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組織能力の強化とグローバル・マネジメント人材(2)

ジャイロ経営塾代表 ワイ・エイ・パートナーズ株式会社 代表取締役
秋元 征紘
「多様性に富むグローバル企業こそ、会社や事業と個人の感情的な絆が重要」。
外資企業4社の経営トップを歴任されてきた秋元様が、グローバル企業の条件の一つとして挙げるのは、むしろ日本的とも思える「絆」という言葉でした。
 
今回のグローバルエイジコラムは、前回に引き続き、秋元様の弊社賀詞交換会でのご講演「組織能力の強化とグローバル・マネジメント人材」の後編をお届けいたします。
 
ニューチャーネットワークス
 

■ジャイロ経営について

今日は時間の都合もありますので、簡単にサマリーにしますけれども、このような4つの学びを2つの切り口から整理してみました。1つは、会社をよくする。もう1つは、個人をどうしたらしっかり鍛えられるかということです。
 
皆さんには申し上げるまでもなく、経営の基本理念であるヴィジョン、ミッション、バリューというというのは非常に大事です。私がゲランの日本法人の社長に就任したときは基本理念を、出来るだけわかり易い表現にすることにあえて務めましました。
 
例えば、ヴィジョンは「朝起きたらすぐ行きたくなる会社にする」といった具合に。
そして重点を置いたのはこのメッセージを店舗の社員、本社幹部社員、一般社員やアルバイトも含めたチームを構成する全員に徹底することだったんですね。多くの会社で掲げられているヴィジョンは、もっと難しく長いものが多いわけですが、私の場合は、この表現的にはむしろ単純とも思えるメッセージの伝達を、あらゆる機会を通して繰り返し伝え、その意図を徹底的に説明、疑問に答える形でのコミュニケーションを徹底するという形をとりました。
 
ミッションは「日本のセグメントされた高級な香水、スキンケア(基礎化粧品)、メイクアップの各市場において、健全な収益性と優秀な人材によって構成された組織を備えた、最もプレスティジャスなブランドとなる」でした。ここでのポイントは売上シェアナンバー1ではなくて、「最もプレステージなブランド」と「健全な収益性と優秀な人材によって構成された組織を備えた」というふうにしました。これもあとで戦略計画を立てるときにすごく大事なコンセプトだったんです。もちろん年に一度のオフサイトの経営戦略会議は常にこのテーマから議論がはじまりました。
 
バリュー、これは「愛する」こと。ブランドの伝統と現代性を正しく理解し、そして愛すること。製品を愛し、顧客が美しくなることを心からの喜びとし、顧客を愛し、共に働く仲間を愛すること。これは年間2-3回行われる美容部員の新人トレーニングに頻繁に使われたフレーズでした。
 
こういう一見単純とさえ思えるメッセージ、それをあらゆる機会に、徹底的に11年間コミュニケーションすることによって、事業的には株主を十分満足させる成果を出させていただきました。
 
ここでもうひとつ非常に大事なことがあります。それは目標が明確で、かつそれが絞り込まれているということです。まさに小泉(元首相)さんじゃないですけれども、今日のグローバルな事業環境での事業展開は「創造的破壊」のプロセスです。私は大学で一番読んだ経済学の本がシュンペーターなので、彼の「イノベーション」「企業家精神「創造的破壊過程」といったコンセプトは理解しているつもりです。特に「創造的破壊」に関しては、皆さまも良くご存知のように、別に小泉さんの造語ではないんですけれども、なぜか一部の勉強不足なマスコミの人が誤解したようです。
 
いずれにしてもグローバルな事業環境や価値観が急激に変化してしまう、そういう時代に経営のヴィジョン、ミッション、バリューという軸を保つことは非常に大切でありながら、難しいんですね。私たちの主張は、実は社員の心をマネージして「感情的な絆」をしっかりつくれば、基軸としての基本理念は安定するということなんですね。
 
日本的経営」っていう言葉がよく使われます。日本の経営の「三種の神器」として終身雇用、年功序列や社内組合がありそれがその強みの源泉とされた事もありました。時代は変わりましたが、私はいぜんとして日本的経営の強みっていうのはやはりピープルにあるんだと思うんですね。1960年代から90年代までの日本的経営がうまくいった理由は、人と会社との関係が西欧社会とは違っていた、つまり社員の会社の目標と戦略への強いコミットメントが在ったという事がすごく大きかったと思います。
 
グローバル社会で事業が勝ち残る条件、そのエッセンスはなにかというと、明確な目標と絞り込まれた戦略、そして「感情的な絆」を伴ってそれにコミットした社員がひかえているという事だと思うんですね。
 
過去においてもその方法は異なりますが、社員が目標とか戦略に対してパッショネイトなコミットメントをするということをうまく実現できたのが日本的経営だったと私は思います。グローバル社会で通用するような形でこれが実現できれば、それは単なるリストラや小手先での対策とは異なる、組織活力を強化する上での永続的な解決策になると思うのです。これを私たちは「ジャイロ経営」と呼ぶことにしました。
 
なぜジャイロかというと、物理学では「ジャイロの原理」というのがありまして、「回転する物体はその回転状況を維持する」つまり慣性の法則の話ですが、経営においても同じ様なことが考えられるということです。
 
表1.

 
このような発想から、表1のような2つの軸で組織の活力を分析し、活性化のための施策を提言する為に「ジャイロ調査」が開発されました。
 
「戦略の理解が高い」を縦軸の上に、そして低いのを下に。「やる気が高い」を横軸の右に、そして低いのを左とし、社員を表2のように「やる気社員」「あきらめ社員」「しらけ社員」「ダメ社員」あるいは金・銀・銅・鉄の4グループに分類します。そうしますと、それぞれのグループの特徴は表2のようになります。

表2.

残念ながら今日はすべてを説明する時間もありませんが、当然ながら戦略が理解できてやる気がある金グループが理想です。
あきらめ社員は、決して出世をあきらめたとかそういうことでもないんですが、要するに、やる気があるが戦略の理解が今一歩ということですね。
それに対して、戦略はよく理解しているけれども、やる気がない。これをしらけ社員または銅社員と呼びました。けっこう日本の組織はこのグループを容認する傾向にありますが、ジャック・ウエルチはこういう人たちは「直ぐに追い出せ」と言っています。
そして両方がダメなのはダメ社員または鉄社員です。
このよう社員を先ず分類し、その構成からその組織の活力の実態あるいは問題点を診断する事がその第一歩になります。

表3.

そしてこの分析作業の最も大切なことは、このような調査結果を構成している要素はなにかという事と、問題解決のための解決策は何処にあり、どのような施策が最も効果的かという問いに答えることです。イントラネットで行われるこの調査は70から80くらいの設問で構成されていています。
 
表3にありますようにそれは「自身について」「会社に対して」「会社からの待遇/評価について」「コミュニケーションについて」と「社内環境について」の5つの側面からの要因が分析され、そこから重相関分析等のプロセスを経て抽出された問題解決との相関の高いドライバー要因が明らかになります。
 
この調査を行う前に対象企業のクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)が組織され、各社の状況に合わせた調査のカスタマイゼーションを行いますが、このような結果に基づき私たちとCFTのメンバーで最適な施策が検討され、トップマネージメントへの提案がなされます。
 
またその過程で「戦略の絞込み」あるいは目標・戦略の明確化が不十分と判断された場合には、私たちがトップマネージメントと一体になりこのCFTのメンバーと戦略の内生化を図るプログラムも用意されています。
 
さらには経営理念や戦略の徹底のためのオフサイト戦略会議のファシリリテーションのプログラムもあります。
 
実は現在、皆さまへの具体的なプロポーザルを、高橋社長のところと共同で準備させていただいていますので、もしご興味のある方はぜひニューチャーネットワーク社のほうにご連絡いただければと思います。

■グローバル・リーダー人材研修について

そしてもう一つが、グローバル人材適性診断とそれに基づいたグローバル人材の研修です。一般的なお話として世の中には結果が出せる人、出せない人というのがありますが、それを表4.にまとめてみました。

表4.

そしてそれを拙著『一流の人たちがやっているシンプルな習慣』(フォレスト出版、2010年)でご提案させていただいたWACCの4原則に沿って、グローバル時代の骨太人材について少しお話させてください。
 
本でも具体的にお話しましたが、これ等は先ず第1に「志、勇気、意思」といった精神力。そして「勝利へのこだわりと達成意欲」に裏打ちされた俊敏な行動力、「既存概念や利害関係をこえて創造的破壊を生み出す」発想力、そして「感動と結束を生み出す」コミュニケーションの4つです。

表5.

この基本にそってさらにグローバルな環境での問題にフォーカスしますと、1番の精神力にダイバーシティつまり「文化的な多様性への対応力」を、3番の発想力に加えて「問題解決力」を加えたグローバル・リーダー人材研修の内容を、国立ウェールズ大学MBAの田所邦雄教授に参加いただき高橋社長のところで準備されています。
 
ダイバーシティの問題は、グローバル化のなかで今やほとんどの企業にとって避けて通ることの出来ない現実です。私自身も海外留学が2年、日本企業のニューヨークとトロントでの現地法人で8年近くの経験をしました。つい最近まではフランスは毎年7~8回、KFC、ペプシ、ナイキ時代にはアメリカに年に4~5回、そしてこの30年ほど毎年数回アジア諸国に出向いて仕事をしてきました。
 
このような体験の中で1.の精神力に加えてこの多様性への対応力、つまり:
 
1)異なった文化や価値観や習慣を好奇心を持って積極的に理解できるか
2)そのような習慣、生活、環境を拒絶しないで主体的に受容できるか
3)そのような社会の中で埋没せず、自らのアイデンティティを維持・対応できるか
 
はグローバル社会で活躍する為の大切なコンピタンシーであることを実感させられました。
 
2.の行動力、これも普通ですと勝利へのこだわりと俊敏な行動力ですむのですが、特に大切なのは:
 
1)異質で困難な環境の中でも諦めず、問題を解決し、目標を達成できるか
2)自身を積極的にアピールし、人に頼らず、自らすすんで実践できるか
3)状況の変化に対して、躊躇することなく、迅速に対応できるか
 
が重要なのです。イメージとしては海外の現地法人で会社を代表することになった、あるいはボスが外国人になってしまったといったことを想定しています。
 
3.の発想力に関連した問題解決能力。これも同じです。
 
1)既存・自身の方法に固執せず、異なる環境を肯定的に理解し、柔軟に対応できるか
2)異なる環境に適応し、画期的・効果的な解決策を見出せるか
3)異なった考え・価値観を持つ構成員の中で、リーダーシップを発揮し、合意を形成できるか
 
4.のコミュニケーションにおいては:
 
1)相手の異なった考え・価値観を理解・受容し、その本質を理解できるか
2)自らの考えや計画を、相手の理解を確認しながら、論理的に説明できるか
3)クリエイティブなプレゼンテーションで多くの相手・聴衆を納得させられるか
 
グローバル・リーダー人材研修は、この4つのテーマに沿った、ワンセッション2日で8回のプログラムです。参加者それぞれの個人の事前・事後のグローバル人材適性診断の活用や、海外での体験研修も含まれた実践的なプログラムとなりそうです。

■グローバルビジネスで成功するためには

グローバル社会での成功条件というのは:
 
1)個人あるいは組織が、グローバルに説得力のある方針を掲げて、
2)明確な目標と絞り込まれた戦略を強力に、そして迅速に展開できる能力
 
の2つです。

表6.

この表にあるように、世界・地球の抱える問題は、新聞紙上や雑誌あるはテレビの報道番組といったあらゆるメディアで毎日のように指摘されているテーマですよね。そして右側の企業活動のハードルは皆さまが日々取り組まれている問題だと思います。
 
ここでの大切な視点は、これ等をすべてチャレンジリストだというふうに、あるいはチャンスのリストだと考えるということだと思いますね。
 
先にお話させていただいた「日本的経営」いうのは、一言でいうとホモジニティつまり単一民族・文化の強みを真正面に出した経営だったんですね。しかし今やダイバーシティつまりグローバルな多様性への対応力を強みとし、一方ではパッショネイトに目標や絞り込まれた戦略にコミットしたグローバル社員が、期待をはるかに超えた結果を生み出せる「新・日本的経営」が求められており、その実現こそが新たなチャンスを生み出すと思うのです。
 
GDPが中国に追い抜かれた問題に関連して、最近は就活中の学生さんによく言っていることがあります。私たちは今や、あの高度成長の時代のように会社のために自身の人生を省みずにしゃにむに働く必要もないし、まして戦前の若者たちのように国のために死ぬ必要もない良い時代に生きている。会社は自己実現の場の一つと考え、その目的のために他の選択肢も考慮しながら選べば良いのだと。
 
「日本一」になることが「世界一」へのステップであった時代は終わったと考えれば良いのではないでしょうか。極端な表現をすれば、個人も会社も嫌になったら国を出て行ってもいいわけですね。そういうことをしても、ものすごく大きなチャンスが手に入って、もしかすると「世界一」とか「地球一」になるチャンスがある、そういう時代に生きているのだと。
 
この様なポジティブな発想で今のグローバル化の時代に足を踏み込んでいくということは、実はすごく痛快なことだと、楽しいことだと、そういう風に考えないと、本当に、今みたいなつらい時代はやっていけないんだろうなと思います。
 
そういうことでBon Voyage!「いい旅」を、皆さんぜひ。私ももう何十年もグローバルビジネスの大海を航海をしてきました。水先案内人としてかなり腕はいいほうですので、もしお役に立てるならぜひ声をかけてください。ご清聴ありがとうございました。

(おわり)

秋元征紘(あきもとゆきひろ)

秋元征紘(あきもとゆきひろ)

・所属・役職
ジャイロ経営塾 代表
ワイ・エイ・パートナーズ株式会社 代表取締役

・略歴
上智大学経済学部卒業、シドニー大学経済学修士課程修了。
70年日本精工株式会社に入社。80年日本KFC株式会社に入社後、86年同社取締役、87年日本ペプシ・コーラ副社長、88年日本 KFC株式会社常務取締役。93年株式会社ナイキ・ジャパン代表取締役社長。95年ゲラン株式会社代表取締役社長、01年ゲランS.A.(パリ本社)執行役員、 05年ゲラン株式会社会長を歴任。現在、ワイ・エイ・パートナーズ株式会社代表取締役。

・著書・訳書など

『一流の人たちがやっているシンプルな習慣』(フォレスト出版、2010年)

『こうして私は外資4社のトップになった』(東洋経済新報社、2009年)

『「ジャイロ経営」が社員のやる気に火をつける-パッションカンパニー-』(ファーストプレス、2008年)
秋元征紘ブログ http://akimoto.livedoor.biz/archives/51498215.html
ジャイロ経営塾HP http://www.gyrokeieijuku.com/

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