顧客経験価値のための商品企画開発の実践

第28回「戦略として顧客経験価値をどのように企画するべきか?」
戦略として顧客経験価値をどのように企画するべきか?これまでカスタマーエクスペリエンスマップなどの分析を通じて顧客経験価値の全体像や、手がかりとしての重要なコンタクトポイントなどは把握しましたが、戦略としてあるべき顧客経験価値を企画するには、その本質を考え、絞り込みや重点化を検討する必要があります。
顧客経験価値を企画するためには、3つのことを前提にしなければなりません。それはカスタマーエクスペリエンスマップ、商品、ビジネスモデルです。
カスタマーエクスペリエンスマップでは、縦文脈である感覚、感情、思考、行動、共感の5つの経験が、横文脈として使用前、使用中、使用後などの時間の推移で流れていきます。その経験価値を理想の形で生成するための効果的な刺激剤が商品であり、パートナー企業を含めた顧客への情報提供やコミュニケーションです。顧客経験価値の企画とは、カスタマーエクスペリエンスマップから縦と横の重要な文脈と、商品とビジネスモデルが交差する部分を抽出し表現することになります。
戦略としての顧客経験価値の企画は、①顧客経験価値コンセプト②顧客経験価値要素③顧客経験価値ストーリーの3つで表現します。
①顧客経験価値コンセプト
顧客経験価値コンセプトとは、戦略としての顧客経験価値を特徴づける絞り込んだ訴求ポイントです。商品コンセプトの中の基本コンセプトと重なってくるかもしれません。顧客経験価値コンセプトは、カスタマーエクスペリエンスマップの中の、縦文脈である感覚、感情、思考、行動、共感の5つの経験が、横文脈として使用前、使用中、使用後などの時間の推移で流れていく中で、商品やビジネスモデルでもっとも効果的な刺激が発生する部分です。その部分をうまく切り出してわかりやすい表現をします。
例えば、ヤマハ発動機のロングセラーの電動自転車“PAS”は、開発者が電動アシスト自転車実験で試乗していた際、風に押されるような感覚で走ったことを感じ、開発当初「風のように」という顧客経験価値コンセプトを設定しました。ドイツの高級車BMWは「駆け抜ける歓び」を顧客経験価値コンセプトにしています。ヤマハ発動機もBMWも感覚、感情にフォーカスしています。JR東海は、「そうだ 京都、行こう。」という有名なコピーを創り出し新幹線での京都観光を効果的に認知させることに成功しましたが、「そうだ 京都、行こう。」は、思考と行動に重点が置かれ、その余韻で感覚、感情を呼び起こす優れた経験価値コンセプトだと思います。
このように顧客経験価値コンセプトとは、顧客経験価値の縦文脈と横文脈と、商品、ビジネスモデルが交差する部分をうまく切り出して表現するものだと考えると、直感に頼るのではなく、分析的、論理的に明確化できます。キャッチコピーにするための表現は、その上でコピーライターに任せ、選択すればよいと思います。
②顧客経験価値要素
顧客経験価値コンセプトだけでは、戦略としての経験価値企画が伝わらない場合が考えられるので、具体的に顧客経験価値の要素を表現しなければなりません。
表現の方法は、カスタマーエクスペリエンスマップ中で、戦略的に重要性の高い、つまり顧客を獲得、維持し、競合と決定的な差別化をする経験価値ポイントや文脈をいくつか見つけ、そこと商品、サービスとの関係を説明します。先ほどのヤマハ発動機PASの例でいえば、「蓄電池の着脱、充電が簡単でスマート」「ある程度の坂道でもスムーズな乗り心地」といった顧客経験価値コンセプトを説明する要因として示されます。
顧客経験価値要素は、たくさんあると焦点がぼやけわかりにくくなりますので、多くとも7つ、出来れば5つ以内に抑えた方が、戦略としてのメッセージ性は上がります。
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