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脱「事なかれ」、決断する経営への転換

アドバンテッジパートナーズ代表パートナー/TMI総合法律事務所 パートナー弁護士/ニューチャーネットワークス 代表取締役
笹沼 泰助氏/淵邊 善彦氏/高橋 透

「グローバル・エイジ」のリーダーからの提言

2012年10月11日、日経ビジネス主催のセミナー「アジアにおける競争戦略コンセプト ―「戦略」「投資/マネジメント」「法務」3つの視点から―」にて、弊社ニューチャーネットワークス代表取締役の高橋透が、アドバンテッジパートナーズ代表パートナーの笹沼泰助氏、TMI総合法律事務所パートナー弁護士の淵邊善彦氏と共同講演を行いました。本コラムでは、同セミナーでの三者によるパネルディスカッションでの議論の一部を(ご本人の許可をいただき)掲載させていただきます。

■福島(コーディネーター)

ではパネルディスカッションでは、日本の重要な産業である電機業界をモデルとして考えてみたいと思います。電機メーカーには優秀な人材もいる、いろいろな技術もある、これらをなんとか成長につなげていきたいと、メーカーの皆さんが思っています。現在何が問題で、今後どのような対策があるのかについて、お三方それぞれの視点からご指摘いただければと思います。

 

■高橋

ご存知の通りリーマンショックによって日本の電機業界も大きな影響を受けています。最近でも早期退職の話などが新聞でも頻繁に取り上げられていますし、直接そのような話を聞くこともあります。問題を指摘することも重要ですが、でも過去を振り返っていても仕方ない。将来を見ていかないといけません。私はもちろん役員の方ともよくお話ししますが、メーカーさんの研究所の方とか、最前線でご活躍されている方ともよくお会いします。そこで感じるのは、現場には非常に強い人材や技術がある。日本の製造業はもっと誇りと自信を持っていい。最前線の方とお会いして本当にそう思います。今の経営者だけを批判するつもりはありませんが、全体的な体質として、やはり意思決定が遅いとか、マネジメントが機能していないとか、そういった経営上の問題があると思います。かつて1980年代90年代前半くらいまでは良いと言われていた仕組みが、今では逆作用している。かつての我々の強みが弱みになっている。事業を選択して、あるいは縮小したり撤退したりということもあり得る話だと思います。その流れのなかでは、カーブアウトやスピンアウトというのもあり得ると思います。それがきっかけで企業のガバナンスも変わるかもしれません。簡単なことではないと思いますが、経営の見直しの一つとして考えてみたらいかがでしょうか。私もコンサルタントとして経営者の皆様にそのようなご提案をしています。三年前だと「何のこと言っているの?」とか「そんなことありえない」とか、そういった反応だったのですが、最近では「それいいね」「そういう道もあるのかな」と言ってくださるようになりました。なぜこれまでそのような議論がなかったのかというと、それは単純な問題で、機会が少なかったからということが大きいと思います。しかし最近では成功事例も増えてきました。事業再編に関する知見も充実してきました。前向きな具体策として検討してよいと考えます。

■笹沼氏

そうですね。日本には高度に多角化された大企業が多くあります。まずは企業規模を大きくするということを命題にして進んできたのだと思います。私もずっと以前には、あるメーカーにおりました。そこでもそういう経営をされていて、いつかは利益が出るときが来ると信じておりました。日本企業は長期的な視点で経営しているから、利益を出すときは今ではないと信じていたのです。しかしその、利益が出るというときは今まで来ませんでした。経営の方針を、今変えるときだと思います。以前、日米の企業セクターごとの過去30年の収益性を比較したことがあります。結果、ただ1年を除いて、日本企業は米国企業に比べて低い収益性に甘んじています。企業はキャッシュフローが増えてくるというタイミングがありますが、そのときにはいろいろな新しいビジョンが出てきたり、新規の投資が見えてきたりします。しかしこれまでそれをせずに、資源をバラバラといろいろなところに分散させて、そしてどの分野でもリーダーになれないという状況が続いているわけです。それで全社合算すると非常に低い収益性に甘んじているということになっているのです。これを変えるときが来ていると思います。事業ポートフォリオを真剣に見直して、様々な事業の中でキャッシュを生んでいくのは何なのか、ここでやりたいことは何なのか、よくROICという投資評価手法がありますが、追加投資の優先順位を付けていく。今後、キャッシュを生まない、利益を生まないと判断されたものは、たとえ競合他社は行っていたとしても自分の会社は投資すべきではないという判断ができると思います。そのような事業は外部化するなり、他社に売却するなりしていきます。事業の再構築を図るという意味では、今が絶好のタイミングではないかと思います。再編の際には資金が必要になりますが、今は非常に低金利ですので、金融機関からも資金を受け入れやすいですし、我々のような投資ファンドが、高い投資リスクをも前提として投資するというのもあり得ます。そのような事業の再構築はどうかというのを、経営者の方とお話ししています。

■福島

今、お二方から事業再編、特に外部に事業を出す可能性についてご指摘がありました。淵辺先生から見られて、経営層に見られる課題としてどのようなポイントがあるとお考えでしょうか。

■淵邊氏

私が相談を受けるのは、ある程度すでに事業戦略や計画の画ができていて、その画を実現させるためには法律的にどうしたらいいでしょうかという相談が多いですね。できればもっと早い段階から相談していただけると法律的な観点からいろいろな選択肢を含めてアドバイスできることが多いのですが。たとえばすでに一部実施してしまっていて、始めてしまっているんですがどうしましょうという相談だと対応が限定的になります。いずれにせよ事業再編のご相談の中には、それこそクーデター的な事例、つまり一部の社員による再編計画というのもあります。そこでは会社全体の意思はどうなっているのかという話になることもあります。暴れる社員とでも言うのでしょうか。ただ一方で、経営者層の人で、そういう事業再編を仕掛けようという人はまだ少ないようですね。やはりサラリーマンとして勤め上げて役員になったものの、役員と言っても任期がある。しかも、役員の上にはさらに会長がいて名誉会長がいて顧問がいてとなると、いろいろなところに目配せをしなくてはならない。そういうしがらみがあって、なかなか資金を集めて決断しようという勇気のある経営者がいないというのが多くの業界の話なのではなかろうかと思っています。事なかれ主義と言ったら言葉は悪いですが。法律で役員には善管注意義務というのがあって、会社に損害を与えてしまったら役員の責任が問われると、それを恐れているんでしょうか。しかし経営の上での判断というのは法律上比較的緩やかに裁量が認められる傾向があります。逆に何もしないで、やり過ごそうとするほうが、よほど経営者としては善管注意義務違反なのではないかと私は思っています。それくらい、今何かしなければならないのではという状況の会社は多いですね。そのための法律上の手法なりはいくらでもあるので、ご相談いただければアドバイスできると思います。

■高橋

日本では会社や事業は「家」みたいなものという感覚があって、それで自分の事業が壊されるのは嫌だと思っている。でも今、その「家」が守れなくなってきている。雇用を守るという意味では日本が世界でダントツですね。それでも今、人に手を付けざるを得なくなってきている。これは一つの大きなきっかけになりますね。

■福島

お三方からいろいろなお話があったように、まだまだ日本企業、もちろん電機業界の企業さんをはじめ、強みはまだまだ様々にあります。昨今では特にアジアの企業との競争が激しくなって見失いがちですが、まずはその強みについて再認識することが必要ですね。海外のマーケットに魅力的なところはたくさんあります。その時の留意点として法務や知財の話もあります。グローバルに展開していくときには国内での業界再編という話も必要になってくるかもしれません。カーブアウトやスピンアウトのような、これまで日本企業ではあまり馴染みのなかったキーワードも今日は出てきました。ぜひ皆さんの企業の今後の発展にお役立ていただければと思います。

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