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「目標達成の10原則」による突破力(後編)

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

組織パフォーマンス向上「グローバル・ビジネスリーダー」

本コラムの前篇では、どんなに優れた経営者であっても、あるいは戦略計画を専門にしているコンサルタントであっても、到達したいビジョンやゴールを示しつつも、3年先、5年先のことが完全に見えているわけではなく、全ては不確実で、不安の中にあるということをお伝えした。
そして、その不安な状況を打壊し前へ進むためには、目の前の優先課題とその目標を達成することに集中する習慣こそ、すべての成功のベースであることとを述べた。前回は10原則のうち、5つに関して説明した。繰り返しになるが、5つの原則とは以下のとおりである。
 
原則1:90日という短期の目標を設定し、全力集中する
原則2:目標を達成しなければいけない環境を人工的に作り出す
原則3:積み上げ発想を捨て、全てのことを結果から考える
原則4:準備や詳細計画から入らず「アクション」から始める
原則5:毎日、朝、昼、晩と目標達成を常に実感する
 
今回は、10原則のうちの後半の5つについてお話ししたい。

原則6:アクションの優先順位を変える勇気と行動力をもつ
計画と実際は大きく異なる。しかし多くの企業、組織は、あらかじめ計画したことを確実に実行しようと考える。そこに計画と現実のギャップが発生し、目標達成が難しくなる。多くのことは現場でアクションしないとわからない。確かに安易に計画を変えるのはよくないが、必要とあらば大胆にアクションの優先順位を変えることが重要である。
そのためには、90日間のアクションプランを細かくブレークダウンする前に、大まかなシナリオを考えておくことが効果的である。シナリオとは、簡単に言うならば、課題解決の優先順位やストーリーである。動いてみて、考えていた状況と異なるようであれば、このシナリオそのものを変える。それに伴いアクションも変更する。
シナリオを変えるには、組織トップの了解が必要である。そのため弊社がブレークスループロジェクトを進める際には、一週間に一度、トップを含めた30分ぐらいの短時間ミーティングを行っている。このミーティングの場で、必要に応じて柔軟にシナリオやアクションを変えることにしている。アクションからわかったことをベースに、トップダウンとボトムアップを繰り返して、独自の解を見出していくのである。この解のことを「行動解」と呼び、反対に机上だけで考えた解を「理論解」と呼んでいる。「行動解」こそが、他社との差別化になるのである。

原則7:ルーチンではなくドラマチックな展開をつくる
そもそも人間は本来、毎日同じことを行い続ける習性がない。太古の昔、人は風を読み、動物の動きを感じ、常に変化する自然と戦ってきた。現代のように産業化されて初めて、毎日同じことを繰り返し行うようになった。これは私の考えではあるが、毎日同じことを繰り返し行うことは、人間の本能に反することではないかと思う。実際同じことばかりを繰り返している人は、仕事での感性も鈍くなり、環境変化への反応が鈍っているように思う。毎日どうなるかわからない中で、変化に対応して必死に生き延びようとしている人の方が生命力もあり、パフォーマンスも高い。
目標を達成するには、変化する環境に敏感でなければならない。そのため、時にはドラマチックな場面をつくることが効果的である。たとえば、競合や顧客などの環境の動きを厳しく把握して危機感を強くしてみたり、目標達成の期日をあえて短くしたり、目標そのものの質を上げたり、さらにはプロジェクトメンバーを少なくしたりするなど、ショッキングだが、まるでドラマのような展開をつくりだすのである。不思議なもので、多くのプロジェクトでは、意図せずともドラマチックな展開になることが多い。大事なのはその状況を楽しみ、挑戦する気持ちになることである。

原則8:過去の考え方、やり方を壊す
達成すべき目標を達成できないのはなぜか? 答えは単純で、環境から求められる行動や考え方に比べて、実際のそれとの間にギャップが存在するからである。ではなぜギャップが発生してしまうのだろうか? それは多くの場合、過去の成功体験に縛られているからである。人は誰しも「以前はうまくいった。だから今回も以前の考え方と方法で行えば成功するだろう」と考える。しかし複雑で難易度の高い課題では、そのような発想は通用しない。
過去の発想ややり方を壊すためには、様々な工夫が必要である。たとえば若手のメンバーや外国人、外部コンサルタントをプロジェクトメンバーに入れることや、競合ベンチマーキングや、顧客調査を徹底して行うことなども効果的であろう。
しかし何よりも、「原則1」で挙げたように90日という短期で達成すべき刺激的なゴールを設定したり、「原則2」で挙げたように目標をなんとしても達成しなければいけない環境を人工的につくること、つまり極限まで追い込まれるような状況こそ、過去の発想を捨てるよい機会となるのである。

原則9:成功し始めたら一気に加速する
プロジェクトはある一定以上の時間を経過すると、小さな成功が繰り返されるようになる。環境変化にアクションがマッチし始めた瞬間である。そしてこの時がチャンスである。この小さな成功を加速させるため、集中してプロジェクトに取り組む。具体的には、以前よりも時間を多く費やすことや、すべてのアクションを、行動を通して発見した成功要因に集中させること、他の組織から人材を調達し投入することなどである。
面白いもので、プロジェクトが成功し始めたことを広く組織全体にアナウンスすると、組織内外の人が集まってくる。人は皆、勝ち馬に乗りたいのだ。しかしそれは大変よいことで、結果としてリソースが多く投入される。このようにして「成功するべくして成功する」のである。「あのプロジェクトは俺が手伝ったから成功したんだ」と言い出す人が多く出始めれば、すでにそのプロジェクトは大成功といえよう。

原則10:キャパシティが大きくなったところで次の戦略を実行する
いくら素晴らしい戦略であっても、組織にそれを実行するキャパシティがなければ多くの資源が無駄に消費される。今回取り上げた「目標達成力」とは、戦略実行のキャパシティともいえる。
90日間のブレークスループロジェクトによってキャパシティがある程度拡大できたところで、次の戦略を実行する。キャパシティの拡大と戦略をスパイラルアップさせることが、強い会社、組織を構築する大事なコツ、両輪である。
ダイキン工業や、トヨタ自動車をはじめ日本の自動車産業の企業、キヤノンやニコンなどの精密機械産業の企業など、長期に渡って業績の良い会社、組織を思い出してほしい。大胆な企業リストラクチャリングの場合を除き、そのような会社や組織では、強みをベースにして、実行のキャパシティを広げていき、その上に戦略を載せていくことが多い。実行のキャパシティを広げる方法を、優れた企業は独自に「カンバン方式」「セル生産」「クロスファンクショナルプロジェクト」などといった呼び方をしているだけかもしれない。

今回は、成功するための思考や方法論として「目標を達成する力」という基盤的なことを取り上げた。今一度基本に立ち返って、自分自身の足元を見直したいものである。

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