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失われた新規事業開発の環境を取り戻せ ~人材育成をおろそかにしてはならない~

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

 2014年4月~6月期の決算速報が相次いでいます。それらを見ていると、多くの上場企業で前年比売上、利益とも二ケタ増、過去最高益などの好業績が目立ちます。

 好業績の状況の中で、今までなかなかできなかった新たなドメイン開発を狙った、新製品・新事業開発プロジェクトをスタートさせる企業が増えています。それ自体、大変良いことだと思います。

 しかし、そうした企業が現在いくつかの大きな問題に直面しているのです。その一つに、企業内に新製品・新事業開発を行う環境、組織風土がなくなってしまっていることが挙げられます。多くの日本企業は10年、長い場合は15年以上も「選択と集中」を繰り返して新製品・新事業開発に取り組んできました。これが新たな問題を生み出したのです。

 具体的には、役員会のメンバーでさえも新製品・新事業開発を経験してきた人がいなくなってしまったり、担当する組織自体が既に存在しない、あるいはノウハウや人材が不足しているといった、新製品・新事業開発の環境が弱体化しているのです。研修やワークショップを行っても、新製品・新事業開発を考えた経験のないメンバーがほとんどのため、彼らが新しいアイデアを思いついたり、挑戦意欲がわいてくるまではかなりの時間を要することになります。

 一方で海外に目を向けると、米国ではシリコンバレーを中心としてICTだけでなく、サービスやモノづくりのベンチャーの企業、ハードウエア・ベンチャーが活躍しています。中国、インドなどの新興国を見ても、国自体が成長しているため、起業したり、大企業の中でも新製品・新事業開発を行う機会がたくさんあり、成功の確率も高いのです。

 そのような競争状況を考えると、一刻も早く、新製品・新事業開発の答えを出したいところですが、今は「急がば回れ」が肝要でしょう。まずは、新製品・新事業のアイデアを出したり、スタートアップさせる環境整備が必要なのではないでしょうか。

 気をつけなければならないのは、その環境整備とは過去のものと異なる点です。今回のコラムでは、私がコンサルティングの中で感じた、これからの時代で市場をリードできる新製品・新事業開発のための環境整備のポイントをいくつかお伝えしたいと思います。

環境整備1:ターゲットにする市場の情報が集まってくる仕組みづくり

 「新製品・新事業開発のために市場調査をする」――このこと自体は必要です。しかし、このレベルでは市場で勝ってはいけません。なぜなら市場調査の情報の多くは、過去に起こったことが多いからです。

 新製品・新事業開発は将来のことです。したがって将来市場がどうなるかを把握しなければなりません。もちろん未来予測や調査レポートがシンクタンクなどから数多く発表され、それはそれで参考になるでしょう。しかし“事業のコアの情報”はそれらには書かれてはいません。仮に記述されていたとしても、それは競争優位性を構築できるインテリジェンスにはなり得ないのです。

 では、どのようにしてキーとなる情報を集めるのでしょうか。

 答えは「集める」のではなく、「集まってくる仕組み」を構築することです。例えば、ターゲットにするテーマに関して他社に先駆けてなんらなかの方法で世界的なキーパーソンとコンタクトをとり、フォーラムのようなものを開催し、それをきっかけに情報交換する場を主催し、関係する企業、組織、キーパーソンを集めるというやり方です。

 重要なのは、トピックスやテーマが最新で、多くの人や組織の関心を引きつけるものであること。自社が中心になってリードすること。参加者にはならず、主催者になること。多くの利害関係者をリードできる「ファシリテーション能力」をもつことなどです。そのための教育、準備が必要であれば、何らかの投資をすべきでしょう。

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