夏休みの直後、そこがチャンスです。是非実行してみてください。
家族の都合もあり、夏休みに5日間ばかりニューヨークに滞在しました。せっかくなので、ニューヨークへ行った際には毎回ジャズやブロードウェイのミュージカルなどを楽しんでいます。とてつもない迫力、コンテンツの面白さ、プロ意識。それらが教科書通りでなく、各人の個性からのアウトプットであることにいつも強く感銘を受けます。大学時代、退官間際の経済企画庁出身の60歳のゼミの恩師に「先生が20代だったら何をしたいですか」と子どもっぽい質問をしたら「そりゃニューヨークで働きたいよ。だって世界中からいろんな才能、個性の人が集まっているからね・・・」とクールな先生がいつになく熱い口調でお答えになったことを思い出しました。
振り返ってみると、多くの日本の組織の行き詰まり感は、このあたりにあることは間違いないような気がします。やることが比較的明確な場合は、日本人のチームワークは平均して素晴らしい。世界ナンバーワンクラスです。しかし“What”何をすべきかから考える際には、基本的には“個人”から生み出されるコンテンツがものをいいます。「星野リゾートのおもてなしデザイン」という本が日経BPから最近出版され、とても良い本で、私は既に何回も読み返しました。全てのコンテンツは、星野リゾートの社内外のスタッフの個人的な熱い思い、アイデア、考えが元になっています。社長の星野さんが自らも一個人として夢を語り、それに刺激されたスタッフが個人の思いをぶつける。そこから素晴らしい施設デザインとおもてなしが生まれているのです。
仕事柄、新規事業、事業の成長戦略などに関わることが多いのですが、組織全体を見るのは当然ですが、光った個人を探すことを大事にしています。その個人が組織の中で埋もれていれば、いろんな理屈をつけてその人を表に引き出します。その前にその人が潜在的にもっているものを引き出すために、徐々にこちらの個性もぶつけていく。そこだけ聞けば雑談みたいなものですが、そういった会社ではなかなかできないアプローチで個人の個性から発するコンテンツを引き出し、形にしていくのが私の仕事です。
一方会社や組織で働く人も少しで良いので意識、行動を変えることが必要です。それを意識するために次のような5つの質問を考えました。
①自分は何が好きなのか?誰にも負けない得意分野は何なのか?
これまでの苦労、苦難も含め自分にしか出せないコンテンツは何か?
②その得意な分野で会社、市場で飯を食っていけるようになっているか?
③自分の強い所を他と結びつけるネットワークがあり、コラボレーションができるか?
④今の自分を越えた高いレベルの理想、理念を明確にもっているか?
⑤上記のことを一日の仕事生活時間の中で最低30%以上取り組んでいるか。
そういった環境を自分からつくっているか?
当然私も毎日自問自答しています。ここで大事だなと思うのが、よいコンテンツとは、人が生活し、仕事する中で直面する挫折とか苦労とか、さらには不幸のようなことからも生まれるということです。個人の個性と境遇、それを乗り越えるパワーといったようなことが大事なのです。つまり自分自身の内部をよく観ることなのだと思います。もちろんその反対の楽しいこと、うれしいことなども同じぐらい大事です。要は個人の強烈な経験が独自のコンテンツになるのです。
では、組織としては何が大事か?逆説的ですが“組織としての枠組みで考えないこと”だと思います。具体的にはリーダー、管理職、個人がどう思い、考えるかをメンバーや上司にぶつけることから始めないといけません。「おれ前からこれやってみたかったんだ。一緒にやらない?頼むよ。」と、自分が面白い、やってみたいと潜在的に考えていたことをさらけ出すことが組織としての第一歩です。極端な話、出来なくてもいいです。言うだけでも。意識を解放しておくこと、緩めて中から何かよいものが出てくる状態にしておくことが大切です。
しかし長年、よい組織人としてキチンと仕事してきた人は“自分がやりたいこと”より“組織が短期的にやらないといけないこと”から思考してしまいます。それは会社、組織が存続する上で大事です。こういった人は責められませんね。一生懸命やっていますから。
ではどうするか?私のアイデアです。そんなまじめな人でも夏休みはとります。家族と一週間ぐらい一緒に休暇をとって会社に帰ってくると、少なくとも出勤1日目の2、3時間はふぬけ感たっぷりになります。チャンスはそこです。その2、3時間は個人の本音が自然と出やすいタイミングです。そこで「何してきたの?」「何が楽しかった?」「何が新しい発見?」と会話すれば、そこから「個人の思い」を出しやすい関係が出来るかも知れません。夏休みの直後、そこがチャンスです。是非実行してみてください。