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「顧客経験価値重視の事業構想書は「論旨の展開」と「コンテンツ」の違いを明確に示すべき」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第42回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

ものの考え方の独自性は、ドキュメンテーションやプレゼン資料で表現する際も、その違い、具体的には「論旨の展開」と「コンテンツ」の違いを明確に示し、強くアピールする必要があります。顧客経験価値重視の商品開発での事業構想書も、考え方の違いを明確に反映させたものにします。

最初に独自の世界観とビジョンを示す

顧客経験価値を重視した事業構想書の展開、流れでは、最初に事業が目指す独自の世界観、ビジョンを示します。全てはここから始まります。この世界観、ビジョンは独自もので、事業に関わる人や組織にとって魅力的なものでなければなりません。具体的には過去に無い革新的な顧客経験価値を感じさせ、他の人や組織が共有したくなるものであるべきです。この世界観とビジョンは、事業構想書を作成する上で、最も時間をかけ、考えぬかなければならないものです。

世界観とビジョンを具体化した革新的な顧客経験価値仮説の提示

次に商品や事業が達成すべき新しくデザインされた顧客経験価値仮説を示します。この経験価値は世界観とビジョンを具体化したものでなければなりません。顧客経験価値仮説は、商品企画仮説やビジネスモデル仮説の前に示すべきです。なぜなら、新たな顧客経験価値仮説の構想があって、それを実現するために商品企画やビジネスモデルがあるからです。この順番を間違えないでください。商品企画やビジネスモデルがあって、顧客経験価値があるのではありません。あくまでも革新的顧客経験価値が先に設定されているべきです。ここまでがコンセプト部分です。

コンセプト仮説の検証をマーケティングリサーチとPoCで示す

コンセプトの提示が済めば、それを検証・分析したプロセスと結果を示します。検証・分析は大きくマーケティングリサーチと概念実証(PoC)で説明されます。マーケティングリサーチには、新しく提案された顧客経験価値を検証すべく、マクロトレンド分析、エコシステム分析、有望市場分析、ペルソナ、ターゲット顧客分析、競合分析などが含まれます。またPoCには、新たに設定された顧客経験価値仮説の実現に関するKPIと、実証実験によるその達成可能性が示されます。マーケティングリサーチと、PoCの結果からSWOT分析とそこから導き出される事業成功の要因が示されます。

検証結果を受けて戦略を顧客経験価値戦略から展開する

マーケティングリサーチやPoCで検証された顧客経験価値、商品企画やビジネスモデルの3つの仮説は、修正され、戦略として提示されます。戦略を展開する際にも、まずターゲット顧客、ペルソナと顧客経験価値戦略を最初に示します。それを実現するためにエコシステム・ビジネスモデル戦略を論じ、さらにそれらを具体的に開発するために、顧客経験価値開発のためのマーケティング戦略を展開します。顧客経験価値開発のためのマーケティング戦略とは、商品戦略、価格戦略、販売チャネル、コミュニケーション戦略、事業ドメイン、市場ポジショニングなどです。

プレゼンテーションの最後は実行計画とコミットメント

事業構想のプレゼンテーションの最後は実行計画とその計画へのコミットメントです。実行計画として、商品サービス開発を含む商品開発計画、ビジネスモデルやブランド、顧客コミュニケーションを含むマーケティング開発計画が必要です。さらに3年から5年間の事業開発ロードマップを作成し、事業計画とリスク分析、そのリスクの対応策の企画、当面半年ぐらいの期間のアクションプラン、実行組織体制などを作成し、実行へのコミットメントを示します。 

事業構想書自体が一つのストーリーであり、特別なエクスペリエンスであるべき

顧客経験価値重視の商品開発の事業構想書は、それ自体がその構想に対して投資することを意思決定する経営者に対し、一つのストーリーであり、特別なエクスペリエンスであるべきです。経営者自身の心の中に、革新的顧客経験価値を創造する当事者になりたいという意識をつくりだすためです。そのためには、繰り返しになりますが、強烈な世界観とビジョン、革新的顧客経験価値が重要なのです。その達成手段である戦略は様々な考え方や方法があってもよく、意思決定するスポンサーの意見も柔軟に取り入れるべきです。

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