみるのも効果的です。
②特許情報や開発組織情報を分析する
技術特許の取得は競合の将来の大事な方針を表す情報です。自社の対象商品に関わる競合の特許情報を分析し、どの市場にどのような技術、商品で参入してくるのかを分析し、推定します。異業種の特許情報は見逃しがちなので、多面的に調査することが重要です。また研究開発組織の新設、研究者の増員などの情報も競合の将来の動きを把握する上では大事です。比較的大きな企業の人事異動の情報は一般紙、業界紙に公開されています。
③未来ビジョンや展示会出展の次世代モデルを分析する
オープンイノベーションなどを目的に、未来ビジョンを公開する企業が増えていますが、そういったものを構想するには資金と時間がかかりますので、本気で出している企業がほとんどだと思います。また展示会でも次世代モデルをデモンストレーションします。そういった未来ビジョンから競合企業の将来戦略を読み取ります。
大事なのは競合の戦略に対する対応策
せっかく競合分析しても十分な対策をとらず、競合の動きを放置する企業も少なくありません。なぜなのか?よくわかりませんが、どこかの一部のカテゴリーでトップシェアを持っている企業に多く見られるように思えます。全ての事業、ましてや新商品、新事業はマイノリティになのにも関わらず、意識と行動は鈍いのです。これでは、まったく勝負になりません。競合の戦略には必ず具体的な対応策をアクションレベルで計画するべきです。