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コア技術を生かした革新的価値創造とは

強いモノづくり企業にはコア技術戦略がある①

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

強いモノづくり企業に共通していること

世界中の「強いモノづくり企業」には、本業のコア技術を活用して新市場・新ドメインで技術ブレークスルーを起こし、事業を成功させているという共通点があります。以下、いくつかの例を見てみましょう。 

・富士フイルム
まず挙げたいのは、過去30年間で2回の環境激変を乗り越えた富士フイルムです。1990年代、フィルムカメラの衰退に伴ってフィルム需要が急減した際は、カメラ事業のデジタル化シフトを成功させました。2010年代に入ると、今度はスマートフォンの普及でデジタルカメラの市場が縮小しますが、同社は積極的に多角化を推進。ライフサイエンス、化粧品、電子材料・高機能素材といった事業を立ち上げて成功させ、2025年3月期は売上高約3兆1,958億円(前年比 +7.9%)、営業利益は約3,302億円(前年比+19.3%)を達成しています。このように2度にわたって危機克服が可能だったのは、写真フィルム製造に内在する多層的なコア技術を事業多角化につなげることができたため、と言われています。

・3M(スリーエム)
壁面などの表面仕上げ用化粧フィルムである「ダイノックフィルムTM」は、粘着、フィルム印刷、表面加工といったスリーエムのコア技術を生かした画期的製品です。欧米での規制の強化に伴う米国市場からのPFAS製造撤退の危機感から、数名の日本人スタッフが粘り強く技術開発と市場開拓を行ない、高級ホテルや店舗のみならず、新幹線の内装などの新用途をブレークスルーしました。建物などの構造を変えずに短期間で高級感ある空間を創出できるダイノックフィルムは、いまや建築設計デザイン事務所やリフォーム事業者の間で知らない人はいないほどです。

・GORE(ゴア)
GORE-TEX(ゴアテックス)で知られる同社にとって最初の扉を開いたのは、1969年、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)」というポリマー素材を、ある条件下で急速に延伸させた「ePTFE(延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)」という素材の開発に成功したことです。以来、その優れた強度や独特の微細構造の特徴を利用し、シューズ、登山はじめアウトドア用品などで最終商品の付加価値を上げることに成功。現在GORE‑TEXはテクノロジーブランドとしても世界に広く認知されています。

・ホンダ
HondaJet(ホンダジェット)は、本田技研工業の航空機事業子会社、ホンダ エアクラフト カンパニーが開発した小型ビジネスジェット機です。バイク、自動車などで培ったエンジンの燃焼技術、空気抵抗低減技術、軽量化のための素材コア技術、キャビンスペースの居住性技術などのコア技術生かして事業化に成功しました。特に主翼上面にエンジンを配置する「OTWEM (Over-The-Wing Engine Mount)」方式は大きな技術ブレークスルーで、高速、省エネ、低騒音、キャビンスペース拡大など革新的な価値を創造しました。

ニューチャーの書籍ご紹介

『顧客経験価値を創造する商品開発入門』
『顧客経験価値を創造する商品開発入門』
「モノづくり」から「コトづくり」へ 時代に合わせたヒット商品を生み出し続けるための 組織と開発プロセスの構築方法を7つのコンセプトから詳解する実践書
高橋 透 著(中央経済社出版)
2023年6月29日発行
ISBN-13 : 978-4502462115

 

『デジタル異業種連携戦略』
『デジタル異業種連携戦略』
優れた経営資産を他社と組み合わせ新たな事業を創造する
高橋 透 著(中央経済社出版)
2019年11月13日発行
ISBN-13 : 978-4502318511

 

『技術マーケティング戦略』
『技術マーケティング戦略』
技術力でビジネスモデルを制する革新的手法
高橋 透 著(中央経済社出版)
2016年9月22日発行
ISBN-10: 4502199214

 

『勝ち抜く戦略実践のための競合分析手法』
『勝ち抜く戦略実践のための競合分析手法』
「エコシステム・ビジネスモデル」「バリューチェーン」「製品・サービス」3階層連動の分析により、勝利を導く戦略を編み出す!
高橋 透 著(中央経済社出版)
2015年1月20日発行
ISBN:978-4-502-12521-8