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リーダーはグローバル化の最前線に立て

ジャイロ経営塾代表 ワイ・エイ・パートナーズ株式会社代表取締役/ニューチャーネットワークス チーフコンサルタント
秋元 征紘/張 凌雲

2011年7月25日、第3回グローバルエイジ研究会(以下、GA研究会)を開催しました。この研究会は、日本はグローバルネットワーク社会の一員であるという認識のもと、今後、グローバル社会で求められる企業のビジョン、戦略や、次世代のリーダーのあるべき姿について議論を行い、 広く提言していくことを目的としています。過去2回の研究会では、日本経済や社会のこれからの変革の方向性と、グローバル市場における日本企業にとっての事業機会とエコシステムのポイントについて議論を行いました。第3回の今回は、ジャイロ経営塾代表、ワイ・エイ・パートナーズ株式会社代表取締役の秋元征紘氏による講演ののち、グローバル競争に勝ち残れるリーダー人材像とその育成方法について討議を行いました。

今回のコラムでは、秋元氏とともに、研究会の討議内容を参考にしつつ、日本人がグローバルビジネスリーダーになるために必要とされる能力について考えてみたいと思います。

■グローバル化に直面している日本企業

東日本大震災から約5ヶ月が経ち、企業活動は徐々に回復の兆しを見せてきました。「五重苦」とよばれる①高い法人税、②FTA政策の遅れ、③労働規制強化、④環境規制強化、⑤円高進行に加え、全国規模になった電力不足は、多くの日本企業にとって、事業活動のグローバル化を一層避ける事の出来ない現実的なテーマにしました。
一方グローバル化は、個人や会社の成功の規模を飛躍的に大きくました。スピードも速く、展開もダイナミックで、新たなチャンスを生み出し続けています。そこでは常識を超えたところにこそ事業の発展、成功が生まれるわけで、従来と同じことをやり続けて成長できるほど甘い世界ではありません。これまで他の先進国での市場開拓を成功させてきた多くの日本企業が、新興国での市場開拓に苦戦を強いられています。先進国市場を開拓した際の価値観、戦略観を転換しなければ、このような市場でのグローバル競争に勝つことはできないのです。

■グローバル社会における日本企業の成功条件

企業がグローバル競争で勝つための成功条件は、個人あるいは組織が
 
1)グローバルに説得力のある基本理念を掲げて、
2)明確な目標と絞り込まれた戦略を、強力に、そして迅速に展開できる能力
 
を持つことです。
グローバルな事業環境の劇的な変化の中で、日本企業が持つ本来の強みを活かし勝ち残る為には、変化を先取りする精緻で絞り込まれた戦略を策定する過程を内生化することによって、経営者と社員との間に「感情的な絆」を造り出し、その結果として目標の実現の為のパッショネート(情熱的)なコミットメントを確保することが不可欠と考えられます。
このような経営の実践による新・日本的経営の確立こそが、日本企業がグローバル社会で勝ち残る、最も効果的かつ永続的な解決策となるのです。

■日本企業に求められるリーダー

かつての日本企業の国際競争力の源泉は、いわゆる日本的経営の三種の神器(終身雇用、年功序列、企業内組合)に根ざした社員のやる気と、「日本株式会社」と呼ばれた官民一体による事業展開にありました。このような環境下では同じ価値観や行動原理を持った人材が集まっていることが前提で、リーダーに求められる要素は、組織に対する忠誠心、上司・部下の関係に気を配り、組織を円滑にする力、そして部下を奮い立たせる力でありました。
しかしグローバル化のように事業環境が急速に変化する昨今では、多様な価値観や行動原理を持つ人材によって構成される組織が一般的になります。そこでは、
 
-共有された志を貫く精神力
-達成意欲に裏打ちされた行動力
-創造的な発想力
-結束と共感を生み出すコミュニケーション力
 
を有する少数精鋭の幹部社員=グローバルリーダー人材の活躍が重要です。
ますます激しさを増すグローバル競争を勝ち抜く為には、組織の目標・戦略にパッション(情熱)をもってコミットできるグローバルリーダー人材の存在が鍵となるのです。

■グローバルビジネスリーダーとは

グローバルビジネスリーダーとは、「精度の高い実務能力を備え、多様性ある環境の中で自らが率先して、様々なバックグラウンドを持つ人材から成る組織のパフォーマンスを最大限に引き出し、成果を創出できる人材」であると私たちは考えます。
グローバルビジネスで成功するためには、一定レベル以上の専門知識やスキル、現地人材と一定のコミュニケーションが図れる語学力(主に英語)が、当然求められます。しかし、国内で高い成果を出しており、語学力もある人材でも、グローバル環境での成功が必ずしも約束されるとは限らないのです。グローバルビジネスでは、異なる風土、習慣を持った多様性に富む環境に対応できなければ成果を出すことはできません。グローバルビジネスで良い結果を出すためには、さらに以下の行動が求められます。

  • 日本(自分)とは異質な、多様な文化・価値観を理解/受容し、適切に対応できる。
  • 日本とは異なる社会・市場・取引方法等に適切に対応できる。
  • 多様性を持ったチームメンバーと、効率的に仕事を行える。

グローバルな組織でリーダーシップを発揮するために必要なスキルと能力は、同質の人材で構成される組織でリーダーシップを発揮する場合と異なります。グローバルビジネスリーダーは、多様性をもった環境から学び、そこからイノベーションを創発できる能力を持っていることが必要です。単に文化的な違いに適応するだけでなく、そうした違いを市場競争に活かすことができなければならないのです。
異文化の価値観・知識を深め、ダイナミックな解決策を導くことができるグローバルビジネスリーダーの基本能力は、以下の4つの能力(WACC)に分けることができます。

【W】Will:目標達成に向けた強い意志
内向きではなく、グローバルな視点と文化の多様性への対応力を持ち、説得力のあるビジョンを掲げ計画の達成に向けた強い意志を持つ。

【A】Act:行動力
リアクテイブでなく、プロアクテイブな姿勢を持ち、これまでと異なる社会・市場・メンバーに積極的に関与し、理解を深める。また、いかなる状況でも、問題の的確な把握と戦略的な解決策を生み出し、問題を先延ばしせず、即断・即決の勇気と行動力を有している。

【C】Create:柔軟な発想力と問題解決力
自分と異なる考え・方法を否定せず、ポジティブに対応する。既存概念や従来からの路線や利害関係を超えて、「想定外」の事態に対しても、創造的かつ果敢に挑戦する発想力を持つ。

【C】Communication:効果的なコミュニケーション力
当事者意識と現場感覚に基づいた、正確かつ公正で開かれた計画や目標、業務の方法等、ルールをロジカルに伝える。困難な状況でも構成員に自信と希望を与ることで、感動と結束力を生み出すメッセージを伝えられる。

上記4つの基本能力をどのように満たしていくかは、グローバルビジネスリーダーに求められる役割、リーダー候補人材の能力によって異なります。具体的にグローバルビジネスリーダーを育成するにあたっては、次節で挙げる20のKey Competenciesの分類に基づき、どの能力をどのように高めていくかを検討していくことになります。

■グローバルビジネスリーダー4つの基本能力(WACC)と20 Key Competencies

グローバルビジネスリーダーの4つの基本能力(WACC)は、それぞれ5つのKey Competenciesに分解することができます。

①【W】Will & attitudes to live with vision     + dealing with Diversity
 (志・勇気・意志といった精神力と姿勢 + 多様性への対応力)

・ ビジョン・目標のマネジメント (Managing Vision & Objectives)
経営ビジョン・目標を組織のメンバーへ適切に浸透させ、効果的に活用したマネジメントを行える。

・ 多様な文化・習慣への対応 (Managing Diversity)
異なった文化・価値観・習慣に対する興味や関心があり、分け隔てなく対応できる。

・ 優れた知性と感性 (Intellectual Horsepower)
複雑な状況下にあっても、機知に富み、機敏に行動し、問題解決ができる。

・ 権限の委譲とリーダーシップ (Delegation & Leadership)
部下に権限委譲する際に明確な達成目標を示すと共に、彼ら/彼女らが能力を発揮・開発できる環境を作ることができる。

・ 旺盛な好奇心と学習意欲 (Learning on the fly)
常に新たな学びの機会を得るようにしている。

②【A】Act to win
(勝利へのこだわりと達成意欲に裏打ちされた俊敏な行動力)

・ 旺盛な達成意欲 (Drive for Results)
高い目標を達成するために、常に成果の達成状況を見据えて自身と他者にプレッシャーをかけ、継続的に高いパフォーマンスが発揮できる。

・ 行動的 (Action Oriented)
最高の成果を得るために、失敗を恐れず、チャレンジすることを心がけている。

・ 顧客重視 (Customer Focus)
社内外の顧客に目を向け、顧客から得られた情報をもとにした製品・サービス開発や顧客価値・顧客満足を高める思考・行動をしている。

・ 優先順位付け (Priority Setting)
最短で成果達成できるように、常に物事の優先順位付けをして行動している。

・ 迅速かつ適切な意思決定 (Timely & Sound Decision Making)
限られた時間や制約がある状況において、的確に情報を収集し、迅速かつ適切な意思決定ができる。

③【C】Create aggressively     + strive for Solutions
(既存概念や利害関係を超えて創造的破壊を生み出す発想力 +問題解決力)

・ 創造的ビジネス感覚 (Creativity)
自己やチームが既成概念に捉われずに、新しく、ユニークなアイデアが出るような取り組みや仕掛けができる。

・ 戦略的手腕 (Strategic Agility)
幅広い知識と視点を持ち、想定されている競争優位性や既成概念を超えた戦略や計画を立案している。

・ 不確実な事態への対応 (Dealing with ambiguity)
不測の状況であっても、変化に対して柔軟な対応、意思決定ができる。また、想定外の状況が起きないように、幅広い視点でのリスク管理ができる。

・ 革新マネジメント (Innovation Management)
メンバーに対して、イノベーションを創造するための働きかけ、革新的なアイデアに対する適切な評価ができる。

・ 採用・適正配置 (Hiring & Staffing)
組織のパフォーマンスを高めるために、内外から広く優秀な人材の確保や各人の能力を踏まえた配置をしている。

④【C】Communicate 360°
(感動と結束力を生み出すコミュニケーション力)

・ 外国語コミュニケーション (English Communication)
ビジネスで最低限必要な語学力がある。また、相手の語学力や文化・習慣を踏まえたコミュニケーションが図れる。

・ 誠実さと信頼性 (Integrity and Trust)
行動、製品、意思決定、施策に対する責任を理解し、事実を隠さずに伝え、ミスは自ら認め、利己的な行動に走らないように心がけている。

・ チーム作り (Building Effective Team)
組織やプロジェクトのパフォーマンスを高めるために、達成目標や各人の役割の明確化、メンバー間のコミュニケーション向上に取り組んでいる。

・ 他人の動機付け (Motivating Others)
組織やプロジェクトメンバーの一人一人が使命感を持って行動するよう、目標の共有、権限委譲、メンバーへの期待などのモチベーションが高まる風土を作っている。

・ 部下や相手の痛みが解る (Listening & Compassion)
部下や相手の悩みや問題に対して、職場外の状況も踏まえて理解している。

冒頭に紹介した、GA研究会において、20 のKey Competencies のうち、どれがもっとも重要であるかをグループごとに討議していただきました。その結果、重要とされた5つのCompetenciesとその理由を紹介します。

●ビジョン・目標のマネジメント (Managing Vision & Objectives)
・ 多様な価値観や考えを持った人々をまとめ、戦略目標を達成させるためには、ビジョン・目標の共有が必須である。リーダーは、現地の人が理解できるようにシンプルでわかりやすくビジョン、目標を伝えられるように努めなければならない。
・ グローバル市場での仕事は困難を伴うことが多い。チャレンジし続けるためには、リーダー自身がグローバル市場で戦うための志や信念、目標を持っていなくてはならない。

●権限の委譲とリーダーシップ (Delegation & Leadership)
・ 海外市場の開拓には現地スタッフの活躍が不可欠である。現地スタッフが一定の裁量を持って戦略実行できる環境を作る必要がある。また、戦略実行を失敗してもそれを許容できる組織風土をリーダーが作る。
・ グローバル市場で成功するためには、現地スタッフが高いパフォーマンスを発揮することが必須である。そのためには、現地スタッフの能力とモチベーション要因を見極め、彼/彼女らの能力を最大限に引き出すように仕事を割り当てる。
・ 中長期的な成長には現地人材からリーダーが輩出されなければならない。グローバルビジネスリーダーは、現地で自分の後継者を育成することが求められる。

●多様な文化・習慣への対応 (Managing Diversity)
・ グローバルビジネスリーダーは、現地の人を介して結果を出すことが必要である。そのためには、現地の人材が異なる習慣や価値観を持っていることを理解、許容して、関係性を構築できる能力が必要となる。
・ 新興国では、異国の人材が上司に据えられたら警戒してしまうことが多い。ましてやその上司が日本の本社の意向ばかりを気にしていたら、新興国の人材はついてこない。

●採用・適正配置 (Hiring & Staffing)
・ 既成概念を超えたアイデアや行動は、組織に多様性があってこそ実現できる。リーダーは多様性ある組織づくりを実現するために積極的な人材採用と登用を行う。
・ 海外の支社・支店では人材リソースが限られている場合が多い。目標達成に向けて組織に不足している能力は何かを素早く把握すると共に、既存の人材リソースを最大限活用できる配置を行う。

●旺盛な好奇心と学習意欲 (Learning on the fly)
・ 好奇心と学習意欲は、イノベーションの根幹にある。常に進化し続けるためにこの特性は必要不可欠であり、 失われれば日本企業は世界に置いていかれてしまう。
・ リーダーは、組織メンバーに対しても好奇心と学習意欲をかき立て、目標達成に向けて高いモチベーションを与えなくてはならない。

上記は多様な業界、職種の方々が集まった中での議論であり、各企業・組織で重要とされるCompetenciesは異なるかもしれません。しかし、日本企業が目指すべきグローバルビジネスリーダー育成の方向性は、上記の討議内容から見えてくることと思います。
次回のコラムからは、グローバルビジネスリーダー育成の実践事例、および成功要因と取り組みを検討していきます。

(WACCおよび20のKey Competenciesの著作権は、秋元氏に属します)

秋元 征紘(あきもとゆきひろ)

秋元 征紘(あきもとゆきひろ)

・所属・役職
ジャイロ経営塾 代表
ワイ・エイ・パートナーズ株式会社 代表取締役

・略歴
上智大学経済学部卒業、シドニー大学経済学修士課程修了。
70 年日本精工株式会社に入社。80年日本KFC株式会社に入社後、86年同社取締役、87年日本ペプシ・コーラ副社長、88年日本 KFC株式会社常務取締役。93年株式会社ナイキ・ジャパン代表取締役社長。95年ゲラン株式会社代表取締役社長、01年ゲランS.A.(パリ本社)執行 役員、 05年ゲラン株式会社会長を歴任。現在、ワイ・エイ・パートナーズ株式会社代表取締役。

・著書・訳書など

『一流の人たちがやっているシンプルな習慣』(フォレスト出版、2010年)

『こうして私は外資4社のトップになった』(東洋経済新報社、2009年)

『「ジャイロ経営」が社員のやる気に火をつける-パッションカンパニー-』(ファーストプレス、2008年)
秋元征紘ブログ http://akimoto.livedoor.biz/archives/51498215.html
ジャイロ経営塾HP http://www.gyrokeieijuku.com/

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