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組織の生産性を上げるのも下げるのも上司次第

ニューチャーネットワークス シニアコンサルタント
張 凌雲

 お客様と生産性向上の取り組みを行う際、現場のメンバーが多くの改善アイデアを出して個々の業務の処理時間を短くしても、組織全体の生産性が思うように向上しない場合があります。その原因の一つが、上司がボトルネックになっていることです。“上司の仕事の考え方、やり方が変わらないために、仕事の流れを上司が停滞させている”“上司が自己満足のために部下に行わせてる仕事に対して業務改善活動を一生懸命行なっている”というケースが多くみられます。
 組織全体の生産性向上の成果は、上司、すなわち意思決定する立場の役職者が、どこまで自身の意識・行動を改革できるかに大きく影響されます。
 今回は、組織全体の生産性を向上できる上司になるために必要な5つの要素についてお話したいと思います。

①生産性と品質はトレードオフという固定観念を捨てる

 仕事のスピードアップ・簡素化と内容・成果の品質はトレードオフになると考え、上司が仕事をやめるのを躊躇するケースが多くあります。もちろん、今までと同じやり方を踏襲したまま仕事をなくせば、品質低下につながります。生産性と品質はトレードオフという固定観念を捨て、業務の目的を再確認し、業務処理の方法を抜本的に見直して、生産性向上と品質維持・向上を両立させる思考が求められます。

②作成資料の整理・整頓を率先する

 部下から上司に提出する資料をリストアップすると、今となっては誰が何のために使うのか分からない資料が必ず見つかります。上司が会議のために部下に作らせた資料が、必要がなくなってからも連綿と作成され続けているといったものです。使われない資料の作成をいくら効率化しても、全く意味がありません。上司は、部下に提出させている資料のうち、今の自分にとって本当に必要なものを常に見直すことが必須です。

③定期的にフィードバックする

 改善活動が一過性のもので終わってしまう原因として、部下の改善提案に対して上司が実行の意思決定をせず、またフィードバックもしないことが挙げられます。改善提案を採用しない場合は、なぜ採用しないのか、また提案内容のどこを修正すると良いのかを部下に伝え、継続的に改善提案が出てくる風土を作り上げる必要があります。また、適宜進捗確認と成果が得られている場合でも、部下にポジティブなフィードバックを行うことが有効です。

④他部門との調整に労を惜しまない

 仕事の多くは、自部門だけで完結せず、他部門と関わります。自部門内での業務改善には限界がありますが、組織をまたがる業務は改善の宝庫です。
 実際の改善活動では、自部門にメリットがあっても前後工程の部門にメリットがないために協力が得られないというように、部門をまたがる業務改善は思うようには進みません。自部門の生産性を上げるためだけでなく、全社視点で前後工程の部門の業務改善も含めて検討し、協力が必要であれば、その部門や本部と連携して取り組む行動力が必要です。

⑤システムの利用とワークフローを徹底する

 せっかく業務効率化のためにシステムを導入していても、“スケジューラーに予定を入れない人がいるので、結局メールや口頭で確認している”“共有フォルダを見ない人がいるため、共有フォルダに上げてある資料を都度メールでも送付している”といったことがあります。また、“電子決済を導入したにも関わらず、上司が必ず口頭説明を求めるため、上司がいる時でないと決済が進まない”というように、上司が旧来のやり方を好むことで部下の業務が減らないというケースもあります。新しい仕組みを導入したら、上司自らが率先して使い、部下がそれを使わざるを得ない状況を作ることで、生産性向上が推進されます。

 上記の取り組みに加えて、以前のコラムでお伝えした権限移譲(vol. 104)や、仕事の目的・成果の共有(vol. 113)も大変重要です。生産性向上には組織の一人ひとりの取り組みも重要ですが、改善のスピードアップや全社的な成果を出せるかどうかは、上司の意識、行動変容にかかっています。特に業務全体のプロセスを俯瞰し、不要な仕事をなくしたり、仕事の流れを組み替えたりする上司の意思決定の良し悪しが、組織の生産性に大きな影響を与えます。
 改善活動は、新しいことに取り組むことです。組織を引っ張る上司自らが、新しいことに進んで取り組み、試行錯誤を繰り返しながら常に変化に挑戦することが、組織の生産性向上では最も重要です。

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