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ターニングポイント 2012年の着眼

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

新年明けましておめでとうございます。一日も早い東日本大震災の復興と本年の皆様のご健康とご活躍を心よりお祈りいたします。
年の初めは新たなスタートとして、これまでを振り返り、新たな方向付けを見出す良い機会です。私自身、経営・事業コンサルタントとして2011年を振り返り、2012年の課題、方向性を考えてみました。少しでも皆様の暮らし、お仕事にお役立ていただければと思います。
 

■バタフライ効果の世界経済

「ブラジルでの蝶の羽ばたきというごく小さい要素であってもテキサスでトルネードが起きる」気象学で言われる通称バタフライ効果。この理論は複雑系とかカオス理論とよばれ、物理、化学そして経済学にまで応用されている。
 
一地域、一国、一企業の経済社会問題が世界を大きく変化させ、その影響は遠くはなれた地球の隅までの経済活動に影響をあたえる。昨年2011年は、そのバタフライ効果を現実のものとして感じさせられた1年でした。
 
世界に大きな影響をおよぼした一つの事象に日本で起こった東日本大震災があります。「想定外」であった地震と津波の甚大な被害は、日本の企業活動、経済活動を大きく減速させました。さらに福島第一原発の核反応炉のメルトダウンとそこからから放出された放射能問題は、日本は当然のこと、世界各国のエネルギー政策を転換させようとしています。原子力政策は大きく見直され、自然エネルギーの活用、さらにはエネルギーの利用の量、方法そのものまで見直されるはずです。
 
2008年に起こった米国のリーマンショックでの世界金融不況から立ち直ることが出来ない中で、ギリシャに端を発したEUの金融危機問題が起こりました。これもまた世界経済のマイナスのバタフライ効果でした。
 
EUは、第二次世界大戦までのヨーロッパ大陸内の戦争の悲劇を乗り越え、多様な言語、文化、政治体制の国家が①経済②外交・安全保障③司法・内務協力の「3つの柱」を軸にその政策の一つとして1999年に通貨統合を行いました。しかし各国の政策、財政の協調が失敗し、いま当初の壮大な理念を見失いつつあります。「自国の利益を優先させるべき」という声さえ聞こえます。この問題の原因とは、EU統合後の、金融、不動産など実態の薄い経済に比重をかけすぎ、無理な表向きの経済成長に走ってしまった政治の「歪み」ではないでしょうか。いまEUの経済危機は、円高を加速化し、日本の輸出企業に多大なダメージを与え、さらには中国、アジア企業など成長性の高い新興国経済にも打撃を与えています。
 
2008年の米国リーマンショックはいくつかの民間の金融機関の暴走さらには不正に問題の原因があり、米国はじめ多くの国家がその穴埋めのため莫大な財政出動をおこないました。EUの金融問題は、ギリシャなどの国家の信用問題が原因で、民間金融機関や実態経済に大きな影響を与えています。金融という経済の神経であり血液が汚染、そして破壊されると、国家の財政に大きな損害をあたえ、取り返しがつかなくなる可能性があるのです。
 
日本の国債の発行残高、いわゆる借金も2011年1000兆円という想像を絶する額に達すると予測され、世界経済のアキレス腱とも言われるようになってきました。
 
昨年は世界の隅々までのインターネットの普及、特にフェイスブックなどのSNSの社会的な影響力を感じさせられました。「アラブの春」で、チュニジア、エジプト、リビアの長く続いた独裁政権が倒され、民主化が進みました。その活動の媒体になったのが登録者7億人以上とも言われているフェイスブックです。マスコミの情報統制は全く意味を持ちませんでした。SNS、Twitterといったソーシャルメディアが、既成の支配、管理、統制の壁を簡単に破り、国家の政治体制を変革するに至ったのです。このような動きは、他のアラブ諸国、遠くはロシア、米国ニューヨーク市での格差是正デモなどに連鎖したと考えられ、まさにバタフライ効果そのものと言えます。
 
このように経済社会のバタフライ効果は加速化され、その影響がますます大きくなっています。それは、ICT(情報通信技術)により世界の隅々まで情報ネットワーク化されたことや、我々が相互依存関係を作り上げた金融、産業システムなど経済活動社会基盤そのものから起こるものです。
 
 

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