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「顧客経験価値を共創する手段。それがマーケティング開発」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第59回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

マーケティング開発も商品開発計画と同じで一気にドカンとやらないということが重要です。スモールスタートをベースにオンラインを含めた顧客との関係を通じてマーケティング戦略を徐々に進化させていきます。

ターゲット顧客と一緒に顧客経験価値を共創する手段がマーケティングミックス

マーケティングの開発は、まずターゲット顧客の存在が前提となります。ターゲット顧客とは、自社が狙いとする顧客経験価値が創造され、それを他のセグメントにまで効率的に拡大させるために最も効果的と思える最初の顧客の集合です。最初のターゲット顧客にどのような顧客経験価値を楽しんでいただくかをデザインすることからスタートします。その際重要なのはターゲット顧客のおかれた状況やシーンです。その状況、シーンにおいて、どのようなマーケティングミックスが効果的なのかを考えます。マーケティングミックスとは、前にも述べた通りですが、①商品(Product)、②販売チャネル(Place)、③広告宣伝(Promotion コミュニケーション)④価格(Price 顧客の負担する全てのコスト)4つのPの戦略のミックス(組み合わせ)=マーケティングミックスです。ターゲット顧客と一緒に顧客経験価値を共創するために、この4つのPのミックスをどのように企画し、展開していくかを考えます。

ワークマンプラスに見るマーケティングミックスによる顧客経験価値の共創

作業服などを製造販売するワークマンは、ターゲット顧客を若い女性にしたワークマンプラスという新業態を開発しました。そこで元来持っていたワークウエアのタフさや手頃な価格というブランドイメージをうまく活用展開し、『高機能×低価格のサプライズをすべての人へ』をコンセプトにした、アウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店」という独自のコンセプトを開発しました。

①アウトドアでのガーデニング、登山やスポーツなどに使えるデザイン性の高い商品を、②ワークマンプラスという通常のワークマンとは異なる新販売チャネルを開発し、女性が立ち寄りやすいショッピングモールなどにオープンし、③通常のプッシュ型の広告宣伝ではなく、熱烈なワークマンプラスのファンを無報酬のエバンジェリストにし、SNSなどで拡散し、またマスコミで取りあげられることで、認知させ、④徹底して低価格で提供するといった、見事なマーケティングミックスで、ユニクロや他のアウトドアアパレルブランドに無い新たな顧客経験価値を創造しました。ワークマンプラスはちょっとしたデートの場にもなっているようです。例えば、カップルの一方が普段から仕事で作業着を着ているような場合、相手はその話題にも触れながらファッション性のよい自分の好きなアウトドアファッションを楽しめる、そこでのちょっとした仕事がらみの会話や、自分がやりたい趣味の話をし、そして自分に似合ったものかなどの会話が行われ、いままでにない新鮮な顧客経験価値を楽しむことができるのです。

ターゲット顧客の顧客経験価値の深掘り、拡大のためのマーケティングミックス

最初のターゲット顧客の顧客経験価値が実現できたとして、次のフェーズで、そのターゲット顧客の顧客経験価値を深掘りしていくのか、ターゲット顧客を拡張させていくのかは、まさにターゲット顧客戦略です。そのターゲット顧客戦略に合わせて、次のフェーズのマーケティングミックスを企画します。その際、第1フェーズで実施してきたことと異なることを大がかりなプロジェクトで行うのではなく、継続して改善、進化させた先に新たな顧客経験価値を見いだすことが大事です。顧客経験価値重視のマーケティングミックスでは、ビジネスモデル戦略やそのベースにあるプラットフォーム戦略が前提になりますので、顧客とのオンライン、オフラインでのコミュニケーションがあるはずです。そのコミュニケーションから学習されたことが次のフェーズのマーケティングミックスに漸進的に反映されていくのが理想です。もちろんアクセントを付けて、過去の良い経験を発展拡張させるようなリニューアルによるサプライズがあっても良いと思います。ワークマンの例でいえば、新カテゴリーブランドの追加や店舗デザインの変更などが、ターゲット顧客の拡大とそのための良いアクセントになっていると思われます。

まとめ:顧客経験価値を共創するためのマーケティング開発

このようにマーケティング開発とは、自社の商品を顧客にプッシュ型で販売するのではなく、あくまでも自社と顧客の間で顧客経験価値を共創する(共につくる)ことを目的に以下の3つのことを計画することです。

  1. 時間の経過と共に蓄積する独自の顧客経験価値をデザインし、その進化(深化)、発展のシナリオを構想した上で、
  2. ビジネスモデルやそのベースのプラットフォームによるオンライン、オフラインでの顧客とのコミュニケーションや商品、販売チャネル、価格のマーケティングミックス(4P)を企画し、
  3. そのマーケティングミックスを将来に向けて戦略的視点で企画運用し、ターゲット顧客の顧客経験価値を深掘りし、同時にターゲット顧客そのものの拡大を図ること

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