
グローバルマネジメント・プラットフォームによる競争力向上
前回コラムではグローバル・マーケティングにおける重要な戦略コンセプトである共通化戦略とカスタマイズ戦略について紹介した。マーケティングの商品、価格、広告・プロモーション、販売チャネルごとに、「共通化戦略」と「カスタマイズ戦略」の組み合わせを変えて、世界の各市場を効果的・効率的にアプローチする戦略である。この共通化戦略とカスタマイズ戦略という考え方は、マーケティング活動だけに限らない。他の業務プロセスのマネジメントにも適応できる考え方である。グローバルで共通化したマネジメント業務基盤を、「グローバルマネジメント・プラットフォーム」と呼ぶ。
「グローバルマネジメント・プラットフォーム」とは、各国市場に点在する拠点が共有すべき業務システムと、それを支える情報・知識・ノウハウやITインフラなどの支援サービスを指す。
「グローバルマネジメント・プラットフォーム」を共有することで、世界の各拠点は競合他社に比べてより低コストで、より高いレベルの業務を早期に達成できる。
もちろん、このプラットフォームだけですべての業務課題が解決するわけではない。世界の各市場特性の違いを考慮して、「グローバルマネジメント・プラットフォーム」に各拠点独自のシステム、支援サービスを加えることで、地域に適合した業務の構築が可能となり、業務全体としての競争優位性を構築できる。
「グローバルマネジメント・プラットフォーム」は一般的に、間接業務である法務、知財、人事、総務、経理などで有効と考えられている。例えば、グローバル共通の人事制度は、優秀な人材を現地で採用し、評価・育成していく上で重要なプラットフォームといえる。このようなプラットフォームの考え方は、研究開発、商品企画、設計・開発、調達、生産、物流などの直接業務におけるマネジメントでも大変効果的と考えられる。
例えば、製造業の重要業務である生産、研究開発、知的財産の3つの業務プロセスについて、「グローバル・マネジメントプラットフォーム」のあり方にについて考えてみたい。
「グローバルマネジメント・プラットフォーム」の例① ~生産の場合~
グローバル企業の場合、生産拠点は本国に置かれるとは限らず、生産コストや各国の法人税優遇措置、ターゲット市場への近さなどを考慮して適切な場所に構築される。この生産拠点の構築においては、生産能力決定や工場立地・ネットワークデザイン、生産技術の選択、購買・サプライヤー管理、生産計画・統制、品質管理、原価システム、IE・改善、人事・労務管理、マネジメント体制などの多様な業務システムの検討が必要となる。
これらの業務システムを各拠点でゼロから企画検討するのではなく、共通の思想で設計された「グローバルマネジメント・プラットフォーム」を活用する。そうすることによって、拠点構築のリードタイムが短縮され、同時に他の生産拠点との機能分担、連携もスムーズになり、同時に業務ノウハウの蓄積も可能となる。
また昨年の東日本大震災やタイの洪水のような自然災害や各種カントリーリスクが発現した場合も、マネジメント・プラットフォームを共通化しておくことで、拠点間のシフトがしやすくなり、サプライチェーンへの影響を低減することができる。
しかし生産業務マネジメントのすべてを共通とするということではない。サプライヤー管理であれば、現地の商習慣にあわせたカスタマイズが必要となる。また人事・労務管理なども現地の労働環境や労働価値観にあわせたカスタマイズが必要である。
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