「B2Bビジネスの危機感」デジタルB2Bマーケティング 第2回
■ハードの差別化はソフトで解決される可能性が高くなっている
素材、部材、部品などは、家電、PC、スマホとは違い、すり合わせ技術で構成され、技術をブラックボックス化しやすく、他社が真似しにくいと考えられてきました。しかしB2Cの例ではありますが、デジタル一眼レフカメラのように、ハードとしては高度な性能を達成したとしても、素人からみればそれとほぼ同等の画像がiPhoneはじめとするスマートフォンのソフトでの処理で実現するといったことも発生しています。同じようなことは、B2Bビジネスでも発生しています。10%、20%程度のハードの性能アップは、ソフトウェアでの処理に負ける可能性が高く、そのうえソフトウェアは常にバージョンアップ可能であり、開発サイクルがハードよりもはるかに短いのです。
■川下、川上レイヤーでの問題解決で自社のビジネスが消滅することもある
B2B企業が提供する新機能はその先のいくつかレイヤーで、先に提供されてしまう可能性もあります。素材であれば、川上の原材料のレイヤー、もしくは川下の部材、部品、完成品、サービスなどのレイヤーで問題解決してしまうということです。それぞれのレイヤーにソフト化、デジタル化が伴なうと、その可能性はさらに高いと言えます。川下、川上レイヤーでの異業種企業による問題解決で自社のビジネスが消滅することもあるのです。
■最終受益者(エンドユーザー)の動向から目を離すとB2Bの最終商品・サービスが無くなってきていることさえも気づかない
自動車、住宅、オフィス、コピー機、TV、時計、バック、洋服までもがが、シェアサービスのターゲットとなり、所有することが徐々に少なくなってきています。B2Bの企業はこういった最終受益者(エンドユーザー)の動向を注視していないと、顧客や、顧客の顧客のビジネスそのものが他のビジネスに取って代わられていることがあります。取引先の動向だけみていても市場の動向はわかりません。取引先の要求そのものが間違っていることも多いです。特に、自動車、コンビニエンスストア、住宅などの寡占化された少数の企業がピラミッドの頂点に立つ業界は、組織や業界が巨大化し、末端の情報が意思決定者に届くのが大変遅く、組織の変革に時間がかかり、市場とのギャップが極めて大きくなります。B2B企業であっても業界を包み込むエコシステム(産業生態系)全体を自分の目で俯瞰してみていないとその変化には気づきません。自動車は自動運転になり、コンビニエンスストアはEコマースに、住宅やオフィスはシェアサービスに変化してきているというのが現実です。
■開発、設計、製造それぞれの分業がますます進む
B2B、特に日本の製造業の差別化の多くは、最終的には「製造」にあることが多く、アジア、新興国がつくれないモノを製造しているといわれています。結局それは、研究・設計開発段階でデザインされたものをうまく製造段階に転写させているから、もしくは特殊な製造・加工方法を武器にした特別なスペックの開発を行っているかです。しかし、モノが高度化し、複雑になれば、一企業で行うよりも、世界中のその道のトップの企業、組織、人と連携を組んでビジネス展開したほうが、高度なものを早期につくれます。現代は、ネットが普及しそういった優れたコア技術、コアコンピタンスもつ「個」が連携しやすい環境にあります。「新型コロナ感染拡大の影響で、会ったこともない他社の人と連携して、ビジネス成果を出した」という話はすでに身近なものになっているはずです。専門特化、分業はますます進み、それらはネットワークし新たな価値を生み出し続けます。
■デジタル化で拡張可能なフィジカル価値を追求する
結局当面10年、20年は、デジタル化することで、企業は拡大成長し、そのことが勝ち残りの要因となることは誰でもわかっていることです。しかしそれは最近よくいうDX(デジタルトランスフォーメーション)という流行りのお題目で、今のモノづくりを力ずくでデジタル化することではなく、ましてや最近よく耳にする「デジタルとフィジカルの融合」などといった無責任であいまいな話ではありません。
実態をさらに突き詰めて考えると、
B2Bでありながら
- デジタル化で自社のエコシステム・ビジネスモデルが指数関数的に拡張可能で、
- 情報のフィードバックでコア技術、コアコンピタンスの差別化が加速化し、
- 自社がベースとするプラットフォームを構築できる
そういった特性を持ったモノづくりやフィジカルな面でのソリューションを考え出す、といった逆転の発想が必要なのだと思います。