「顧客経験価値の分析と仮説のまとめは縦文脈と横文脈の2つ(前編)」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第23回
顧客経験価値の分析と仮説のまとめ
ここまでは、事業の主体の事業、商品戦略仮説によって顧客経験価値はどう変わるのか、そしてどう変えるべきなのかを発想するために、各種手法を用いて調査し、デザインしてきました。その各種手法とは、前に説明したデザインシンキング、タウンウォッチング、現場観察、異業種アイデアソン、ペルソナデザイン、カスタマーエクスペリエンスマップなどです。
次にその調査、デザインされた顧客経験価値を、分析・まとめとしてカスタマーエクスペリエンスマップとして一旦分析し、まとめる必要があります。
分析・まとめの観点は大きく2つです。ひとつは縦文脈の、顧客経験価値の5つの視点、感覚、感情、思考、行動、共感です。縦文脈は、仮説として企画した商品の使用前、使用開始、使用中、使用後の4つの断面の分析を行います。
もうひとつは横文脈で、それら顧客経験価値の5つの視点の時間的流れです。時間の流れは大まかに、仮説として企画した商品の使用前、使用開始、使用中、使用後によって生まれる経験価値のストーリーです。
縦文脈:顧客経験価値の5つの視点の中で何が手がかりとなるかを分析する
繰り返しになりますが、顧客経験価値の5つの視点とは、感覚、感情、思考、行動、共感です。顧客経験価値の縦文脈の分析とは、この5つの視点で、これまで調査、デザインしてきた顧客経験価値を記述します。
感覚で捉えたものが、どう感情となり、自己の価値観に沿った思考が発生し、その結果行動が生まれ、他者とその経験を共有、共感するという文脈をまとめます。その場合、感覚、感情、思考、行動、共感と下から上がる文脈とは限りません。行動が感情、感覚、思考そして共感を生む場合もあれば、共感から、思考、行動、感情、感覚と上から展開する文脈など様々です。
顧客経験価値の縦文脈の分析は、仮説として企画した商品の使用前、使用開始、使用中、使用後の4つの時点でそれぞれ分析・デザインします。分析の際は、具体的に1つのモデルとなるペルソナを設定します。複数のペルソナを分析したい場合は、最初のモデルのペルソナをベースに複数に展開していくと進めやすいと思います。
顧客経験価値の誘因となる最初の切っ掛けを「手がかり」と呼び、マーケティング戦略上とても重要なポイントとされています。例えば、これまであまり運動せずに制限なしで飲食をしてきた人が、定期的に運動をし、食事にも気を使うように態度が変容した場合、つまり顧客経験価値が変わった場合、例えば友人の指摘や、医師からの忠告など、何か大きな切っ掛けがあるはずで、それが「手がかり」です。その「手がかり」が顧客経験価値の5つの視点のどこにあり、具体的に何が「手がかり」になるのかを分析し、仮説として企画します。
「手がかり」は、1つではなく、使用前、使用開始、使用中、使用後の4つの時点でそれぞれにある場合もありますし、使用前や使用開始の初期段階かも知れません。また使用することのハードルが低い商品であれば、使用中か、使用後かも知れません。それは商品特性によって違います。例えば、シャンプーや洗剤などの消耗品は消費者の購入、使用のハードルが極めて低く、その一方でブランドのスイッチングも頻繁に発生します。ある程度のシェアを持っていれば、ある一定期間に使用する可能性が高く、使用中、使用後に強力な手がかりを持っていれば継続購買につながります。例えば、「やっぱりシャンプーは潤いのある●●ですね」と使用中、使用後の感覚が重要なトリガーになります。
なぜ、どの時点で関心を持ち、購入し、使用し、消費者の顧客経験価値が変わり、その結果他者と共有するのかは、ECサイトをはじめオンラインビジネスが普及してからは大変重要なトピックスとなりました。オンラインであれば一部であっても顧客の行動がデータで把握できる可能性が高く、それらを分析すれば重要な手がかりが突き止められます。そのためオンライン上でのタッチポイントがどこかと、そのタッチポイントのユーザーインターフェースが成功のキーとなります。