
行動指針を持つ(明確な行動規範)① ブレークスループロジェクトを組織化するための条件(4)
ブレークスループロジェクトを組織化するための条件に関するコラムの4回目は、「行動指針を持つ(明確な行動規範)」です。
■生き生きと仕事に取り組むために――行動指針の重要性
みなさんは毎日の仕事に生き生きと取り組むことができていますか? 日々のルーチン業務でもプロジェクトベースの業務でも、「やらされ感」でこなしてしまっていませんか?
そもそも仕事のやりがいとはどこから来るのでしょう? 給与や休暇などの福利厚生はもちろん大事です。でもそれらは良い暮らし・良い仕事をするための環境をつくるものであって、仕事そのもののやりがいとは関係ありません。
仕事のやりがいとは、その仕事に意味を感じることです。それはつまり、自分の取り組む仕事が「会社組織や市場や顧客にとって『なくてはならないもの』につながっている」という実感であり、さらには、自分自身の人生でやり遂げたいことにつながっているという実感です。「ああ、この仕事やりたくないなあ」と感じたときは、その内容を点検してみてください。組織や顧客にとって、また自分自身にとってどんな意味があるのかよくわからない、という場合が多いはずです。
職場のどんな業務であれ、背景や理由の丁寧な説明なしに、取ってつけたような目標の提示や機械的な作業指示を受けるだけでは、その仕事に意味を感じることは難しいでしょう。指示をする側の管理職がその仕事の意味を部下に説明するのは当然ですが、同時にそれを受けとる担当者の側も、与えられた仕事の意味を問い、考える姿勢がとても大切です。なぜこの仕事をするのか、その背景や問題意識を深掘りし、上司や周りと共有することが必要なのです。
ここで思い出してください。「ブレークスループロジェクトを組織化するための条件(1)」で説明した「パーパス」設定の重要性です。パーパスとは「組織が志向・体現する価値観」を表わしたもので、組織のメンバーが仕事の意味・活動の意義を考えるとき、常に拠り所となるものです。
ただ、パーパスは高次の目的を表現するため、どうしても抽象的になりがちであることは否めません。それを補う意味で必要になるのが「行動指針」です。行動指針は、現場で実際に人がどう行動すべきかを示したもので、「バリュー」とも言います。90日の短期間で進めるブレークスループロジェクトにおいても、パーパスおよび行動指針を持つことがとても重要です。
例を挙げましょう。ブレークスループロジェクトのパーパスを「先進IT技術で設備の保守点検を進化させ続ける」とした場合、行動指針としては以下のようなものを設定することが考えられます。
- 今の「常識」を疑う
- トライアンドエラーを恐れない
- オープンなマインドで多様な意見を取り入れる
- 常に仮説を持つ
- 新しい技術を試してみる
パーパスを実現するための行動をこのように具体的に例示することで、プロジェクトメンバーは自分が実際にどう行動すればよいか理解できます。特にプロジェクト活動の途中で迷ったり悩んだりした際は、行動指針の中の一つでも実行することで状況が変わります。これは現場で働くメンバーに限ったことではなく、管理職や役員でも同じです。