「大胆で挑戦的な仮説が構想できているか?」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第44回
事業構想書や事業計画書のような報告書で、顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデルなどの戦略コンセプト仮説をどのように表現するかは悩むところでないでしょうか。仮説は初期の段階のいわば結論ですから、最終結論とあまり大きなギャップはつくりたくない気もします。しかし私は、最終結論はともかく、初期の仮説は「大胆で革新性があり挑戦的」なものであるべきと考えます。だからこそ検証する意味や面白さがあり、また世界観との関連性や繋がりも感じられるからです。このようなことも含め、仮説には3つのことが必要であると思います。①世界観の説明要因になっていること ②3つがストーリーになっていること ③「仮説」らしく大胆で革新性があり挑戦的であること、です。
①世界観の説明要因になっていること
世界観は商品、事業の独自の哲学、理念です。しかしこれは概念論であるため、間髪入れずに具体論を展開しないとイメージが残りません。そこで世界観の説明要因として顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデルなどの戦略コンセプトが示されます。大事なことは世界観と、顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデルなどの戦略コンセプトの繋がりです。世界観は大胆ですが、具体的な仮説が平均的、標準的な話だと、拍子抜けします。
②3つがストーリーになっていること
仮説である顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデルがストーリーとなっているかどうかも大事な観点です。仮説を商品からでなく、顧客経験価値から説明することはとても重要です。あくまでもこれまで経験したことがない革新的な経験価値が先にデザインされ、それを実現する手段として商品が存在するという順番が必須です。顧客は売手のビジネスが先行していないか、顧客の経験価値が主体になっているかどうかに大変敏感です。いくら顧客経験価値という言葉と使っていても、ビジネスが先行していれば、顧客は引いてしまいます。商品やビジネスを先行させるのではなく、あくまでも新たな顧客経験価値を先行させ、その夢を実現させる方法としての商品でなければなりません。ビジネスモデルも同様で、顧客経験価値を実現させるための手段としての位置づけとその表現であるべきです。
③「仮説」らしく大胆で革新性があり挑戦的であること
仮説は、想定外で、大胆で革新性がなければ意味がありません。そして挑戦的であるべきです。大胆で革新的で挑戦的なので、その検証に興味を持ちますし、参加する人の新たな学習も生まれます。思考の揺さぶりが必要なのです。平均的、標準的で、答えが見えているものは「仮説」とは言えませんし検証もする価値はありません。
大胆で革新的で挑戦的あることとは、具体的に、経験価値が人の本質を突きながら、全く新しい世界をつくりあげていることや、それを実現する商品のコンセプトが、これまでにない新規性があるもので、価値が高いこと、実現手段としてのビジネスモデルが優れた経済性と高い増幅性を持つことなどです。これらは検証されるべき仮説ですが、検証された結果は別として、思い切り発想を飛ばした仮説を示すべきです。結果、結論という「落とし所」を意識した仮説は仮説ではありません。