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戦争、災害を超えて「心地よい暮らしと仕事」を目指して

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

能登半島地震をはじめ、年始に相次いだ災害・事故の被害にあわれた皆様へ、心からお見舞い申し上げます。

2024年1月1日に発生しました令和6年能登半島地震で被害に遭われた石川県、富山県、新潟県をはじめとする被災地域の方々の一日も早い復興を願います。この地震により亡くなられた多くの方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。また翌日2日の羽田空港での事故でお亡くなりになった海上保安官5名の方々のご冥福をお祈りいたします。今後も発生可能性のある国内外での災害への対策、また発生後の復興のあり方など、微力ではありますが、当事者意識をもって改善していきたいと思います。

能登半島地震、羽田空港での事故、加えて北九州での大規模な火災などきわめて厳しい環境下での新年のごあいさつとなりますが、皆さま本年もどうぞよろしくお願いします。

世界で増加する自然災害と戦争による犠牲

自然災害に関して2023年を振り返りますと、日本で起こった災害は多く、6月初旬に四国、近畿、東海、関東で降り始めからの雨量が400ミリを超える豪雨、同じ6月下旬から7月初旬には大分県、佐賀県、福岡県で1,200ミリを超えたほか、北海道地方、東北地方、山陰および九州北部地方(山口県を含む)で7月の平年の月降水量の2倍を超える、大きな水害が発生しました。

また5月の1ヵ月間のうちに全国各地で震度5弱以上の地震が6回も発生し、6回のうち最も規模が大きかったのが今回と同じ石川県の能登半島沖で発生した最大震度6強の令和5年奥能登地震でした。2023年は関東大震災から100年目で、相模トラフ、南海トラフでの大きな地震の可能性を考えさせられました。

世界でも、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が「温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が訪れた」と発言するなど、2023年は過去に例をみない暑さでした。2023年6月から8月にかけてカナダ東部で類を見ない大規模な山火事が起こり、その煙が国境を越えてアメリカ側に流れ大気汚染が深刻になりました。また8月にはハワイ州マウイ島で山火事が発生し、ハリケーンによる強風によって火が拡大。ラハイナの街の大半が燃え死者は97人にものぼりました。

2月上旬にはトルコ南部で大地震が発生し隣国シリアと合わせ5万7,000人以上が死亡。8月のモロッコの地震では2,900人が亡くなりました。予測が難しい地震の災害に加え、気候変動で世界の災害は増加しています。

自然災害だけでなく戦争でも多くの命が失われています。少し古い情報ですが、2023年8月時点の米国ニューヨークタイムズの調べでは、ウクライナとロシアの戦争で、ウクライナの死者が7万人、ロシアの死者が最大12万人、両国合わせた死傷者は50万人以上いると報じられています。イスラエルとガザの戦争では、双方の当局発表の累計死者数は2023年12月27日時点でガザのパレスチナ人 21,100人、イスラエル人1,200人以上と報じられています。(出所:OCHA)

企業は安定した社会を維持、改善する義務がある

新型コロナウイルス感染症がある程度収束しても、自然災害や戦争で多くの個人、家族が、生命さえ守ることができない状況に置かれており心が痛みます。企業の経済活動のベースには、安定した社会の存在が必要不可欠です。個人の安全や生理的な環境が確保された上で、個々人が自由で、生き生きとした社会生活を送ることができます。私たち産業人はその安定した社会の維持、改善に積極的に関与することが求められます。

地域といかに共生していくかは、企業の大きな使命です。また企業はその業種の職務や高度な専門性を生かして、強い社会基盤構築に参加しなければなりません。

近年企業でも「社会課題の解決」がよく言われるようになってきておりますが、新事業開発のネタの一つとしか考えられていないのではと思うことがあります。今回年始に起こった災害や重大事故などがなくても、「地域社会基盤が崩れれば、企業活動は継続できなくなる」「企業の繁栄と地域社会の繁栄を両輪で回さなければ企業は存続できなくなる」という危機意識が根底になければ「社会課題解決」というメッセージも響いてきません。

金沢市郊外に古民家ホテルを開業

話は変わりますが、昨年12月ごろ金沢市中心から車で20分ほどの七曲町に、小さな古民家ホテル「Onsen&Garden 七菜」を建てました。七曲町は、浅野川がこのあたりで大きく数回屈曲していることから、古くは江戸時代あたりから「七曲」と呼ばれ、いまは民家7軒のひっそりとした農村です。

地域の皆様や建築に携わって下さった多くの皆様のおかげで昨年11月23日からようやく日帰り温泉とカフェをプレオープンという形で始めることができました。客室の内装家具がいまだ制作中のため、ホームページも公開できておりませんが、口コミで地元のお客様に少しずつお越しいただいており大変うれしいです。

「Onsen&Garden 七菜」の経営は、昨年東京から移住した私の娘と娘の夫が担当しております。ホテル経営経験のない若い二人は、ホテル建設前から数えきれないほどの回数、地域の方々に様々なことを相談させていただき、今も毎日何かしらのご支援をいただいております。現在玄関に飾ってあるとても立派な門松も、七曲町の方がつくってくださいました。年末に降った大雪の際にも、慣れない二人の除雪作業をご支援いただきました。またホテルに飾る沢山のお花をくださったり、畑でとれた野菜を下さったり。地域の方々の温かいご支援に感謝の気持ちでいっぱいです。

地域で事業を経営する責任

今回の能登半島地震で、Onsen&Garden七菜も多少被害がありましたが、幸い大きな損壊はありませんでした。小さいながら地域の方の防災拠点としての役割を担っていくつもりでしたが、反省することが沢山でました。食料、水の備蓄が不十分であったことや、子供や大人用の紙おむつの用意が不足していたこと、水道が止まった際にも利用できる近くの湧き水のインフラが乏しいことなどです。一方、建物の堅牢性、太陽光発電、太陽温熱器、電動車も含めた蓄電池(トライブリッド)、大型の薪ボイラーや冬でも半袖でいられるぐらいの床暖房設備、天然温泉を利用して24時間入浴可能なことなどは、地域にある程度貢献できるものと思いました。

今回のような地震、風水害があった場合、七曲地区の皆様は当然ですが、近隣の方々にもご利用いただけるインフラを持ち、知識・スキルを向上させていくことが必要であることを再認識いたしました。

また弊社は東京に本社をおいておりますので、地方、必要であれば海外のネットワークを活用することも考えておかなければなりません。そのためには情報の発信力強化、支援要請できる外部との関係性構築、資金的経済基盤の強化が必須です。

「心地よい暮らしと仕事」を目指して

「Onsen&Garden 七菜」のパーパスは「心地よい暮らしと仕事」です。

誰しもが仕事や生活に追われる中で、期間は短くとも、休日の過ごし方や、日常の暮らしを自分にとって充実した時間にできないかと考えました。それがたとえ今回のような災害時であっても、誰でもお越しいただけて、心地よく休息ができる場、必要に応じて落ち着いて自分のペースで仕事もできる場を目指したいと思います。

「Onsen&Garden 七菜」がご宿泊のお客様をお迎えするグランドオープンは2024年5月の予定です。時代は時ともに変わっていきます。時代が変わっていく中であっても、「心地よい暮らしと仕事」を体験いただける場を作っていきたいと思います。そのためには「試しては変え」の試行錯誤が永続的に必要だと思います。したがって終わりはありません。今回のような大きな災害はこれからも起こると思います。2024年は終わりがない仕事を始める年となりました。

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