「PoCとは具体的に何をするのか?」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第37回
PoCを企画する前に事業・商品のコンセプト、ビジネスモデルを明確にする
PoCを実施する上で何が最も重要かと言えば、PoCそのものの企画よりも、PoCで検証すべき事業、商品のコンセプトとビジネスモデルをしっかりと企画することです。この2つの企画がしっかりとできていなければ、KPIなど検証すべきことが曖昧で、検証の意味が薄れたり、無意味になったりします。
これまで述べてきたことの繰り返しになりますが、顧客経験価値重視の事業・商品コンセプトとは以下のような項目です。
- 顧客ペルソナ(ターゲット顧客)
- 顧客ペルソナが商品を必要とする状況、シーン、ニーズ
- 基本コンセプト
- 基本機能
- 付加機能
- プラットフォーム
- 提供形態、販売方法
- 価格、顧客の負担するコスト
- 顧客ベネフィット
上記に加え、上記商品コンセプトのペルソナのあるべき顧客経験価値(感覚、感情、思考、行動、共感の5つの視点で商品の使用前、使用中、使用後をデザインする)も企画し検証の対象にします。
検証すべき商品コンセプトと顧客経験価値からKPIを設定する
KPI(Key Performance Indicator)とは、日本語で「重要業績評価指標」で、商品コンセプトとその顧客経験価値が実現されるための指標です。例えば商品コンセプト言えば、
- ターゲットとなるペルソナの商品購入可能性80%以上
- 完全使用率(途中で使用を中止せず終わりまで使う)70%以上
- リピート購買率90%以上
- 家族、友人への紹介率85%以上
- 提示価格受容性80%
などです。
仮説として目標数値を設定し、試作品の使用結果、コンセプトボードなどでの商品コンセプト説明に対する反応などで調査します。
KPIは、商品企画の最終ゴールをブレークダウンしたもので、最終ゴールと強い相関のあるものであり、そのロジックが明確でなければなりません。最終ゴールを頂点とし、ロジックツリー展開した代表的な指標をKPIにします。
ただし直接測定できるものとできないものがありますので、測定できるものをピックアップする必要があります。
PoCを具体的に企画する
PoCの主な企画項目は以下の通りです。
- 目的、ゴール
- PoCの対象、範囲
- 実施期間
- PoCの対象顧客、パートナー
- PoC実施概要
- PoCの制約条件
- 実行組織、実施責任者、各担当役割
- 予算
- 検討対象とKPIリスト、具体的実施方法
- 実施スケジュール
これらPoCの企画計画は、かなりの作業となりますが、この企画計画をしっかり実施しておかなければ、PoCは実施できませんし、KPIを検証することも難しくなります。PoCは重要な検証作業ですから準備をしっかり行うべきです。実際PoCを実施する前に、予備PoCを実施することをお勧めします。予備PoCとは、PoCと同じことを全体通しで1度か2度テストで実施することで、これにより、本番のPoCの実施上の問題や課題が明確になります。特に顧客やパートナーを巻き込んだPoCは、慎重に行うべきで、予備PoCを実施するのは必須だと考えてください。