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今すぐ始められる、オンライン・グループワーク実施のポイント

ニューチャーネットワークス シニアコンサルタント
張 凌雲

 日本国内では新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言の期間が延長されましたが、欧州では一足先に経済・社会活動が再開されはじめています。日本でも今後の流行沈静化を見越して、徐々に経済・社会活動再開の動きが進んでいます。しかしながら、人と物理的な距離を置くソーシャル・ディスタンシング、1ヶ所に多人数が集まることの禁止など、人と人が直接接点を持つ活動は当面の間制約があることが予想されます。そのため、企業の研修担当者の方から「グループワークを伴う研修が開催できないので、良い方法はないでしょうか?」という悩みを多く聞きます。
 4月13日付のコラム「急増するWEB会議・研修の満足度を高めるための段取り・運営のポイント」に続いて、弊社で実施しているオンラインによるグループワークの実施パターンと、完全リモート型グループワーク実施の際のポイントをご紹介します。

■オンライン・グループワークの実施パターン

 現在、弊社では以下の3つのパターンでオンラインによるグループワークを実施しています。(図参照)

オンライン・グループワークの実施パターン

パターン1:分散型グループワーク

 講師、参加者共に研修会場に集まって開催する方法です。従来のグループワークに最も近い形の実施方法です。多人数での密集を避けるために、少人数のグループごとに会議室を用意し、同一の建屋内で会場を分散して実施します。全体向けの講義はWEBを介して行い、グループワーク時は講師が各会議室を回って議論・アドバイスを行います。グループワークの発表もWEBで行います。
 この方法のメリットは、グループワーク時は参加者と講師が直接対面で議論できるので、後述の2つの方法よりも深い議論ができ、また参加者同士の意見交換も活発になります。デメリットは、一か所で実施するので遠方からの参加者はこれまで通り移動が伴うこと、多くの人が在宅勤務している状況での実施は難しいことや、複数の会議室の用意が必要になることです。

パターン2:集合/リモート併用型グループワーク

 講師はWEBを介して参加者と接し、参加者はグループ単位で同じ拠点に集合する方法です。この方法は、支店や営業所、工場など各拠点単位での事業企画立案、改善活動などのワークショップの時に実施しています。特に、今後 外出自粛制限が緩和され、地域内の移動がしやすくなった場合には有効な手段といえます。
 この方法のメリットは、各拠点では対面で議論できる点です。デメリットは、模造紙や白板を使って議論する場合は、各拠点の検討過程を把握しづらい点です。

パターン3:完全リモート型グループワーク

 講師も参加者もWEBを介して参加する方法です。WEB会議アプリ上で複数のグループを作り、個々人がリモートでグループワーク研修に参加する方法です。今後も在宅勤務が長期化する、または「4人以上集まる会議は禁止」など、複数の人が集まることが難しい場合の方法です。この方法のメリットは、外出自粛や在宅勤務などでも、移動を伴わずに実施が可能な点です。また、アウトプットがデジタルで作成され、共有が容易な点です。デメリットは、WEB上でグループワークのディスカッションを行うためにツールなどの入念な準備が必要な点です。

■完全リモート型グループワーク実施のポイント

 参加者がストレスなくリモートでグループワークを実施するには、オンラインツールの選定は重要です。現在、オンラインホワイトボードなどWEB会議を便利にするツールが多く出ていますが、弊社では普段から使い慣れているエクセルやパワーポイントを使います。OneDriveなどの共有フォルダにアクセスして共同編集機能を使えば、使い慣れたツールでグループメンバーが共同でアウトプットを作成できます。新しいツールも使いこなせれば、より効果的なディスカッションができる場合もありますが、新しいツールの使用は操作方法の確認などに参加者、研修事務局、講師共に時間を割かれるため、実施までに時間がない場合や、オンラインでの会議などに慣れていない場合は、議論に集中することを優先させ、無理に使用することは見送ります。
 完全リモート型グループワークで何より重要なのは、参加者がグループワークの実施手順、使用する思考方法・フレームワークを十分に理解した上で取り組むことです。リモートでのグループワークは、対面の場合よりもコミュニケーションに制約があります。グループワークに入る前に参加者が何をすべきか、講師の意図とズレが無いようにすることです。私達が気を付けていることは以下になります。

①    議論の手順、ツールを毎回確認する

 グループワークを始める毎に、どのような手順、オンラインツールを使って検討するか確認します。あわせてファシリテーター、タイムキーパーや書記などの役割分担も行います。

②    使用する思考方法・フレームワークを確認する

 議論のテーマに合ったフレームワークのフォーマットを各グループに配布し、そのフォーマットを埋める形で議論をしてもらいます。集合型グループワークで使っていたフォーマットよりも、どのような視点で議論し、何をアウトプットするかより分かりやすいフォーマットを使用します。またアウトプット作成のPC作業をできるだけ簡易にする必要があります。参加者全員が議論に参加して作業も分担し、誰かひとりだけがパワーポイントやエクセルの作業者にならないようにするためです。

③ 特定の人の発言、アイデアに集中しないようにする

 グループワークでは、発言やアイデアが特定の人に集中することが良くあります。オンラインでは、同時に発言することがより難しいため、この傾向が強くなります。これを防ぐために、発言やアイデアを記録する際に、参加者ごとに使用するフォントや文字の色を変えるなど、誰がどれぐらい議論に参加しているか分かるようにするといった工夫も有効です。

④    参加者からの質問と回答をすぐに共有する

 グループワーク中の参加者からの質問とその回答は、他のグループの参加者ともすぐに共有します。他のグループの参加者の同様の疑問も解消し、質問の重複を防ぎます。

上記4つのポイントは、対面でのグループワークでも当然行いますが、リモートグループワークでは、特に重要になります。対面のグループワークは、参加者と講師のコミュニケーションが取りやすいので、議論の手順・方法の理解に齟齬があればすぐに修正することができます。しかし、リモートでは各グループのディスカッションの内容把握に限界があるため、参加者が迷いなく議論する環境づくりに特に気を配ります。

■WEBを使ったグループワークは、従来の集合型グループワークにはなかったメリットがある

 オンライン・グループワークは、従来の集合型グループワークと比べて、通信状態や使用するアプリのセキュリティ面の安全性や参加者のアプリ使用スキルの差など、実施にあたって危惧する点もありますが、オンラインならではのメリットもあります。

①    どこからでも参加できる

  • 場所や移動の制約がなくなることで、グループワークのアウトプットのレビューに役員・上司が参加しやすくなり、立案した企画内容のフィードバックや実行の意思決定をワークショップに組み込める。
  • 遠方からの参加者も移動に時間を取られることなく参加が可能。出張費用も抑えられる。

②    事務局の運営負担が少ない

  • 実施会場手配の必要がなく、会場コストもかからない。
  • WEBグループワークの実施方法に慣れれば、集合型での会場設営、片づけ等の準備時間を大幅に削減できる。

③    情報共有が容易

  • 講義やディスカッション内容をそのまま録画して簡単に共有できる。
  • 複数回にわたるグループワークを行う場合、都合によりグループワークに参加できなかった人も動画をみることでキャッチアップがしやすい。

 技術の進化によって、近い将来、オンラインでのディスカッションがリアルでの実施と同じようなレベルになると思います。しかし、現在の技術でも上手く活用し、今回ご紹介したようなポイントを押さえることで、リモートワーク状況下でもグループワークを含めた研修やワークショップを効果的に行うことが可能です。

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