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「ヘルスケア×IoT」個人によるヘルスケア関連データ流通で実現する健康社会「パーソン・ドリブン・ヘルスケア社会」を目指して

ニューチャーネットワークス コンサルタント
会田 勝代

 前回のコラムで、「ヘルスケアIoTは日本発の重要な新産業となる」とお伝えしましたが、現在ニューチャーネットワークスでは、東京大学、北海道大学、広島市立大学、TMI総合法律事務所、インタセクト・コミュニケーションズ株式会社などと共に「ヘルスケアIoTコンソーシアム」の創立を企画し、来月2016年9月9日にキックオフミーティングを開催する予定です。今回のコラムでは本コンソーシアムのご紹介をさせて頂きます。

■ヘルスケアIoTコンソーシアムとは

 個人の健康・行動・環境などのデータを個人に集め、個人の権限で管理・運用・活用する「データ流通インフラ」と「IoTプラットフォーム」の構築、それにより個々人が健康意識を高め行動変容を起こすことで生活の質を向上させる社会を目指しています。そのためのヘルスケア関連産業の活性化や新規需要の創出支援、さらには、国民医療の経済性向上を目的とした産業横断的組織です。

■コンソーシアム創立の背景

 弊社ではNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)クリーンデバイス事業の支援を受け、2014年より北海道大学、広島市立大学らと共に、東芝製Silmee™を使用したウェアラブルバイタルセンサの用途開拓等に取り組んできました。この取り組みを通じて、ウェアラブルバイタルセンサのヘルスケア分野での活用においていくつかの有用なユースケースを見つけることができました。しかし、広く普及させるには、主に以下の3つの課題に取り組む必要があります。

① 垂直統合型のサービス
 現在ヘルスケア関連のサービスは、業界もしくは企業・サービスごとに縦割りとなっており、一部のサービスを除いて連携することが難しい状況です。また、個人の情報がばらばらに管理されているため、複数の種類のデータをあわせて分析することが困難で、せっかく取得したデータをフル活用出来ていません。

② 行動変容サポートの課題
 現在も、短期間集中型、長期間監視型など健康増進やダイエット関連のサービスは多数提供されていますが、人はそれぞれ身体特性や性格などが違うため、一律の方法での行動変容は容易ではありません。集団のビッグデータ解析だけでなく、その「個人」ごとに「個人のビッグデータ解析」を行い、個々人に合わせた内容とタイミングにカスタマイズされたサービスが必要なのではないでしょうか。それに加え、超少子高齢化が進み労働人口が減少していく日本では特に、私たち労働人口層がいかに効率よく成果をあげられるかということが経営の上でも重要となり、ますますこういった行動変容サポートが必要になると考えられます。

③ パーソナルデータの価値
 2011年の世界経済フォーラムで「パーソナルデータは次世代の石油だ」と言われましたが、現在様々なデバイスやソフトウェアから取得されているパーソナルデータを個人が自分の権限で運用し、利益を得るということはほとんどできません。中でもヘルスケア関連のデータは価値が高いにも関わらず、サービス事業者がデータを管理しているため、本来受け取るべき全ての対価を個人が享受できずにいます。

 

■ヘルスケアIoTコンソーシアム3つのミッション

 これらの課題を解決するために、本コンソーシアムでは以下の3つをミッションとして掲げて活動していきます。

 

ν	コンソーシアムのミッション

 

①パーソン・ドリブン・ヘルスケア
 まずは、ヘルスケア関連データを個人に集めることができるようにします。これをベースとして、個人が自分の意思と権限で自分のヘルスケアデータを流通させ、利活用できる社会の仕組みづくりを行います。

②ヘルスケアデータ流通
 個人がヘルスケアデータを流通させるために必要なセキュアIoTプラットフォームの開発を行い、これにより産業横断的にデータの収集、解析等を行えるようにします。そして個人認証、企業認証、匿名化技術により、データを個人ごとに集め(名寄せ)て流通させることのできる環境を整備します。

③行動変容と生活の質向上
 IoTプラットフォームに集められたデータに基づき、個々人に合った内容、タイミングでアドバイスが出来るようなシステムおよびサービスの構築を行います。個人が自分用にパーソナライズされた健康等のアドバイスを適切なタイミングで得られるだけでなく、企業が個人のデータもしくはビッグデータ化されたデータベースをマーケティングや新製品開発等に活用し、その対価をユーザーに運用益として還元できるようにします。

 本コンソーシアムはこの3つのミッションを実行することで実現する社会「パーソン・ドリブン・ヘルスケア社会」を目指し、活動していきます。

 

実現する社会イメージ

 

 本コンソーシアムでは「パーソン・ドリブン・ヘルスケア社会」の実現に必須となる法制度・標準化・共通化の取り組みについても、部会を設け推進していく予定です。

■ヘルスケアIoTコンソーシアムの組織体制

 本会の会長には、東京大学大学院教育学研究科の教授で健康情報学がご専門の山本義春先生にご就任頂くことになりました。理事会には、東京大学医学部附属病院心療内科科長の吉内一浩先生、TMI総合法律事務所のパートナー弁護士であり、東京大学法科大学院の教授でもある淵邊善彦先生、プラットフォーム開発をお願いするインタセクト・コミュニケーションズ株式会社の譚玉峰社長にご就任頂きます。そして弊社からは代表取締役の高橋透が理事として参画させていただきます。

 その他にも専門委員として北海道大学の教授でビッグデータのビジュアライゼーションがご専門の長谷山美紀先生など強力なメンバーで本コンソーシアムを推進してまいります。

 

コンソーシアムの組織体制(予定)

 

 ヘルスケアやIoT、データ流通は、多くの企業で注目され、取り組みが始まっておりますが、まだまだ情報が足りない、何をしたらよいかわからない、といった声をよく聞きます。本コンソーシアムでは、「パーソン・ドリブン・ヘルスケア社会」の実現を目指すだけでなく、ヘルスケア×IoTやデータ流通に関しての情報収集、発信、ネットワーキングの場としたいと考えています。定期的な総会・部会活動以外にも、少人数での勉強会やワークショップなども開催していく予定です。

 ヘルスケアIoT分野、データ流通にご興味のある方は公式ホームページをご確認頂き、入会をご検討頂ければと思います。

 

<問合せ先>

事務局(株式会社ニューチャーネットワークス内):info@healthcareiotcons.com
ヘルスケアIoTコンソーシアム公式ホームページ:healthcareiotcons.com

 

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