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「商品開発プロジェクトの組織体制づくりに細心の注意を払う(その①)」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第5回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

商品開発プロジェクトの組織体制づくりは他のプロジェクトと比べても難しい側面があります。なぜならいくらビジネスの経験が豊富であっても将来の顧客経験ニーズはわからないからです。むしろ過去の成功体験が思考、発想の邪魔をする可能性さえあります。一方商品開発となると、要素技術、設計、デザイン、生産・物流、販売などビジネスの機能の全ての知識が必要で、ある程度の経験が求められます。

未来に向かった新たな発想と商品開発のマネジメントの経験をバランスさせたプロジェクト組織体制づくりが必要となります。それらを鑑み、以下の様な点を考慮して商品開発プロジェクト体制づくりを行います。

① プロジェクトメンバーの選定
プロジェクトメンバー選定は主に以下の5つの視点で考えます。

視点1:未来の視点を入れて議論できる人
視点2:商品開発、事業開発の経験がある人
視点3:社外、業界外の視点を持ち自社の可能性を議論できる人
視点4:失敗を恐れずチャレンジすることを楽しめる人
視点5:周りと連携し絶えず学習することができる人

視点1では、入社3年以内の若手やインターン生がふさわしいと思われます。視点2では、商品開発、事業開発の経験があり、しかし過去にとらわれないタイプで、周りの意見を引き出せる人。視点3では、外部の契約コンサルタントや期間限定の専門知識、スキルをもつ契約社員、大学の研究者が良いと思います。視点4と5は、全てのメンバーに求められます。

② プロジェクトの組織構造

プロジェクト組織体制は、図のように、会社として公式の意思決定がでできるプロジェクトスポンサーとしての担当役員、プロジェクトを牽引するプロジェクトリーダー、それからプロジェクトメンバーが必要となります。そのほか開発、生産、営業などのプロジェクトの利害関係者となる各部門組織の部長がサポーター役として必要です。複数プロジェクトが走るようでしたら組織間調整などを行う事務局もあった方が良いと思います。

プロジェクトメンバーに求められる専門分野は、研究開発、マーケティング、商品企画開発、製造、営業、情報技術、知財・法務などの事業の各機能の経験者です。一人の人が複数の機能を兼務してもかまいません。

組織体制図例

③ プロジェクトのオーソライズ

プロジェクト組織は、プロジェクト開始前に、その存在をオーソライズし、社内外の関係者にプロジェクトの存在を周知する必要があります。そうすることにより周りの力を借りやすくなります。そのためにも、プロジェクト関係者を集めたキックオフミーティングは必須です。スポンサーのメッセージ、プロジェクトリーダーからのプロジェクト背景、目的、概要の説明、各プロジェクトメンバーの紹介、意気込みなどを皆で確認します。また参加者からの期待、疑問点を吸い上げ、プロジェクトの協力関係を一気に構築してしまいます。

④ チームビルディングのための合宿

プロジェクトメンバーのバックグラウンドは多様ですから、チームを一つにするためのチームビルディングは必須です。そのためよく行うのが、チーム合宿です。1泊2日程度で、プロジェクトの初期にプロジェクトのマインドセットを行い、プロジェクトの目的、目標・成果や進め方に関して集中して議論します。長時間同じ場所にいて、夜の時間も使えますので、メンバーは互いを知り、その後とても仕事がしやすくなります。

⑤ プロジェクトの議論のルールをつくる

メンバーは最初どこまで議論をしたら良いのかわからなく周りを気にし、その結果議論が小さくまとまる傾向があります。そういったことを防ぐためにも、下の図のような議論のルールを含めた行動指針をつくるのが効果的です。このようなルールがあれば遠慮なく本音で話せ、議論の生産性も高くなり、各メンバーの可能性を最大限引き出し、チームとして革新的な商品を企画できる可能性が高まります。リーダーは、議論の流れ、方向性、雰囲気に常に注意を払い、ルールに照らし、それにそぐわない状況になったら方向を修正しなければなりません。

プロジェクトの行動指針例

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