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製造業における個の能力を引き出す人材戦略(1)

株式会社イノービア 代表取締役社長
山川 隆史

多くの企業では、「企業は人なり」、「人材ではなく人財」、「人材育成は経営課題」というように、常に人材や人材育成の重要性が叫ばれています。ところが、実際に不況になると、真っ先に削減されるのは人材育成にかかる費用です。人材育成が大切なことはどの企業も認めるところですが、実は、経営上での優先順位はそれほど高くないというのがこれまでの現実でした。

しかし、ここにきて、激しい環境変化や競争のグローバル化を勝ち抜くために、競争力の向上という明確な目標を据え、経営戦略の優先課題として人材育成に取り組む企業が増えてきました。その取り組みは、ともすると精神論的であった旧来の人材育成とは一線を画し、非常に戦略的なものです。
本コラムでは、製造業を取り巻く環境や人材育成の現状を踏まえた上で、新しい人材育成の潮流である「個の能力を引き出す戦略的な人材育成・活用」についてご紹介いたします。

■厳しさを増す人材面の環境

製造業を取り巻く環境は激しく変化していますが、中でも人材面における環境は、今後、間違いなく厳しくなっていきます。まず、外部の環境を見てみると、「人材不足」が深刻な問題としてあげられます。特に日本国内では、少子高齢化による労働力の減少は避けることができません。加えて、若者の製造業離れも進んでいるため、将来的に製造業の人材不足は大きな不安要因です。また、人員不足に輪をかけるように、近年の技術変化の加速によって、社員の「スキルの陳腐化」も以前より格段に速いスピードで進んでいます。企業は、新しい人材の獲得だけでなく、社員の「スキルの陳腐化」へも対処を迫られています。
一方、社内に目を移すと、こちらも放っておけない問題が山積みです。「人材の流出」はその1つです。今の20代、30代の若い世代は、就労感、価値観が多様化しています。自分の「成長」、「キャリア形成」、「市場価値」、「チャレンジの場」などを求める人の割合が増えており、仕事内容が合わなければ転職するということも一般的になってきました。さらに最近は、社員のモチベーション低下を危惧する声も盛んに聞こえてきます。製造業では、仕事の専門化や分業が進み、以前に比べて仕事や技術の全体像が見えにくくなりました。また、短期的な成果を求められるため、将来を見ている余裕もありません。その結果として、夢や目標をもつことが難しくなり、全体的にモチベーションの低い人が増えていると言われています。

今後は、“人が採れない”、“採っても育成しないと活躍できなくなる”、さらには“育成しても流出してしまう”というように、人材面では非常に厳しい状況が予測されます。この局面を乗り切るためには、社員1人ひとりの関心や価値観へ対応し、その上で個々の能力を引き出し、最大限に活かしていかなければなりません。今、企業は、「個の能力を引き出す戦略的な人材育成・活用」へ人材戦略の舵をきりはじめています。

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