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幸せに働くための習慣

ニューチャーネットワークス コンサルタント
会田 明代

■  企業における健康に関わるコスト

 企業で負担している健康に関わるコストで何が一番高いかご存知でしょうか。恐らく「医療費(診療・治療などにかかる費用)」と思われる方が大半ではないでしょうか。東京大学政策ビジョン研究センターの発表によると、米国で調査された従業員にかかる健康関連のコスト割合は、直接コストの医療費よりも、プレゼンティーイズム(何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態)やアブセンティーイズム(病欠・病気休業)によるロスコストが全体の7割を占め、特に体調不良により生産性が下がるプレゼンティーイズムのロスコストは全体の6割を占めていると言われています。(図1)企業としてはここをいかに改善するかが今後企業における健康経営で重要な点となってくるだろうと言われていますし、今後私たち一人ひとりが、健康状態を良くするだけでなく高い生産性を保つことが求められる時代がすぐそこに来ているといっても過言ではありません。生産性を上げることは、企業にとってメリットがあるだけでなく、「働く個人」にとってもより健康に楽しく働くことが出来、満足度向上などメリットがあるのです。では、自身の健康やパフォーマンスをあげるにはどうしたらよいのでしょうか。

 

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図1 健康関連総コスト構造
出所)東京大学 政策ビジョン研究センター

 

■  自身の日々の行動、習慣を知る

 弊社では、様々なプロジェクトを通じて、健康特に予防医療やその前の健康維持に関するテーマを多く扱ってきており、その中で企業や大学のこの分野の専門家の方々にお話を伺う機会が多くあります。共通してよく出てくるキーワードが「習慣」です。例えば、朝起きて家を出るまでの行動、シャワーを浴びるときの順番、服を着る際どちらの腕から通すか、家から会社までの通勤経路など、何も考えずに行動している、出来ること。それが習慣です。人間の「1日の行動の4割は習慣から出来ている」と言われており、自分で考えて判断しなくても脳の中に記憶された習慣が無意識に判断して行動を起こしてくれているのです。

 4月から新しい仕事や部署に変わった、新しい環境で年度をスタートしたという人も多いのではないのでしょうか。そうすると今までの習慣で無意識に行っていたことが通用せず、新しい習慣を作っていくことになります。その過程で今までは使っていなかった脳の判断を使用することになるので、疲れたなと感じることが増えるそうです。それも一定期間すると、また新しい習慣として定着し、無意識のうちに行動出来るようになるのです。

 自分の1日がどのように成り立っているかを考えてみると、客観的に自身の行動や気持ちの変化を見るきっかけが生まれます。

 

■  悪い習慣を治す

 私自身も規則正しい生活が毎日出来ているか、定期的に運動をし食事も気を付けているかというと、そうではありません。むしろ悪い方の事例に入るかもしれません。運動不足、不規則な生活、暴飲暴食などわかっていながら治せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。悪い習慣をやめる。というのは、すでに無意識に脳が覚え行動を起こすようになっているので、なかなか難しいそうです。ではどうするか。悪い習慣を変えるには、それに代わる新しい習慣を身につけることが重要だそうです。新しい習慣を2週間、1カ月、3カ月という風に短期間からスタートし継続するようにすることで、脳の中で習慣化され考えなくても出来るようになるのです。新しい習慣を作るためには2つポイントがあり、一つは「きっかけ」もう一つは「報酬」だそうです。

 

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図2:習慣のルーチン
出典:習慣の力 The Power of Habit チャールズ・デュヒッグ

 

「きっかけ」とは、例えば煙草を吸う方であれば、会議が終わった後などに喫煙室へ行くという習慣がついている方も多いのではないでしょうか。

 会議が終わる(きっかけ) → 喫煙室へ行く → リラックスできる、談笑が出来る(報酬)

 上記のようなルーチンを変えるには、会議が終わった→喫煙室へ行くのではなく、例えば外に空気を吸いに行きストレッチをする、気心が知れた人のところへ話にいくなどと新しい行動のきっかけを作り、そこでリラックスしたり満足感が得られる「小さな報酬」を与えることが重要だそうです。

 良い新しい習慣を身につける為には、その行動を始める「きっかけ」とそれをすることにより自身が得る「報酬(物理的なものだけでなく心理的なものでもいいそうです)」を決めて実施することがコツだそうです。

 米国では、良い習慣を身につけ、生産性、創造性を高めるために「瞑想」が流行しているそうです。これも、瞑想という行為をすることにより、リラックスできる、脳がすっきりしたという報酬を得ることで新しい習慣が出来ていくのです。

 

■  米国で流行しているMeditation(瞑想)

 生産性を低下する原因の一つとして「脳の疲労」が原因であると言われています。脳の疲労は身体的な疲労ではなく、ストレスや情報過多になり、脳が正常に機能しなくなった状態を指します。肉体的な疲労よりも回復するのに時間がかかると言われており、また、生産性やクリエイティビティにも影響を与えやすいと言われています。

 その脳疲労の解消法として、米国では瞑想(Meditation)をする人が多くなっています。GoogleやApple、Facebookなどの企業も社内研修に瞑想の研修を入れるなどし、シリコンバレーやニューヨークでは、今一番人気のある研修は瞑想だとも言われています。深く鼻から息を吸って口から吐く腹式呼吸を意識するだけでも、脳に行く酸素量が増え、疲れにくくなり、また効率も上がるそうです。ちょっと集中力が下がってきたとき、仕事が忙しい時にこそ、数分だけでもこうした時間を取りリフレッシュする時間を取るようにしてみてはいかがでしょうか。

 

 弊社では、経済産業省やNEDOのプロジェクト等で自身の健康管理に関するプロジェクトを推進する中で、健康増進に向けた「行動変容」ということが、企業にとっても、働く自分自身にとっても、健康で、生産性高く、また幸せに働くためには大変重要だと感じています。新しい環境になったことをきっかけに、または自ら新しい習慣を作ることで、変化する「きっかけ」を作って頂ければと思います。

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