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「PoCは経営者やプロジェクトリーダーの本気度を表している」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第36回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

PoC(概念実証:Proof of Concept)とは何か

PoC(概念実証:Proof of Concept)という言葉が最近よく使われています。以前からマーケティングではコンセプトテストなどと言われていましたが、このPoCは少し背景が異なるようです。

PoCはそもそもスタートアップビジネスや企業の新事業開発で、新しく企画した商品、事業のコンセプト全体、もしくはその一部の要素を市場で検証するものです。米国のスタートアップコンサルタントのエリック・リース氏が提唱する‟リーンスタートアップ”の中でも、ビジネスのありたい姿、ゴールの成功要因をバックキャストで考え、PoCで検証することの必要性を述べています。

PoCが普及した背景

PoCという手法が普及したことにはいくつかの背景があると私は考えています。一つは、スタートアップ企業は、既存市場を破壊するような新事業、新商品を企画、開発しますが、そういった事業は過去誰もやったことがないため、市場規模や市場ニーズはドキュメントで調査しても算出することはできません。そこで市場性を証明するために、PoCを企画、実施して市場の可能性を検証し、投資家に訴えかける必要があったからです。また投資家も、過去の資料で市場性を検証することもできないので、そういったPoCで検証した結果でいち早く投資意思決定をし、ともに事業化を推進したのだと思います。そしてもう一つの理由は、既存市場が飽和し、革新的な顧客経験価値を生み出す商品が求められているからです。革新的な顧客経験価値とは、顧客の中の感覚、感情、思考、行動、共感の文脈が新たに生まれることです。どのように認知され、顧客経験価値がつくられ、他者に伝搬、共有されるかは実際に試してみないと解りません。そこでPoCという方法で、顧客経験価値を把握するために普及したのだと思います。

PoCを活用したリーンな事業開発スタイル

PoCで重要なこと

PoCは一般の市場調査とは異なる、おさえるべき重要ポイントがいくつかあります。ここでは4つ紹介します。

①小さく素早く低コストで実施すること
検証プロジェクトを大がかりにしない。検証の範囲を広くしない。PoCの計画に時間をかけない。一部でよいので素早く、身近で低コストな方法で検証すること。

②新商品や新事業コンセプトの定量目標であるKPI(Key Performance Indicator) を明確にし、それを検証すること
新商品や新事業コンセプトのゴールを明確にし、バックキャストで、そのゴールを達成するKPIを設定し、さらにはそれを下位のKPIにブレークダウンし、その定量的な目標をPoCで検証する。目標値と結果のギャップも定量的に把握する。

③PoCの結果から新商品や新事業コンセプトを柔軟に素早く修正すること(ピボッティング=方向修正)
ギャップの原因を分析し、修正案を素早く企画し、時には新商品や新事業コンセプト全体を見直す。修正することをためらわない。

④新商品や新事業コンセプトが市場に受け入れられることがある程度証明されるまでPoCを繰り返すこと
一部のKPIの検証で終わらない。また修正した新商品や新事業コンセプトでの検証を行い、新商品や新事業コンセプトの受容性が証明されるまで、PDCAを回し続ける。

このようなPoCの原則から考えると、私は官庁や大企業が行うPoCの多くに違和感を持ちます。それは極めて大がかりで、計画に時間とコストをかけ、全てを一気に検証しようとし、検証結果のフィードバックが遅く、PDCAが一回転もせずに終了してしまうものだからです。PoCを行うことが目的化し、単なる予算の無駄遣いではないかというものが多いと思います。イノベーションの逆行としか見えません。

本気でのビジネスのスタートアップに取り組もうとするならばPoCは即実施されているはず

本気でスタートアップに取り組もうとする経営者であれば、コンセプトが明確になったら形式にこだわらず、たとえ部分であってもPoCを即実施するはずです。なぜならPoCによっていち早く市場検証することにビジネスの成功がかかっているからです。もちろん定量的な検証は必須ですが、自分のアイデアが市場に受け入れられるかどうか、家族、友人などに協力を仰ぎ、PoCの予備調査のようなことを行うのが当然だと思います。そういった行動力がない経営者、リーダーは新商品・新事業開発に向いていないと思います。PoCを行うスピード感、行動力は、スタートアップの経営者やプロジェクトリーダーの本気度を表していると思います。

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