「オンライン中心のプロモーションへ」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第53回
広告宣伝・販売促進も、モノ中心の市場から、コト、経験価値重視の市場に変化するに従って、大きく変わってきました。変化のベースにあるのは、顧客が商品を知る媒体の変化です。テレビ、新聞、雑誌などのマスメディアから、インターネット、そしてソーシャルメディアと利用される媒体がここ20年間大きく変化してきました。広告宣伝の基本的なフレームワークも、AIDOMAからAISAS、そしてSIPSとシフトしてきています。
■AIDOM(インターネット前)
プロモーション(広告宣伝)では、インターネットが普及する前、古典的な手法としてAIDOMというフレームワークがよく使われました。AIDOMAとはAttention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の頭文字だけを表したものです。またその後2000年に入ってインターネットが普及しAISASというフレームワークが登場しました。
■AISAS(インターネット後)
AISASとは、インターネット上で顧客が商品を認知してから購買までのプロセスで、Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(購買)→ Share(情報共有) の頭文字を取ったものです。
■SIPS(ソーシャルメディア後)
2010年以降、ソーシャルメディアが普及してからは、SIPSがフレームワークとして注目されました。SIPSとは、Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate(参加)→Share&Spread(共有・拡散)の頭文字を取ったものです。AIDMAやAISASでは、顧客はマスメディアやネットの広告で知り「検索」が最初の切っ掛けでした。SIPSでは、顧客はFacebook、Twitter、Instagramなどのソーシャルメディアで「共感」(Sympathize)することが最初の切っ掛けで、次に情報を検索し確認(Identify)します。その後、購入するしないにかかわらずTwitterのリツイートやFacebookの「シェア」などで他人に勧めることで「参加する」(Participate)という行為に進みます。さらにソーシャルメディアでお互いの情報を「共有し」(Share)、さらに他の顧客にて「拡散」(Spread)されます。
我々は今何か新しい商品を購入する際には、ネットサイトでの評判を確認したり、比較サイトをみたり、インターネットやソーシャルメディアを必ず使います。また購入後、取扱説明書やマニュアルを読むよりもYouTubeの動画で使い方を学び、故障の際もネットで修理の方法を調べます。最初の接点の多くはテクノロジー(インターネット)で、その先にリアルとの接点があるという形態に変わってきています。
現在の顧客経験価値は、オンラインが基本にあって、その奥にオフラインが存在する形態に変わってきています。ビジネスによって異なり一概にはいえませんが、「OMO」(Online Merges with OfflineまたはOnline-Merge-Offline)という「オフラインが存在しない状態」(「アフターデジタル – オフラインのない時代に生き残る」 藤井保文 著)でのエクスペリエンスとそこから得られるデータでビジネスが形成されていくと言われています。新型コロナの影響でOMOのトレンドが一気に進み、顧客経験価値のオンライン化とデータ化が一気に進み、社会が大きく変わりつつあります。
今後の企業経営では、差別化された顧客経験価値をオンラインの利用を通じて創造し、拡散させるといった戦略が必要とされ、広告宣伝・販売促進戦略は、ソーシャルメディアやネットサイトを基盤に、従来のマスメディアの広告宣伝などを複合させ、商品開発戦略、価格戦略、流通戦略と密接に関連しあいながら変革させていくことになります。