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商品企画開発は誰の仕事か?むしろあいまいな位置づけでよい

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

■商品企画開発のうまい会社と下手な会社の違い

 仕事柄様々な業種の企業に伺ってみて感じるのは、商品企画開発が上手い会社と下手な会社に分かれるということです。商品企画開発が上手い会社が、戦略フレームワークを使いこなし、MBA経営的な商品マネジメントを行っているということではありません。商品企画開発が上手い会社は、なにか独自の文化のようなものが流れていて、決して論理的なことばかりで判断しているのではないと思います。時には儲けにつながらないこともたくさんやっています。今回のコラムでは、いくつかの観点で商品企画開発の上手い会社と下手な会社を比べてみたいと思います。

商品開発が上手い会社と下手な会社の違い

① 商品企画開発のうまい会社は自社商品を家族や知り合いに勧める

 商品企画開発のうまい会社は常に自社商品を家族や知り合いに勧めます。下手な会社は自社商品を家族や知り合いに勧めません。家族や知り合いに商品を勧めるのは、決して商品の出来が良い時だけではありません。出来が悪い時も勧めます。その結果、文句を言われたりすることもあります。しかしそれを乗り越えようと苦笑しながらも様々な努力をします。しかし商品企画開発が下手な会社は、自社商品を周りに勧めることもしませんし、その結果苦情を受けることもありません。個人と商品を切り離して距離を置いています。冷たい関係です。商品企画が上手い会社は負けること、失敗することを知っています。商品企画開発が下手な会社は勝つことだけを狙う、優等生タイプのように思えます。

② 商品企画開発の上手い会社は顧客との直接対話、共有に熱心

 弊社の主催する異業種研修に、ある飲料メーカーのかたが数名参加くださった際に、彼らは時間があれば他社の研修生に、自社商品を熱心に説明していました。講師の私に対しても商品に関する意見や感想をしつこく求めてきました。それもその飲料メーカーの研修生全員がです。商品開発の人だけでなく、営業の人もいれば、生産の人もいました。その飲料メーカーの社員は自社商品の良さを自分の言葉で直接伝え、顧客の感想を直接聞きだすことを習慣にし、楽しみにさえしています。商品の良さを自分の言葉で直接伝え、顧客の感想を直接聞きだすことで、なにか目に見えない強いエネルギーを得ているようでした。
 一方、商品企画開発が下手な会社は、テレビ、雑誌などの媒体での一方的な宣伝に依存する傾向が強いように感じます。消費者の反応も広告代理店や市場調査会社の調査結果に依存しています。ある一部門の一担当の人だけが顧客の声を聴き、分析してまとめて関係部署に報告する形式が多いのです。確かに効率的ですが、加工されたデータからは顧客の生きた商品に対する実感は感じとれません。

③商品企画開発が上手い会社は、自社らしさ、個性を重視する

 商品企画開発が上手い会社は、自社らしさ、個性といった内的なものを重視します。商品企画開発が下手な会社は、内的なものよりも市場での競合を過度に意識し市場への適合を重視します。その結果、競合と似たような平均的な商品を二番煎じで出すことが多くなり、独自性が薄まり、価格競争に陥りがちとなります。自社らしさや個性とは、企業の哲学でありブランドです。顧客は商品を通じて独自の経験を楽しみたいのです。
 自社らしさ、個性とは、顧客との対話や経験の共有を通じた互いの感覚、感情、思考などから見いだされ、互いに育てていくものであり、市場調査の平均値などからは生まれません。

④ 商品企画開発が上手い会社は、顧客との関係、プロセスを重視する

 商品企画開発が上手い会社は、顧客との関係、プロセスを重視しますが、商品企画開発が下手な会社は、売上やシェアなどの結果重視です。もちろん商品企画開発が上手い会社も結果も重視しますが、それは顧客との関係、プロセスへの努力によって最終的に生まれた結果と考えます。売上やシェアなどの結果は、顧客の満足にはあまり関係ありません。それを重視しすぎると、顧客の満足がおろそかになるのは当然です。あくまで結果なのです。自分が顧客の立場で考えるとよくわかると思います。

⑤ 商品企画開発が上手い会社は、部門を超えた商品企画開発を行う

 商品企画開発が上手い会社は、担当部門、担当者任せにせずに部門を超えた商品企画開発を行います。研究開発、生産、営業、顧客サポート、総務、経理、法務・知財など様々な部門が関わります。もっとわかりやすく言えば、商品企画開発に誰でも口を出せます。商品企画開発が下手な会社は商品企画開発が聖域扱いだったり、または孤立していたりして他の部門の人は口を出しません。商品企画開発が成功するかしないかの責任は、商品企画開発部門とその担当者だけに集中します。しかしこれはとてもおかしな話です。現在、商品とは、モノや単純なサービスだけでなく、情報提供や周辺のサービス、それを創り出す仕組みやビジネスモデルも含まれるとすれば、商品企画開発は一部門、一担当だけの仕事ではないはずです。

⑥ 商品企画開発が上手い会社は、一度出した商品の継続した改善、修正を行う

 商品企画開発が上手い会社は、一度出した商品の継続した改善、修正を行いますが、商品企画開発が下手な会社は、出しっぱなしのことが多い気がします。商品企画開発が上手い会社には、商品上市の背景に、思い、理念などの強い哲学が存在し、その軸はしっかり持った上で、継続して商品を改善、修正します。商品は企業の哲学の重要な表現と考えているのだと思います。それが顧客の期待値となりブラントとなっていくのです。商品企画開発の上手い会社は、顧客からのフィードバックを日々リアルタイムに受け、改善テーマが常に明確になる仕組み、つまりビジネスモデルを持っています。

■商品企画開発はかかわる社内外すべての人・組織の仕事

 「商品企画開発は誰の仕事か?」かつては担当する部門があって、周りの素人が口を出しにくい一種プロ集団でした。確かに商品企画開発には、専門知識や、技術、スキルが必要です。しかし商品の本質はモノや単純なサービスの機能ではなく、それを使用する顧客の感覚、感情、思考、共感などの顧客経験価値です。特にB to Cの消費財の場合、顧客経験価値はあくまでも主観です。B to Bの生産財であってもそれで作られる商品は消費材に近ければ、主観としての顧客の顧客の経験価値が重視されます。
 そういった顧客経験価値を把握するには、社員の力を借りることは必須なはずです。社員を分業された一業務だけに従事させることは、社員として人を活かしていることになりません。
 また顧客経験価値とは、顧客と会社、具体的には社員との様々なコミュニケーションで生まれてくるものです。顧客も経験しますが、供給する側の企業の社員もまた経験します。相互のやり取りで生まれてくるコトが経験です。顧客経験価値を創り出すためには、商品企画開発部門のみならず、研究開発、生産・物流、営業、総務や経理、法務・知財そしてパート社員、取引先など様々な人が関わっています。
 商品企画開発は、社員全員、かかわる社内外のすべての人・組織の仕事であることを認識しなければ、顧客経験価値は作り出せないと認識すべきと思います。

■改めて商品とは何か?

 改めて「商品とは何か」を考え直すことが一つの戦略になりえると思えてきます。商品という概念をいくつかの視点で考えると

  • 商品とは顧客との「つながりの仕組み」
  • 商品とは顧客と企業やかかわる人の「学習の場」
  • 商品とは顧客と企業の「信頼関係」
  • 商品とは「互いの経験価値の創造と共有」「幸せ」

といったことが思い浮かびます。

 消費者が自分の生きる価値、意味を意識し、それに合った商品を使い、時間を過ごすことで「顧客経験価値」を感じる機会が多くなってくると、企業の「売れればいい」「シェアが高ければいい」といった発想が通用しなくなってくる気がします。意味のある「失敗」や「試行錯誤」が、魅力的な顧客経験価値や社員の仕事経験価値を生むのだと思います。そういったことが実現できる企業や組織が選ばれる時代になってきたと言えます。

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