
「ライフネット生命のチャレンジ」(2)
■ライフネット生命の4つの経営方針
野口悠紀雄さんは戦後の経済体制を1940年体制とし統制経済と呼んでいます。大蔵省が金融商品の中身を決め、銀行、証券、保険会社はただ商品を販売していました。この政策は大成功し、1992年に日本は世界第2位の経済大国になりました。その後、金融自由化に路線変更し郵政民営化や金融ビックバンが起きました。日本の生命保険会社は金融自由化に伴い各社が比較され競争することは嫌がり、保険に特約をつけて複雑化するようになりました。同時に保険料をアップすることに成功したのです。しかし複雑化し過ぎた結果、保険会社自身も保険の中身が分からなくなり不払い問題につながってしまったのです。
ライフネット生命にはビジョンの他に経営方針が4つあります。1つ目は「真っ正直に経営する」ことです。お客さまから何年も先に保険金の支払いがある保険を、開業して決算を一回経験しただけの会社を信頼して加入してよいかというご質問を受けることがあります。例えるならライフネット生命は初任給をもらったサラリーマンと同じです。信用はありません。だからライフネット生命が最初に用意した2つの商品は掛け捨てにしています。金利が低い時代、掛け捨てなら業界のセーフティネットである生命保険契約者保護機構によってほぼ100%保護されます。ライフネット生命の運用の大部分は国債など高格付の円債のみなので昨年の米国発の金融危機でも無傷でした。
経営方針の2番目は「生命保険をもっとわかりやすく」です。もっとも条文が少ない約款の実現や支払事由の明確化、ウェブサイトの工夫もしています。
経営方針の3番目は「生命保険を安くする」です。ライフネット生命は業界最低水準の割安な保険料を実現しています。保険料を安くするのは保険会社の義務と思っています。
生命保険は4つの市場があります。子育て世代向けでお子さんが大学に入ればいらなくなる「死亡保険市場」、年金や介護保険からなる「生存保険市場」、わが国独特の法人税制に着目した「経営者保険市場」、そして「医療保険市場」です。ライフネット生命は定期死亡保険である「かぞくへの保険」と終身医療保険の「じぶんへの保険」という2種類の商品しかありません。ライフネット生命は資本金132億円、従業員は60人程度とベンチャー企業としては大きいですが、何兆円という自己資本があり何万人もの従業員がいる日本の生命保険会社に比べれば小さな存在です。4つの市場に全面展開するよりは2つの市場にしぼったほうが良いと考えました。
経営方針の4番目は「生命保険を、もっと、手軽で便利に」です。ライフネット生命のコンタクトセンターは平日の夜10時まで営業しています。他の会社のコンタクトセンターは夕方17時や18時でテープになってしまいますが、昼は仕事をしていてやっと時間ができる夜に連絡できるよう夜までつながるコンタクトセンターにしています。お客さまが生命保険に何を望んでいるか調査しましたが、1位は保険料が安くなること、2位は商品がシンプルでわかりやすくなること、3位が各社の保険商品を横並びで比較できるようになることでした。当然の結果と思います。ライフネット生命をスタートして一番嬉しいことは、開業以来ずっと契約が伸び続けていることです。お客さまに私たちの思いが通じているのだと思っています。
また次に嬉しかったのは、FPや保険ジャーナリストへのアンケートで、自分が入りたい保険ランキングの1位に選ばれたこと*です。厳しい目を持つ保険のプロの方々にも評価していただき、非常にありがたく思います。
*株式会社ダイヤモンド社発行「週刊ダイヤモンド」の2009年3月14日号特集企画「保険のムダ 総点検」
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