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「技術者は顧客経験価値を開発する中核メンバー」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第60回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

顧客経験価値重視の商品開発における技術者とは

技術開発の役割位置づけは大きく変わってきています。技術は今、モノを開発することではなく、顧客経験価値を開発することがミッションになりました。モノは顧客経験価値のひとつの要素でしかありませんので、技術者は、技術を開発する前に、顧客経験価値そのものの開発者でなければなりません。

したがって技術者は、顧客経験価値開発プロジェクトの中核メンバーの一員であり、顧客経験価値を実現させるために技術的側面で、顧客、マーケティング、外部パートナーなどと直接関わり、新たな顧客経験の方向性を素早く感じ取り技術に翻訳したり、先端技術の視点で新たな顧客経験価値を創造したりします。技術者は顧客経験価値創造の主体であり、支援者なのです。ここで技術者に求められるのは、顧客経験価値のデザイン力であり、技術的視点におけるその実現力です。

顧客経験価値のための技術は大きく3つあります。

①顧客経験価値を創り出すためのコアになる技術
自社と顧客が創り出す独自の顧客経験価値の中核になる技術です。電気自動車メーカーの米国テスラであれば、蓄電池の技術やモーターなどクルマとしての電動器機の制御技術などです。その技術がなければ顧客経験価値は存在しないというものです。多くの産業でコア技術が物理的な解決策を創出するものから情報技術を組み込んだ技術にシフトしていく傾向があります。情報技術の視点からフィジカルな面での問題解決をする、技術を捉え直したコア技術戦略が重視されています。

②顧客経験価値の情報面の技術
顧客経験価値には必ずオンラインでの情報提供、情報収集、問題解決など様々な情報機能を支える情報面の技術が必要となります。インターネットに関わるクラウド技術、IoT、AI、画像、音声、テキスト、セキュリティ、ユーザーインターフェースなど様々な技術が必要となりますが、リソース面を考えると、自社が開発するべき技術は、顧客経験価値やコア技術との関係から絞り込む必要があります。顧客経験価値と、それを実現するコア技術の独自性を確保するために持つべき情報技術とは何かを定義して、追求することが求められます。

③パートナーとのアライアンスのための接点となる技術
顧客経験価値はビジネスモデルを必要とします。ビジネスモデルは、自社だけで顧客経験価値を創り出すのではなく、必ずパートナーとの連携で創り出します。いかに有望なパートナーを引きつけ、自社のビジネスモデルを進化発展させるかが大事なポイントになります。その際に重要なのは、外部パートナーとのアライアンスの接点となる技術、例えば、接点部分の標準化技術や、プラットフォームの設計技術、パートナーがコンテンツやツール開発するための開発ツールなどです。これらも外部連携のためには大変重要な技術です。

技術開発計画

上記のような3分類で、技術開発を進めていくための計画を策定するのですが、商品開発、マーケティング開発同様、詳細な計画が存在することはないと思います。大きなビジョンと、顧客からのフィードバックを受けながらスモールスタートで顧客経験価値を斬新に開発していき、そのための技術開発になります。従って技術開発計画も、常に顧客経験価値のデザイン作業に参加しながら、それに必要と思われる技術を先行して開発または外部調達し、トライアンドエラーを繰り返しながら実装していくことをスケジュール展開することになります。具体的に技術開発計画とは、上記3つのカテゴリーの技術を先行して開発または外部調達するための目安となる大まかなロードマップと、直近半年から1年の計画を策定することになります。

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