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あなたの会社の社員は「What」や「コンテンツ」を生み出す知識スキルを持っているか?

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

■3年次研修以降一切研修がない状況

 3ヶ月前、中堅エンジニアリング会社の幹部候補研修キックオフにメイン講師として出講しました。そこで、開始前の受講生の会話で「○○さん、会うのは入社3年次研修以来だね。あれからもう20年も経ったんだ、懐かしいね。あれから研修なんてなかったしね・・・」というものを耳にしました。
 これはすなわち、この会社では入社3年目以降20年間も研修という形式で社員を教育することが無かったということです。そこでこの会社の財務・業績を振り返ってみると、20年間ずっと横ばいです。横ばいということは、売上の観点では成長していないということです。もちろん20年の間に、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災での売上の低下があり、大変な環境変化の中でそれを乗り越えてきた努力は並大抵のモノではなかったと思います。しかし、ビジネスモデル、つまり収益構造はほとんど変わっていないのです。簡単に言えば、仕事に対する発想や取り組み方がほとんど変わっていないということです。
 この会社では昨年社長が交代し、社員の発想、思考を変えない限り成長は無いということを痛感して、まずは幹部候補研修からということで本格的に人材投資を始めました。今年中に全社員に何らかの研修に参加してもらい、強い問題意識を植え付けたいという考えです。人が変わらなければ仕事は変わりません。仕事が先に変わり人も変わらざるを得ない状況では、社員は被害者意識ややらされ感を持つことになり、組織の勢いは低下してしまいます。

■20年間で環境が激変しても、仕事のスタイルは変わらない

 皆さんが関わっている市場の20年間を思い浮かべてください。製品・サービス、価格、グローバル化、低価格化、技術イノベーション、IoT化など、変化の多さには事欠かないと思います。しかし、仕事のスタイルはどうでしょうか。基本的に「20、30年間全く変わっていない」という会社も少なくありません。これだけ環境が変化しているのにも関わらず、仕事のスタイルを変えず会社が存続しているのは、多くの日本企業が以下のような生産性向上の努力をしてきたからです。

①  人件費を初めとしたコストカットを行ってきたこと
②  ICT(情報通信技術)の導入で業務をデジタル化し、効率化を徹底してきたこと
③  生産拠点を新興国に展開し、製造原価を下げたこと
④  相乗効果の無い事業、開発から撤退するなど、集中と選択を繰り返してきたこと

 しかし一方でその反動も沢山あります。個人の生産性が限界に達し、精神疾患、いわゆるメンタルの問題が多くなったこと。下請け企業や請負へのコストの押しつけで経済的格差が広がったこと。創造的、発展的な仕事が少なくなり、仕事のやりがいが低下して若手の人材流出が増加したことなどです。

■「業務」中心の仕事スタイルでは勝てない

 こうした問題は、企業や官庁など日本の多くの組織が良くも悪くも「業務」中心のスタイルで勝負しているために生じています。業務=プロセス中心のスタイルとはすなわち、何をするかの「What」が既知である場合、それをいかに「安く」「効率的に」造れるかに強みをおいているということです。1970年代から1980年代まで続いた日本企業、社会の発展は、この業務力にあります。
 しかし市場が成熟し、さらにはインターネットなどのICTが普及してくると、業務中心の「How to」はあっという間にコピーされたり、外注化されたりしてします。その分、「What」や「コンテンツ」が大事になります。
 「What」や「コンテンツ」を生み出す仕事のスタイルは業務とは全く異なります。どちらかと言えば与えられたものを黙々と取り組むのではなく、その仕事の「本質的な意味」から問い直すといった面倒なことから「思考」しなければなりません。以前よりはだいぶ改善されてきましたが、未だに日本の教育は「記憶」重視で、発想のための「本質的な意味」を問い、考えさせるための教育は不十分だと思います。しかしながら、コツコツと積み重ねる受験で有名大学に合格し「人生最大の成功体験」を味わってしまった若者は、悲しいことにその後もコツコツやりさえすればなんとかなると思ってしまいます。実際に、皆様の会社や組織でもそういう人が多いと思います。

■人への投資なくして「What」や「コンテンツ」を生み出す人材はつくれない

 しかし楽観的に見れば、日本企業は業務中心の「How to」では世界一なのですから、「What」や「コンテンツ」もテコ入れすればダントツ世界一になることができるとも言えます。そのためには抜本的な改革が必要です。抜本的な改革とは、大きく3つあると思います。
 一つ目は「What」や「コンテンツ」を生み出す人材の採用、育成と評価、そして人材登用といった、人の「面」を変えることです。「What」や「コンテンツ」を生み出す人材を採用したり教育したりするには、まず人事部門の方々がその「What」や「コンテンツ」を生み出すことの楽しさ、会社としての必要性をセンスレベルで持っていないと無理だと思います。人事業務をこなすだけならアウトソーシングで十分で、その会社独自の「What」や「コンテンツ」とはどのようなもので、どういった人材がそれを生み出す可能性があるのかを鋭く洞察する力が無ければなりません。まずは、「What」や「コンテンツ」を生み出すきっかけをつくり、会社の重要メッセージとしての人材育成プログラムを持っていなければなりません。教育プログラムは、長期でハイコストなものである必要性は無いと思います。大事なのはきっかけと、会社としてのメッセージです。
 二つ目は仕事の場づくりの変革です。多くの日本企業、組織はOJTを大事にしています。それはとても良いことだと思いますが、OJTが単なる過去の業務の「How to」の伝達であるならば、それはむしろ組織運営にとって危険なことかもしれません。一つ目に上げた人材育成プログラムを現場で徹底的に実践する「場」が必要なのです。過去のよい所は踏襲しつつも、職場を「What」や「コンテンツ」を生み出す「場」に変えていかなければなりません。
 身近なことで言えば、会議もやり方改革の場になります。ファシリテーター、タイムキーパー、書記を決め、限られた時間の中で最大限の成果を出す会議システムを運用する等です。また、テーマグレード別の問題・課題解決のスキルパッケージを持ち、短時間で問題解決アイデアを出して早期に取り組むコトや、リーン・マネジメントのようにベンチャー式のスピードで仕事する仕組みなどです。これらは研修とセットで導入できると思います。研修のための研修でなく、場を変える、人を変えるための研修と現場での実践がセットになっていなければいけません。
 三つ目は評価することです。これは評価制度を変えることではありません。経営者、管理職が「What」や「コンテンツ」を生み出す人を純粋に評価してあげるということです。具体的にはみんなの前で褒めたり、できれば公式に表彰してあげたりする、または重要なプロジェクトを任せたり、少し予算を傾斜配分してあげる等、身近ですぐできることに取り組むことです。重要なのは、会社の経営者、管理職の価値観と姿勢です。

■人事部門は研修を即見直すべき

 こういった「What」や「コンテンツ」を生み出す人材を育てるためのコストはそれほど大きくないと思います。繰り返しになりますが、きっかけと会社の重要メッセージとしての「研修」をほぼそのまま現場で実践する「場づくり」、そしてできたら「評価」してあげることが重要です。
 多くの日本企業の人事部は、「階層別研修」とその変形の「選抜型ビジネスリーダー研修」、「新任管理職研修」、「管理職登用試験アセスメント」などに資源を配分しています。特にこの20年は、有名大学の教授やコンサルタントをコーディネーターにした選抜型ビジネスリーダー研修が盛んです。それも確かに必要ですが、教育のROIを考えて本当に価値のあるものなのかを見直すべきです。40歳、50歳を過ぎた部門代表で役員の椅子を約束されたかのような人たちの選抜研修は、本当に効果があるのでしょうか。それよりももっと多くの若手社員に機会を与え、仕事の現場を変えて具体的な成果が上がるものに投資すべきと思います。
 繰り返しになりますが、日本企業は業務中心の「How to」では世界一ですから、「What」や「コンテンツ」をテコ入れすればダントツ世界一になる可能性があります。その可能性は、人事部門の勇気ある革新的行動から始まると思います。
 少し過激な発言だったかと思います。皆さんのご意見ご感想をお待ちしております。

 

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