「モノづくりのコアコンピタンスをデータビジネスに展開する」デジタルB2Bマーケティング 第11回
■本業が儲からずその周辺の製品・サービスが儲かるケース
「本業が儲からず、その周辺の製品・サービスの方が利益がでる」といったことは珍しくなくなりました。本業がコモディティ化し、価格競争になり、利益がとれなくなる。その本業をベースにした、周辺のビジネスが拡大するのです。業界の中核のビジネスの利益率が減少し、周辺のビジネスの利益率が高いことをスマイルカーブと呼びます。業界の中核のビジネスからすれば「なにがスマイルだ!」と言いたくなる現象です。
■市場に対しモノをつくる企業が多すぎるのではないか?
確かに中心となる製品・サービスは、会社の中でも「本業」と呼ばれ、多くの優秀な人材が集められ、市場規模も大きいため投資も積極的に行われます。しかし、多くの産業は1990年バブル崩壊前には日本国内でも過当競争で、1900年代後半からはそこに中国、韓国はじめアジア・新興国が参入し、グローバル市場であったとしても過当競争、つまり市場の大きさに対し参入企業が多すぎる状況になっています。その結果、価格競争が長期間続き、企業は疲弊しています。そういった中で、新事業として細々始めた本業周辺事業が意外に高い利益率を確保していることが多いです。それはなぜでしょうか?モノづくりで鍛え上げたコアコンピタンスを、その周辺に展開し、独自の競争領域をつくり、競争優位を勝ち得ているからです。
■モノづくりの会社のコアコンピタンスは何か?
製造業のコアコンピタンス(コア技術などの中核能力)は、確かにモノづくりの周辺にあります。モノづくりの技術は大まかに言えば、要素技術を開発し、それを組み合わせ設計し、製造技術を確立し製造し、品質管理するところにあります。そのそれぞれの技術、スキルはかなりの専門的知識、スキルです。ところがモノづくりの企業は、その専門知識、スキルにあまり注目せずにアウトプットであるモノに注目し、投下資本をモノだけで回収しようとします。モノは品質の善し悪しの差はあっても、市場は飽和して競争が厳しく、利益を上げるのが難しいです。そこで考えるべきことは、コアコンピタンスである要素技術開発、開発設計、製造、品質管理など、専門知識、スキルをサービスや情報という形態でビジネスに出来ないかということを検討することです。コアコンピタンスを使って周辺ビジネス、特にデータビジネスへの転換を考えるのです。コアコンピタンスを活用し、モノづくりに関わることを「データ化」出来れば、モノづくり企業でありながらデータビジネス化に変身可能です。
■自社のコアコンピタンスをデータビジネス化する
具体的にどんなことが出来るのでしょうか。いくつか例を挙げてみました。
①B2Bの自社製品・サービスと他社の製品・サービスを、モジュール、完成品として組み合わせた場合の
シミュレーションサービスや部材、部品の解析サービス(自動車のAVL)
②自社の製品・サービス周辺の標準設計ツール提供ビジネス(半導体のアーム)
③自社製品サービスにこだわらず、同業界の製品・サービスの故障検知、修理メンテナンスサービス
④複数の顧客を結び付けたプラットフォームによる調達、開発、生産、物流のシェアリングビジネス
(特に中小企業向け)
⑤顧客企業の調達代行ビジネス(評価、選定、ロット購買)
⑥顧客の製品・サービスの営業代行(インサイドマーケティング)
⑦関連する製品・サービスの詳細データ付きのオンラインショッピング
いずれも大きな発想転換が必要です。また企業の市場ポジションによっては出来ないビジネスもあります。特にシェアが大きい企業はやりにくいでしょう。一方業界4位以下であれば、利益インパクトはさほどない場合が多いと思います。