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「製品・サービスのデジタル価値を考えているか?」デジタルB2Bマーケティング 第3回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

B2B製品・サービスを企画する際に、フィジカルな価値は当然考えますが、デジタル価値を全く考えていないことがほとんどだと思います。

いま食品の世界は「フードテック」という概念が普及してきていて、食のデジタル化がものすごい勢いで進んできています。3Dプリンターでの食の提供、フードロボ、IoT調理器、プラントベースフード、ゴーストキッチンなど多種多様なコンセプトが生まれて発展しています。中国も含めた先進国の中で、この議論が遅れているのは日本だけです。どうしてか?おいしい、低価格、便利といった製品・サービスのフィジカルな価値を考えるのは得意な一方、デジタル価値に対するセンスが乏しいからだと思います。

■デジタル化センスとは「言語化」「情報化」センスだ

デジタル価値に対するセンスとはITを知っていることではありません。簡単に言えば「言語化」「情報化」といった戦いに関するセンスです。当たり前ですが、モノやサービスは、「言語化」し「情報化」すれば、広く伝播することができるし、コミュニケーションの題材になり、人にも自慢できます。もっと深く内容を知ろうと思えば可能になるし、タイミングや時間などの制約も超えることができるかもしれません。また多くの質の高い顧客の情報が入ってくるかもしれません。情報はそういった本来人間が持つ能力を拡張することができる可能性があるのです。この武器を使わずに、いいものを真剣につくっていれば、いつか良いことがあると我慢し、それが美徳と考えてしまう。AIとは、情報との接点を前提に、さらにそこから新たな知識を自動的に生成するというものです。

■例えば「編集特性」という概念

例えば部素材産業でデジタル価値を考えた製品・サービスとはいったいどのようなものなのでしょうか。私が最近言っているのが「製品・サービス編集特性」という概念です。部素材産業の多くは膨大な種類の製品を保有しなければ顧客と取引できません。それを顧客の仕様に合わせて調整し、提供するだけだと企業は疲弊します。いつか利益が出ない時が来ます。そういった製品は、様々な組み合わせのパターンをデジタル化し、シミュレーションするシステムと考えれば、顧客の設計情報がダイレクトに入ってくる可能性があります。さらに何らかの方法で顧客の顧客の情報が入る仕組みを作れば、顧客の顧客の要求を先回りして取り込んだモジュール、コンポーネントを企画し、顧客に提供できます。

■エコシステム・ビジネスモデルは研究開発段階で構想すべき

これは一つの例ですが、こういった編集特性のある製品・サービスは、研究開発段階から構想し、実行していないといけません。いいものができた、さてどう売るか、では全く遅いのです。最初にエコシステム・ビジネスモデルを企画構想し、そこから製品・サービスの仕様を自らが導き出し、製品・サービスではなく、システムを構築するべきです。仕様は取引先、直接接点のある顧客から聴くのではなく、エコシステム・ビジネスから導き出す時代です。顧客は、最終受益者や市場のことをあまり知らないと考えた方がよいと思います。

■優れた企業では、「新製品・新事業開発プロジェクト」はなくなっている

近い将来、いやすでに優れた企業では、「新製品・新事業開発プロジェクト」はなくなっていると思います。エコシステム・ビジネスを構築してしまうか、その中で重要なポジションをとれば、エンドユーザーの情報は連続的に、しかも大量に入ってきますので、AIのようなもののアシストを得れば、次に開発すべき製品・サービス、事業は改めて調査企画する必要がありません。連続して変化させればよいだけです。またそのようにマッシュアップできる設計にしておけばよいのです。

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