多くの学生が考えていることの3つの共通点
大学の新学期が始まって、私が担当させていたくコンセプトメイクの授業も先週4月15日に始まりました。授業を始めてからちょうど10年経って、初めは40人だった学生が年々増加し、今年は300人を超えました。学生さんに教えてはいますが、実は教えるこちら側がたくさんのことを学んでいます。だから多くの学生さんとの出会いは本当にありがたいです。
毎回レポートを提出していただき、読み、評価して返すのですが、年々レベルが上がっています。実によく世の中をみて、判断し、知識を吸収しています。
すでに今年2回授業を行いましたが、多くの学生が考えていることには共通点が3つあります。それは、
1.チャレンジしない企業・組織には参加したくない
2.出来るだけ自由度を制約したくない
3.集団に依存しすぎない「強く柔軟な個人」をつくりたい
です。
1.チャレンジしない企業・組織には参加したくない
学生は親や先輩、ネットなどを通じて今の日本の大きな企業の実態を実に良く把握しています。「会社に入ってみないとわからない」ということではなく、自分で徹底して調べ、判断するよう努力しています。その中で多くの学生は、若い人の話を聴かない雰囲気の組織、上司や先輩がチャレンジしない組織に所属したら、自分は成長出来ず、スポイルされた時間を過ごさざるを得なくなり、社会から取り残されてしまうという意識を持っています。
2.出来るだけ自由度を制約したくない
起業・独立の環境が整い、スタートアップやNPO立ち上げなどがやりやすくなって、既に起業している学生も多くなってきています。また一旦大企業に入社しても、たとえ十分な給与や安定した地位がなくても自分の考えに従って仕事や生き方を選択している人が多くなっています。周りの魅力的な人が、自分の価値観を大事にして生きている姿を見て多くの学生も共感しているのだと思います。
そのためか、大企業、スタートアップ起業、NPOに関わらず、自分の生き方にあった職業選択のために自由度を維持し、制限したくないという意識が高いと感じます。一種モラトリアムなのか知れませんが、選択肢の幅を狭めないことを強く意識しています。他人との比較でない選択軸を持つことはとても大事だと思います。
3.集団に依存しすぎない「強く柔軟な個人」をつくりたい
どこにでもつきまとう日本独特の集団主義的な風土のマイナスの面に悩んでいる学生が多いと思います。もちろんその良さも理解しつつです。特に上智大学は海外での生活が長い学生が多いせいかその比率がかなり高いと思います。日本では人間関係のプロセスが解りにくく、「空気を読む」ことが求められている風土に疲れている学生も少なくありません。ですから授業で「個人が強くならないとダメ」とはっきり示してあげると、元気になります。
このような学生の意識を考えると、中堅社員やベテラン社員になって、チャレンジしない行動をとっているのは、まずそれだけで「社会問題」だなと思います。「それは前やったけどダメだったんだよ」「余計なことをやって失敗したら仕方ない」「社員を守るために今の業務をキチンとやる」と言っているのはすでに自身が社会問題の発生源になっていると自覚した方が良いと思います。
またダイバーシティと言葉では言うものの、実際は会社の短期業績で物事を考え、判断する、単一的な価値観の強制はよくないと思います。たしかに業績が悪いと給与も払えなくなるかも知れませんが、実はその短期志向こそが過当競争、価格競争に巻き込まれ、業績低迷の元凶である場合が多いのではないかと思います。
ですから少しまだるっこいかも知れませんが、若い人との会話を、長期的に物事を考える機会と捉えるぐらいでないといけないのはないでしょうか。
大学一年生は大体19歳か20歳。多くの学生は表には見せませんが、将来の人生を真剣に考え、悩んでいます。まだそれほど多くの知識を持たない彼らは、自分の考えや直観で判断していることが多いなと感じます。実はその考えや判断の軸は、自己の内面に正直で、しっかりしてることが多いと思います。そういった若い人から学ぶ機会が多いと思います。話題は何でもいいと思います。みなさんも周りの新入社員や若手と是非対話してみてください。