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「旧」と「新」の入れ替わりがはっきりしてきた

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

 時々振り返ってみることは悪いことでありません。それが将来を考えるためであればです。
 2018年という一年を振り返ってみて感じるのが、「旧」と「新」の入れ替わりがはっきりしてきた年だったということです。なぜ「旧」と「新」の入れ替わりを実感したか?失礼ながら何人かの経営者の方、上級管理職の方との会話の中で、「あれ、どうしたの?なんでそれが理解出来ないの?」という強い違和感、時代から取り残された日本の経営を直に感じてしまったからです。
 どんな「旧」と「新」の入れ替わりがあるのか?私の独断と偏見の「入れ替わり」を述べます。

旧:会社や組織がどう考えるか⇒新:自分がどう感じ、考えるか

 今年の9月に女優の樹木希林さんが亡くなりましたが、その生き方、考え方が注目され、今でもマスコミで頻繁にとりあげられています。
 「モノを持たない、買わないという生活は、いいですよ」
 「絶対こうでなければいけないという鉄則はない」
 といったハッとする発言にみな心を引かれたのではと思います。会社がどう、組織がどうということに疲れていて、自分がどう感じるかといったことが見失われている時代と社会がある中で、もっと自分に率直に生きていこうという動きが若い人からシニアまで広がってきていると思います。
 「もう人生、上等じゃないって、いつも思っている」
 樹木希林さんのご自身の「死への向かい合い方」が、多くの人に「自分はどう感じ、考えるか」を思い起こさせ、気づかせてくれたと思います。

旧:大量にモノをつくって売る⇒新:顧客と時間、空間を共にする

 決してモノづくりが終わったとは思いませんが、つくる方の考えで、大量につくり、力ずくで売る時代はもう限界です。多くの日本企業は過去の流れを止められていません。モノづくりであっても、基本は売るではなく、顧客とそのモノをつくってくださる時間や空間を共有することでなければなりません。そういう意味で「職人」というスタイルが見直されてきていると思います。
 「モノづくりでなくコトづくり」と言う経営トップは多いのですが、過去のモノづくりの発想と根性でコトづくり、顧客経験価値を語っている様に思えます。だからモノづくりに関わっていても楽しくなくなってきています。職人は仕事そのものから自分の気づきがあり、厳しくしかし充実した時間を過ごせています。それは使う側の驚き、発見を究極まで追求しているからです。

旧:トップダウンの経営改革⇒新:「小さくボトムアップ」での進化

 ここ数年の企業不祥事のいくつかは、かつて必要に迫られて行なったトップダウン型の経営改革の後遺症という感じがします。そのときのトップダウン経営に大きな効果があったから、経営トップも、周りも「では今回もその路線で行きましょう・・・」と。しかしトップダウンの経営改革は外科手術なのです。外科手術をしょっちゅうやっていると部分は良くなっているかもしれないが、生命体としては機能しなくなってくる・・・。そんな感じだと思います。
 人も組織も同様ですが、大事なことは日々の仕事、現場の仕事なはずです。そこが不在の仕事はいずれ機能しなくなる。ネットの世界の多くは常にボトムアップです。人気アプリも自分や周りが使って「便利」「楽しい」「うれしい」が大事です。「小さくボトムアップ」を企業・組織経営の基盤とするべきで、経営トップもそういったことをサポートし、自ら参加するようでなければダメです。

私の感じた「旧」と「新」の入れ替わりは、まだまだあります。例えば、

旧:中期経営計画と年度予算⇒新:未来の想像と創造

旧:業界シェア1位の戦略⇒新:異業種連携の戦略

旧:バーチャル、クラウド、スマホ⇒新:フィジカル×バーチャル、クラウド、スマホ

旧:経営(意思決定)と執行の分離⇒新:プレイング社長

旧:買うまでの顧客経験価値⇒新:買ってからの顧客経験価値

旧:AI、ビッグデータ解析⇒新:人とAIの創発活動

旧:金銭的財産⇒新:能力、スキル、繋がりの財産

などなど。2019年は、イギリスのEU離脱問題、米中貿易戦争、世界景気の調整期など世界経済・社会の分水嶺の年になることは間違いありません。皆さんも「旧」と「新」を考える良い機会になればと思います。

良い年末年始をお過ごしください。

 

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