
「人的資本」を決してバズワードにしてはいけない
ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透
■A社は人材がごっそり抜けてX事業は展開不可能になった
エネルギー業界で最先端を走る人と話している時でした。「高橋さん、A社は人材がごっそり抜けてX事業は展開不可能になり、事業撤退するはずですよ」とその人は私に話してくださった。「事業展開不可能」「事業撤退」・・・。そのことを聴き私は大変ショックでした。なぜなら事業展開が困難になった直接的な原因が、人材の引き抜きだったからです。しかし私は直後に納得しました。世界中で注目されている成長市場分野にも関わらず、A社は曖昧な経営・事業戦略、資源配分の分散、人事の不透明さなど、事業の行き詰まりの原因をたくさん挙げることができました。
振り返ってみると、似たような話は結構あります。短期的利益を追求するファンドがZ社に資本参加すると新聞で発表があったその翌週、大量の人材が競合企業に流れはじめたとか、新規参入を狙うY社が、老舗の企業から毎年研究者を数名獲得しているなどです。このような人材引き抜きは、以前外資系企業の日本市場参入ではよくあることでしたが、今では、日本企業同士でもめずらしくなくなりました。優秀な人材の争奪戦が激しくなっているのです。
競合に転職する社員にしてみれば、「代わり映えしない中期計画」「古いビジネスモデル」「根拠のない予算計画」など自分の行く先が全く見えない経営の下で何年も働かされ、自分の人生をつまらないものしたくないと思うのは当然と思います。多少のリスクがあっても、転職のリスクより、転職しないリスクの方が高いと判断し、転職を決意するのです。
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