
グローバルで通用する力のある事業は組織よりスピンアウトせよ
大手電機メーカーなどに代表されるように、日本製造業が新興国などの海外メーカーとの競争に負けて市場シェアが低下し、業績が悪化するニュースが報じられている。賃金カットや人員削減、早期退職などの対策も始まっており、日経新聞によると、NECでは1万人のリストラ、社員賃金4%カット、管理職賃金8%カットだという。長期雇用を前提としてきたが、不採算事業や人材をこれ以上抱え続けることに限界がきているのは明白である。今後は長期雇用などの聖域なく、事業の選択と集中、不採算事業の撤退や他社への売却が起こってくることを覚悟しなければならない。
しかし、組織全体として業績は悪くとも、大きな組織の中をよく見ると、きらりと光る事業があるものである。グループ全体の売上・利益からすると割合が小さく、今の戦略とベクトルがあわないということで非コア事業と位置づけられているが、グローバルで十分通用する技術・製品を持っている事業部や関係会社、人材である。多額の有利子負債で身動きのとれなくなった親会社の下では、新しい事業展開をするための十分な資金供給も期待できない。むしろ、自身の組織が利益をあげても、親会社に吸い取られてしまう。
親会社がなんとか存続すれば給与が下がったとしても組織の従業員の雇用だけはまもられるかもしれない。しかし、自身の組織の優れた技術・製品が世に普及しないのは、ビジネス的にも産業的にも社会的にも大きな機会損失になってしまわないだろうか。
■グローバルで通用する力のある事業は組織よりスピンアウトせよ
今は銀行からの借り入れなどの間接金融ではなく、直接金融も発達している。自身の組織に強みとビジョン・戦略があれば、プロジェクト・ファイナンスで社外から資金を調達できる時代になっている。それにより事業部であれば、組織から分割し、新会社を設立することもできる。関係会社であれば、親会社の出資比率を下げるまたは無くすことで、経営の自由度を高めて、従来実施しにくかった事業展開が可能になる。
このように自身の組織の新しい事業展開を切り開く方法として代表的なものにMBO(マネジメント・バイアウト)という手法がある。MBOとは、経営者や事業部門の責任者がバイアウト・ファンドと協力し、株式の所有者から株式を買収して独立することをいう。
自立したい組織の経営者だけでは株式取得のための十分な資金を調達できないため、バイアウト・ファンドが出資することになる。バイアウト・ファンドは、機関投資家や個人投資家から株式取得のための資金調達を行う。そして投資リターンの最大化のため、レバレッジを目的として金融機関からの借り入れも行う。借り入れは、投資先の企業の将来のキャッシュフローを担保にしたノンリコース・ローン(nonrecourse loan)である。
独立した会社の事業が軌道にのり、キャッシュフローを生み出せば、それにより負債の返済が進む。そして企業価値が高まれば、株式公開(IPO)や他社に投資先企業を売却することで高いリターンを得ることになる。
その他の投資ファンドには、ベンチャー企業向けの投資を専門に行うファンドと、不良債権の処理を専門にするファンドがある。前者は、1990年代のITブームでベンチャー企業を創出する際に活躍した。景気の上昇局面で活発になる傾向がある。後者は、市場が成熟して競争が激しくなり、競争力のない企業が市場から撤退するタイミングで活躍する。投資どおりにいかなかった事業は不良債権として処理される。その取り組みで利益を狙う。2000年前半に活発になった。
そしてバイアウト・ファンドは、不良債権処理とまでいかないが、競争力の低下した事業の再生という場面で活躍する。競争力の低下している日本製造業のテコ入れに効果的な可能性がある。
記事をご覧いただくには、メルマガ会員登録(無料)が必要です。
是非、この機会に、メルマガ会員登録をお願い致します。
メルマガ会員登録はこちらです。
会員の方は以下よりログインください。