「市場イノベーションの視点での商品・事業戦略仮説」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第12回
市場イノベーションの視点とは、自社のコアコンピタンスや顧客提供価値によって市場全体をどうイノベーション出来そうかという仮説です。
市場がイノベーションされたという状態を私は、「既存の市場であれば、参加企業が半分入れ替わるもしくは、参加企業が倍以上増加していること」と仮の目安を示しています。わかりやすい例で言えば、音楽はCDなどのハードを購入するエコシステム・ビジネスモデルからダウンロード型、そしてストリーミングする時代に変化していきました。いまクルマの業界も、クルマは買うものからモビリティの利用手段としてカーシェアやレンタルしたりオンデマンドで利用料を支払ったりする形式も出てきました。
多くの市場イノベーションは、IoTやAIなどの情報技術が関わっています。
人を介さずに自動で判断し、ジャスト・イン・タイムで知らせてくれ、また利用する側の情報も記録してくれます。プラットフォームさえできれば便利なアプリがたくさん開発され、供給され、市場が急速に拡大していきます。
近年の市場イノベーションの特色は、業種、業態を超え異業種連携で発生することが多く見られますが、その橋渡しになっているのもデジタル化、IT化などの情報技術です。
従来1つの業種でやっていたものが、顧客経験価値の視点からワンストップで提供できるようになり、さらにまたその中からニーズが創造され事業化され増幅されていきます。
そのほか、従来顧客が所有していたモノを利用形態に変えたり(所有から利用へ)、固定費や固定資産投資をシェアしリスクを下げたり、顧客のバリューチェーンを短くするために細かく業務を分業しアウトソーシングするといったモデルが生まれたりしています。
例えば最近の外食産業ではゴーストキッチンというビジネスモデルが注目されています。ゴーストキッチンとは、フードデリバリーの調理場所として、他のレストランのキッチンを借りたり、レストラン以外のキッチンを利用したりする方法で、従来の店舗型外食の市場をイノベーションすることで成長しています。
このように新たな顧客経験価値を提供することによってエコシステム・ビジネスモデルが変革され、その結果大きな市場イノベーションが起こっていきます。市場イノベーションの視点とはそういった構想仮説をイメージすることです。