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2021年、企業の目指すべきところがはっきり変わった

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

新年、明けましておめでとうございます。昨年は、コロナ禍で当方も多少の仕事の苦労はしたものの、徹底した動画の活用、オンラインワークショップなど、皆さまのご理解、ご協力のおかげで乗り切ることができました。心から感謝申し上げます。
2021年新年に当たって、毎年恒例の社会、経済、ビジネスにおける私の見方、考え方をお伝えいたします。何かのご参考になれば幸いです。

■2つのつながりの大切さ

2020年は、ふたつの「つながり」ということをあらためて考えさせられました。一つ目は、家族、友人、地域、職場、国という強い共通軸をもったつながりです。ネットが隅々までひろがり個人が重視され、その自由度も高まりましたが、一方で、どんな人であっても経済的役割、社会的、精神文化的な役割を持つ集団の一員であり、互いに支え合っていること認識することができました。特に医療、介護、通信、エネルギー、公共交通などの社会インフラを支えてくださる方がコロナ禍にあっても任務を果たされているからこそ、私たちも生きていけることをあたらためて自覚しました。

二つ目のつながりは、強い共通軸のつながりを超えた世界、グロ-バル社会のつながりです。今なお続く新型コロナの危機的な状況は、身近なつながりの重要性だけでなく、国、地域を越えて協力、連携しなければ「個人」も存続できないことを実感しました。このことで私たちは、2015年9月に国連総会で採択されたSDGs(Social Development Goals:持続可能な開発目標)が、真剣に向き合い、実践していくべきものであることを再認識したといえます。

大変残念なことに、新型コロナによって社会の経済格差は拡大したと報道されています。格差は、対立や社会不安を生み出し、その状況を利用した悪しき政治による紛争、戦争が引き起こされる原因になることは、これまでの人類の歴史で明白です。最も危機的なのは、いまこそ国を超えてグローバル規模で協力連携しなければならない状況の中で、米中対立など自国優先主義や国内でも自分優先主義などの「分断」の力が高まっていることです。

私たちは個人の健康、人権を守るためにも今回のような新型コロナ問題をきっかけに、格差や地球環境問題はじめ、社会課題解決を優先させるよう行動変容しなければなりません。強い共通軸のつながりも重要ですが、一方で文化、信条、イデオロギーを超えた、異質なものとのつながりが重要なのです。異質な人、コトとのつながりで、グローバルな社会問題、課題の視点で、新たな発想が生まれ高いクリエイティビティが発揮できるのです。未来のグローバル化の本質は、経済のグローバル化にとどまらず、異質な人、組織とのつながりから生まれる知識とそれを生みだす学習スタイルのグローバル化と考えるべきです。

■企業の目指すべきところがはっきり変わった

このような背景から、2021年は企業が目指すべきところがはっきりと変わったように思えます。「短期利益志向」から「企業活動を通した社会課題解決志向」への変化です。このことについて、皆さんはどう考えるでしょうか。例えば2つの会社があったとして一つは「食品を売って儲けさせてくださいね」という企業と、もう一つは「食を通じてお客様満足を達成しつつ、貧困やフードロスを解決するために仕事をします」という企業があったとして、2つの会社が似たような商品を提供しているのであれば、ほとんどの人は後者を選択すると思います。しかし多くの会社は高邁な経営理念を掲げていても、まだ前者を脱しきれていないと思います。

しかし現在の10代、20代のZ世代といわれる若い人は、派手さは無いが現実的な自分らしいライフスタイル、文化や伝統を重視し、また環境問題など社会課題に強い関心を持ち、多くの人がそういった活動に参加、実践しています。このようなより進化した生き方をする人はZ世代に限らず、全世代で増加しており、社会の中心となると考えられます。

一方企業や組織のトップや管理職は、これまで企業経営が短期業績志向であったため、視野が狭くなりがちで、社会課題には関心がない訳ではないが、仕事の中に本気で組み込むことは正直少ないと思います。短期業績志向も、組織や会社を存続させなければならないという使命感、責任感から生じるものであり、決して否定されるものではありませんが、今時代が大きく変わってきていることの自覚は必要です。

いま私たちが学ぶべきことは、自然環境や社会にひずみをもたらせてまで個人や組織の外的な欲求を拡大させ未来の可能性を破壊することではなく、「“足る”を知り」自分の内面の充実、進化により目を向け、それを社会課題に生かすことだと思います。

■企業とそこで働く個人が考えるべきこと

今後AI(人工知能)がなど、労働集約的産業だけでなく知識産業までもが自動化され、人工知能と協業する社会で、人の価値は何か?人が社会で生きていく上でどんな価値を生み出して、生きていくべきかを冷静に考えると、“自分も含めた人の成長と可能性と、それを周りへの貢献に生かすこと”であることが解ってくるはずです。

企業も個人も、自分が内的、本質的に幸せなことと社会、企業が求めるものが一致する方向にしていくべきだと思います。もっと具体的に言えば、他者とのつながりの中で、自分なりのライフスタイルを追求し、創り出していく中で、新たな知識、知見、作品を見いだしていくことが、さらに誰かのためになり、そこからまた新たな知識、知見、作品が生まれていくサイクルです。そういった精神的なもの、内的なものは“学習型の行為”であり、エネルギー消費が極めて少なく、環境負荷も少ないと考えられます。

この様な世界観では、企業の評価指標も今とは大きく代わり、シェア、売上、利益拡大よりも、どれだけ働く人が自律してやりがいを持って仕事しているか、独自の知識、知見、作品を生み出しているか、それが社会課題解決に直接貢献しているか、環境変化に柔軟に動けるか、未来に再投資ができているかといったことに変化していくと思います。

 

 

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