
次期中計に市場イノベーション構想はありますか?
最近のマスコミの報道で、2017年の企業業績が好調であると聞きます。株価もバブル期以来、これまでになく好調のようです。しかし好業績企業も、実際は3つに分かれると思います。
一つ目は、市場は決して拡大成長していないが、厳しいコストダウン、スリム化を徹底して行ってきたことにより、高い利益を生み出した企業。
二つ目は、事業領域は変わっていないが、オリンピックやインバウンド需要などで業界自体が成長し、高い利益を生み出した企業。
三つ目は、変化し衰退する業界もある中で、業界を超えたサービスを提供したことにより高い利益を生み出した企業。
この中で利益が出ているにも関わらず社員の元気や活力がない企業は、一つ目の「コストダウン、スリム化企業」です。今は活性化していますが、先行きが見えないのが二つ目の「業界自体が成長している企業」です。今は苦しみながらも、中長期先に広がりが見えそうなのが、三つ目の「市場イノベーションに努力している企業」です。
誰もが判るとおり、同じ利益が高い企業の中でも、三つ目の企業が最も持続的な成長力を持ちます。一つ目、二つ目の企業は2020年以降、急激に業績が悪化する可能性があります。なぜなら、これから起こるであろう変化に対応する能力やスキルが乏しいからです。
ちなみに、三つ目の企業でも現在は低利益の企業や事業部門はたくさんあります。正しい投資家が投資したい企業、若い人が引きつけられる企業とは、現在の利益水準に関わらず、市場イノベーションを仕掛けている企業です。
「今年ももう終わりだなあ」と感じ、次期中期経営計画、来年度予算計画の議論の尻に火がつく時期ですが、みなさんの会社、事業部門、そしてみなさん自身はこの3つのタイプのどれに当てはまるでしょうか。IoT(Internet of Things;モノのインターネット)、シェアリング・エコノミー、AI、仮想通貨などは、バズワード化され「もう聞き飽きた」といったトレンドですが、経済、産業の実体面をみると表には出ない形で確実に浸透し、変化してきています。次期の計画には、変化の本質を見極めた市場イノベーション構想が入っていますでしょうか。また、そのための課題が明確で、アクションは見えているでしょうか。
では、三つ目の市場イノベーションを起こす構想とはどのような点を押さえたものなのでしょうか。ここでは大きく3つ挙げました。みなさん、次期の計画を思い起こしながらチェックしてみてください。
市場イノベーション構想視点① 業界、専門分野を超えたサービスで顧客の予想を大きく上回るベネフィットを創出しているか?
ここではあえて、ハードであっても“サービス”と言います。お客様に提供されるものが“ベネフィット”(便益)であり、売り手視点の製品(ハード)ではないからです。お客様が最終的に得るものが何であるか、その上位の目的がどのようなものかを把握し、これまで自社が提供してきた製品(ハード)にこだわらず、新たなものを企画発想しているかです。
例えば、電気自動車向けの電池のビジネスであれば、電池を供給することで、最終的にお客様に何を供給しているのか、さらにはお客様が現在は想定していないが、お客様の本質的な目的に沿った潜在的なベネフィットは何かをゼロから創造し、他社に先駆けていち早くお客様に提案することです。
その際、私はコンサルティングの現場では、「現在の顧客価値の2倍以上のベネフィットがあるか」と問いかけます。1.3倍、1.5倍のベネフィットでは、顧客も取引先もそのメリットをさほど認めてくれず、これまでと同じ価格を要求されるからです。また企画する際に、過去の発想を捨てることができるからです。
上記のように2倍以上のベネフィットを目指してお客様視点でサービスを企画するとなると、大概これまで自社が関わってきた業界や専門の領域を越えることになります。そうすると、他業界とうまく連携することが必要になります。しかし、実際に他業界と連動するとなると、多くの障壁が現れます。例えば、機密保持を意識しすぎて自社の情報を出したがらないことや、言葉が異なる他業界とうまく連携できる人材が少ないこと、たとえ連携したとしても経営トップがその企画を理解できず、なかなか意思決定できないことなどです。アライアンスや合弁事業など、どのような事業形態をとるべきかに関する知識や経験が少ないことも障壁になります。
この様な障壁を越えるためには、連携に関する知識、スキルを身につけ、人材を育成し、失敗を許容し、いくつかのプロジェクトを経験しなければなりません。
記事をご覧いただくには、メルマガ会員登録が必要です。
メルマガ会員登録は、無料です。
是非、この機会に、メルマガ会員登録をお願い致します。
メルマガ会員登録はこちらです。