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「これからの事業計画は、エキサイティングな顧客経験価値から語れ」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第49回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

一般的に事業構想といえば、ほとんどが自社の商品、事業のことばかりです。しかしよく考えるとおかしな話です。商品や事業は顧客が最優先で、つまりそれは顧客がどのような経験を求めているのかが戦略構想で最も大事なのです。ですから顧客経験価値がどうあるべきかを最初に、かつ、最重要項目として述べられるべきです。私たちの考えには工業化時代の発想がまだまだ染みついていますからそこを変革しなければなりません。

事業構想書における顧客経験価値戦略とは、目指すべき顧客経験価値をデザインし、戦略として簡潔、明瞭に表現することです。

結局顧客経験価値とはB2B、B2Cに関わらず顧客の行動変容を促すものです。つまり一般消費者であれば価値観、わかりやすく言えば自分の理想のライフスタイル、法人顧客でいえば経営理念や経営戦略と直結するイメージをデザインすることです。商品やサービスの企画ではありません。そこを取り間違えないようにしたいものです。

ターゲット顧客をベースにしたペルソナの設定とペルソナのシーンを確認します。これは既に仮説設定と検証で実施していますので、最終的な結論を導き出せば良いと思います。複数のペルソナがありますので、シンボリックなもので良いと思います。つまりそれだけペルソナを徹底研究して選択できるような状態になっていないと戦略にならないともいえます。

目指すべき顧客経験価値の表現は簡単では在りませんが、顧客経験価値の特性は、5つの視点での顧客経験価値(縦軸)とその時間的な流れ(横軸)であることを踏まえて、縦と横の流れを簡潔に表現します。具体的には以下の3つで表現します。

①顧客経験価値コンセプト
顧客経験価値を一言で短い表現で表したもの。広告のキャッチコピーになるようなもの。コピーの表現が感覚、感情の表現か、行動、思考、共感のどこに重点を置くかは、経験価値の重点(手がかりや決め手)がどこにあるかによります。

②顧客経験価値要素
顧客経験価値を構成する要素を5つから7つ程度展開します。構成要素は顧客にとって独自で、新規性があり、一方で感覚、感情として顧客にフィットしたものでなければなりません。また顧客のフォローしたい集団との共感の要素も必須です。特に顧客経験価値の「手がかり(トリガー)」と「決め手(レバレッチ)」は大変重要で、ここで表現します。

顧客経験価値コンセプトも顧客経験価値要素も、文字だけですと伝わりにくいので写真、イラストや動画などで表現した方が良いかも知れません。 

③顧客経験価値ストーリー
顧客経験価値ストーリーは、代表的なペルソナの経験価値をストーリー化したものです。5つの経験価値を時間的な流れで表現することになります。これも文字だけでなく、写真とキャッチコピーや動画で表現する方が良いかも知れません。

顧客経験価値戦略全体でいえば以下のようなことが評価視点となります。経験価値を作成したら自己評価し修正してみてください。

■エキサイティングな新経験が存在するか
■簡潔、明瞭でわかりやすいか
■ドラマチックなストーリーがあるか
■顧客が大事にしている価値観との結びついているか
■導入しやすさがあるか。きっかけがあるか
■誰かと共感したくなる経験か

このようにこれからは商品、事業の戦略そのもの、顧客経験価値を主軸にし、その表現も大きく変わっていかなければなりません。顧客経験価値のデザインにはビジュアルや動画での表現もとても重要になってくると思います。

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