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チームとしての儀式を行う(ルーティンによる強いマインドセット) ブレークスループロジェクトを組織化するための条件(2)

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

ブレークスループロジェクトを組織化すること、つまり「最も親しい5人の部族(トライブ)」組織をつくり、運営するための必要条件に関するコラム2回目は、「チームとしての儀式を行う(強いマインドセット)」です。

マインドセットをつくるためにはルーティンが重要

ブレークスループロジェクトにおいてはパーパスが重要であり、それを体得するには「経験の場」が必要であることは前にも述べました。そこでブレークスループロジェクトで最初に行なうべきことは、プロジェクトに参加して成果を出すためのマインドセット、つまり「心構え」をしっかりつくることです。

マインドセットの重要性は、ビジネス界よりむしろ、勝ち負けがはっきりしているスポーツや将棋、囲碁などの世界でもっと強く意識されているように思われます。

米国大リーグで数々の記録を残している大谷翔平選手は、シーズン中も毎日10時間以上の睡眠をとり、外食することもほとんどありません。昨年のシーズン末、「高いレベルで健康にプレーできた理由は?」とのマスコミの質問には、次のように答えています。「毎日同じルーティンをこなせたと思いますし、それに伴って周りの人のサポート。僕1人だとできないので毎日同じ時間に同じことをできるスケジュールを話し合いながらできたのがよかったと思います」(スポニチアネックスより)

一方、打席に立ってからのルーティンは状況に応じて変更しています。昨年のシーズン途中からは、「構える直前にバットを地面に置き、ホームベースと三塁線の延長線上に合わせ、軸足となる左足の立ち位置を確認する」という新たなルーティンを取り入れました。どちらのエピソードからも、大谷選手が勝つためのルーティンを非常に重視していることがわかります。

ビジネスにおいてもルーティンは重要です。ユニクロのショップ内での徹底した整理整頓、トヨタをはじめ日本が誇る製造業での5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動など、優れた業績をあげる組織には必ずルーティンが存在しています。

ルーティンとは習慣であり、一種の「儀式」です。それは以下のような効果を生みます。

  • ルーティンをすることで精神を集中させ、雑念を取り払うことができる
  • ルーティンと成功を結び付けることで不安が消え、成功を信じられるようになる
  • ルーティンをすることで自分のペースをつくれる
  • ルーティンをすることで自分や周りの変化に気づきやすくなり、考えや行動が調整できる

ブレークスループロジェクトにおいても、効果的なルーティンを行うチームとそうでないチームでは、成果が大きく異なります。とくにキックオフミーティング、中間報告、最終報告という大きなイベントの時、また毎日・毎週・毎月の行動計画の策定と振り返りする際には、チームとしてのルーティンがとても重要となります。

また、チームメンバー個人がそれぞれやるべきゴール達成するためには、チームのルーティンと類似性を持たせた個人のルーティンを決めておき、実行することが効果的です。

■強い感情と自発性をもたらす「身体的な行為」をルーティンに

この場合のルーティンで大切なのは、言葉よりも「行為」であること。会議などでただリーダーの話を聞くよりも、皆で掛け声を唱和したり、整理整頓や掃除をしたりするほうが、圧倒的に効果が高いのです。声を出したり動いたりという身体的な行為は、五感を通じて強い感情を醸成し、人の思考や行動に作用するからです。言葉による理解を超えた強い感情をつくることで、やるべきことに関して自発的な思考や行動を引き出すのです。

身体活動のルーティンによって引き出された自発的な思考や行動は、言葉による論理的な理解から生まれたものよりもエネルギッシュでパワフルです。メンバー全員が自発性を持てば、互いに刺激し合い、チーム全体がパワーアップします。メンバーのエネルギーが繋がりあい増幅されることで、チームの強いマインドセットが醸成され、「チーム経験価値」が高まっていくのです。

ブレークスループロジェクトでの効果的なチームルーティンの例をいくつか挙げてみましょう。

  • 声に出して言う:行動指針や目標、アクションなどを各自大きな声で宣言する
  • 特定の場所を決める:プロジェクトルームなど集中できる場所を決めて集まる
  • 特定の場所に行く:プロジェクトの大事な場面で、会社の屋上、海辺の公園など特定の場所を決めてそこに行く
  • 互いに褒め合う:毎日、毎回、互いに良いところや良いアクションを褒め合い、皆がポジティブになる
  • 一緒に食事をする:ランチなど一緒に食事をして関係を深めると同時にチームの結束を高める
  • 音楽を活用する:チームのテーマソングやテーマ音楽を決めて、会議の初めに皆で聴く

実際にやるところを想像すると、少し気恥ずかしい感じがするでしょうか。でも、そのぐらいの方がマインドセット醸成には効果的なのです。大事なことは不安を取り除き、ポジティブなマインドを持つために、五感で感じる効果的な「行動」を引き出すこと、それを加速化させることです。

■どのようなことをマインドセットするのか

では、具体的にマインドセットの内容はどんなものであるべきでしょうか。チームで掲げたブレークスルーゴール、個人に分担されたやるべきこと、それらを意識した内容であることは当然ですが、もっと大切なことがあります。それは「自分とチーム・会社・社会とのつながり=空間」と「自分と現在・未来とのつながり=時間」を意識することです。

「チーム・会社・社会とのつながり=空間」の意識とは、自分の考えや行為がチームや会社を助け、さらにはその先の顧客や取引先、関係者など広く社会に貢献する、ということの認識です。個人の行為の、組織・社会的な意義や重要性の認識といっていいでしょう。ルーティンの中で、今〇〇をやることは、チームや会社にとって○○だから重要で、〇〇という顧客やその先の〇〇業界や社会全体のためになる、といった意味づけを行うのです。「〇〇社会をつくる」といった短い標語をつくり、効果的な場所・シーンで、「○○社会をつくる」ことに繋がると思われる行為を、何らかの形で実践するのも効果的です。

「現在と未来とのつながり=時間」の意識とは、今日の自分の行為が、プロジェクトスタートから90日後のゴールに結びついていること、その先にある「会社のビジョン」につながり、さらに社会の未来へとつながっている、ということの認識です。各メンバーの今日、今この瞬間のアクションが、組織や社会の未来に寄与していることを認識できるルーティンのアイデアがあるといいでしょう。例えば、一人のメンバーの昨日のアクションが今日の○○にとても役に立った、と褒めるのも良い方法です。

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