
頻繁なコミュニケーションと協働(高い接触頻度)① ブレークスループロジェクトを組織化するための条件(5)
前回まで、ブレークスループロジェクトを組織化するための条件として、(1)価値観と目標の共有、(2)ルーティンによる強いマインドセット、(3)帰属意識と役割、(4)明確な行動規範、について述べてきました。5つ目の条件は「高い接触頻度」。すなわち頻繁なコミュニケーションです。プロジェクトにおけるコミュニケーションの重要性について基本的なところから見ていきます。
■コミュニケーションが苦手な人・得意な人、それぞれの悩み
人とのコミュニケーションが苦手という人の本音を聞くと、次のような悩みを抱えていることが多いようです。
- 自分は話ベタなので、なかなか相手に理解してもらえない
- 相手の気持ちを察するのが苦手である
- みんなで話していても、自分で気づかないまま話題からズレたことを言ってしまい、場がしらけることが多い
- 年代や所属部門などが違う人とは話が合わないので、会話が続かない
- そもそも、なぜ仕事以外で人とのコミュニケーションを大事にしないといけないのかわからない
一方、コミュニケーションは比較的得意と思っている人にも弱点はあります。職場では例えばこんなことはないでしょうか。
- ついつい一方的に話してしまい、気づくと相手の話をよく聞いていない
- 仕事のことは自分が一番よく知っていると思い、人の話は聞かず先に結論だけ言ってしまう
- 若い人や仕事のことをよくわかっていない人の話を聞くのは時間の無駄と感じてしまう
- 議題から脱線した余計な話をしすぎて、会議の時間が伸びてしまう
- 差しさわりのない話は得意だが、言うべき事実をストレートに指摘するのは苦手である
いかがですか?これらの一つや二つ、どなたも心当たりがあるのではないでしょうか。
■なぜコミュニケーションは必要か
原点に立ち返って、人は何のためにコミュニケーションするのか考えてみましょう。我々は無意識にコミュニケーションしていますが、その必要性とはどのようなことなのでしょうか?
理由①パーパス・ビジョンを共有し続けるため
人はだれしも職場、学校、趣味などのサークル、地域活動、オンラインコミュニティなど何らかの「組織」に属しています。そして、どんな組織も理念あるいはパーパスなどと呼ばれる組織の「目的」、および、ビジョンなどと呼ばれる「ありたい姿」を持っているはずです。
組織は時代や環境の変化の中で、常に存在意義を模索し追求しています。変化に合わせ、パーパスやビジョンの再解釈、時にはアップデートが必要になることもあるでしょう。そうした絶え間ない活動を通して組織は進化していくわけです。そして、それらの活動を可能にしているものこそ、組織構成員の間の、また組織外部とのコミュニケーションにほかなりません。
また、組織に所属する個人にとっても、自分自身のパーパス・ビジョンと組織のパーパス・ビジョンとの共通性を確認したり、組織との関係を深めたりするためにも、コミュニケーションが必要です。コミュニケーションを通して自分の仕事の意義を見出し、仕事の価値を創造していくことができるのです。
理由②まわりとの関係を構築し、それを維持・発展させるため
人にとって、「成長する」ことと「周囲との関係が良好に発展する」ことの間には、強い相関関係があります。この場合の「周囲」とは、職場であれば同じ部門の同僚や他部門の社員、社外の取引先、お客さまなどです。まわりと良好な関係を築いていけば自然と良いフィードバックがかかるようになり、人は成長していきます。
また、企業経営の世界で近年重要性が増していると言われるものに「ビジネスモデル戦略」がありますが、これは企業とその周囲との関係性に関する戦略です。周囲との関係を維持・発展させるためには、コミュニケーションが欠かせません。人・組織と周囲の関係が強化され、互いに良いフィードバックがかかるようなコミュニケーションの仕掛けづくりが重要になってきます。
理由③互いにものごとの認識を変え、大きく成長するため
人と人とのコミュニケーションが深まれば、互いが成長していきます。では、コミュニケーションが深まるとは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。それは、パーパス・ビジョンを基軸として、人と人の間で以下が起こることです。
- 互いにサポートし助け合う(補完関係)
- 互いの意見・アイデアが融合して新しいアイデアが生まれる(創造)
- アイデア実現のため協力し合う中で、互いにものの見方・考え方が変わり、新たな能力を身に着けていく(学習)
このようにコミュニケーションを通じて関係が深まっていくことで、人は学習し大きく成長していくのです。