ムダな会議を減らす4つのステップ
お客様との仕事で、「会議が多い」ことによる不満を聞かないことはありません。「日中は会議が多いため自分の仕事は残業時間に行う」、「上司が会議続きで確認の時間が取れず、自分の仕事が進まない」などです。会議が増えれば、そこで使うための資料が必要になり、準備のための仕事量も増えていきます。会議は本来、企業活動を円滑にするために行われるべきですが、むしろ活動の妨げになっています。会議に不満が向けられるのは、出席した会議の価値を見出せない「ムダな会議」が行われているためです。大手人材サービスグループの研究機関「パーソル総合研究所」と立教大学の中原淳教授(人材開発)が行った調査(*1)によると、ムダな社内会議は、1,500人規模の企業で年間9万2千時間、年間約2億円の損失、1万人規模の企業では、それぞれ約67万時間、約15億円になると報告されています。
会議のルールづくり、議論の見える化、立ったまま会議を行うなど、効率的な会議運営に取り組んでいる組織は、多くあります。しかし、会議運営の効率化だけでは、会議に対する不満や、生産性低下を抜本的に改善できません。まずは、今行われている会議が組織・個人にとって本当に意義あるものかを確認することから始める必要があります。
■組織・個人レベルで会議の必要性をチェック
まずは組織として、その会議を行う必要があるかを確認します。ムダな会議のほとんどは、定例会議に存在します。突発的な臨時会議は、緊急度が高い場合が多く、必要性も高くなります。定例会議の中には、「以前○○の問題が起きた時から、情報共有のため行っている」、「前任の○○部長が必要だとして始めた」など、当初の目的が形骸化しても惰性で行っている場合があります。
過去2年以上、定期的におこなっている会議をリスト化し、それぞれの会議に関して、以下のステップで実施の要否を見直します。まずは、組織として会議を行う必要があるかを判断します。
ステップ1: この会議は、会社にとってどれほどの価値があるか
会議で議論される内容や、そこでの意思決定が、組織の目標達成への貢献、従業員や顧客、取引先などのステークホルダーへの影響があるかを確認します。組織への影響がほとんどない会議は、真っ先に廃止の対象とします。
- 全社の目標達成に影響する
- 直接業績への影響はないが、全社、ステークホルダーに影響する
- 自部門の目標達成や活動に影響する
- 全社、自部門の目標達成への影響はない/ほとんどない
ステップ2: この会議を行わなかった場合の影響はどれぐらいか
会議が開催されなかった場合、組織活動の停滞や混乱を引き起こすかを確認します。
- 最優先で開催しなければ大いに組織活動の停滞や混乱を引き起こす可能性がある
- 近日中に検討は必要だが、他の重大事項があれば延期可能
- 他の重大事項があれば、他の会議と統合可能
- 他の重大事項があればキャンセル又は、次回の会議に繰り越し可能
この時点で、全社・自部門にとって必要のないムダな会議が洗い出されます。次は、会議に参加すべき人を確認します。会議に出席はしているものの、まったく発言していない、メール処理をしている人など、会議へ参加していないという経験が皆さんもあるかと思います。無駄に会議参加者を増やすことは、参加者の時間を奪うだけでなく、会議スペースなどのコストを浪費することにもなります。
ステップ3: 自分にとって、参加する必要がある会議か
自分が業務を遂行する上で、その会議に参加する必要があるかを確認します。
- 常に参加必要
- 議題によっては必要
- 不参加の場合、事後フォローで対応可能
- 不要
ステップ4: 組織にとって、自分の参加が必要な会議か
自分が会議で意思決定を行う、報告・情報発信する必要があるなど、組織活動をすすめるために自分が出席する必要があるかを確認します。
- 常に参加必要
- 議題によっては必要
- 代理人(部下)の出席で対応可能
- 不要
■必要性の低い会議を見直す
組織レベル、個人レベルで会議の必要性の確認に加え、開催頻度や規模と併せて、会議を見直します。必要性が低い会議に関しては、以下の視点で改廃を検討します。
- 直ちにやめても影響がない会議は、即座に廃止
- やめた場合の影響度合いが不明な場合は、他の会議に取り込むなど合理化する
- 開催頻度や規模を見直す
いざ会議を削減をしようとすると、無くなることによるデメリットやリスクを理由に抵抗されることが多くあります。特に複数の組織に関わる会議ほど、部門間の調整が必要になるため、廃止や縮小することへの抵抗があります。「自部門はなくしたいが、○○部門が必要と言っているので残す」といって、会議が増加していく一方の会社を多く見てきました。また、前述のように、臨時で行った会議が定例会議化することも増加要因です。ムダな会議を生まないためには、上記のような視点、ステップで、会議の必要性を定期的に見直す必要があります。
*1 パーソル総合研究所 https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201812130003.html