「SWOT分析は自己認識レベルをストレートに表す」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第47回
事業構想書としての「SWOT分析と事業成功の要因」は、前にも述べた通り、構想書前半の分析部分と後半の戦略企画部分のちょうど折り返し地点です。折り返しのためには一旦、顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデル仮説とその検証結果の整理が必要で、それがSWOT分析です。SWOT分析の単位は商品ではなく、商品を含む事業、それはイコール顧客経験価値です。なぜなら独自の顧客経験価値を生み出すための強み、弱みは、商品単位ではなく、それを生み出す組織である事業単位、必要によっては企業単位、さらに連結経営単位で分析するべきだからです。つまり組織が強みとなる経営資源を活用できる可能性があるからです。また競合との比較の弱みや脅威を分析する際も、顧客経験価値での競争を前提に、競合の商品だけを見るのではなく、事業、経営、連結経営単位、場合によっては競合のアライアンスパートナーやM&Aの可能性も視野にいれて分析しなければなりません。実際競合のM&Aで急に劣勢に立たされたという話は少なくありません。
SWOT分析は、単位4つの箱の中に情報を入れ埋めるだけならば戦略構想としての意味はほとんどありません。これまでの検証結果を踏まえて、独自の顧客経験価値を創造し、競争優位に立てる戦略を企画構想するために商品、事業を俯瞰して見ること、その組み合わせから効果的な事業成功の要因を探し出すことが重要なのです。
事業成功の要因は、顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデル仮説のあるべき姿をイメージしつつ、それを実現させるために必ずおさえるべき要件です。弱み、脅威という制約条件をしっかり見据えれば、強み、機会の活かし方もはっきりします。ただしどんな会社、事業でも実際それほど多くの選択肢があるわけではなく、ごく限られた選択肢があり、それを企画、創造できるかにかかってくると思います。ビジネスの実践では、このSWOT分析を安易に行い、非現実的な事業成功の要因を挙げたり、その反対に過去の延長戦上のほとんど効果のない業務課題を挙げたりしてしまうことがよくあります。
またこの段階で分析不足に気づくこともあります。分析不足とは、顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデル仮説のあるべき姿と成功要因が直結しない、またはあるべき姿を達成しても競争優位にならないといった状況です。分析不足の原因には主に以下のようなものがあります。
①実際の対象にするべき事業領域よりも狭い範囲で分析した場合(範囲の問題)
②マーケティングリサーチ、顧客経験価値や商品のPoCなどにおけるリアリティの欠如。事実よりも想定が多く、現実的ではない。企画に有利な分析が多い。(内外の環境分析の浅さ)
③自社の強み弱みが十分に把握できていない。またその認識が過去の延長線上である場合(自己認識の甘さ。自己認識の思考転換ができていない)
④あるべき姿とその目標値が低い。競争上意味がない数字を挙げている。その売上目標を達成しても市場インパクトがない、市場に認知されていない程度の目標をあげる。(安易な挑戦的でない目標)
⑤分析の数と量は多いが、その中から本質が分析しきれていない。仮説に照らして何が重要なのかが捉えられていない(仮説検証の本質性の低さ)
分析不足を認識したらどうするか?即分析に戻ることです。