「マーケティングリサーチとは想定している顧客経験価値の検証のひとつ」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第45回
マーケティングリサーチとは、顧客経験価値と商品、ビジネスモデル仮説の検証作業
マーケティングリサーチとは、顧客経験価値仮説とそれに基づいた商品企画やビジネスモデル企画の検証の作業です。マーケティングリサーチを元に何か新たな企画をするのではありません。
すでにビジネスを行っている企業は、すでに顧客経験価値とそれを実現する商品とビジネスモデルが存在していますから、新商品開発よりも検証は行いやすいはずです。特にオンラインビジネスでは何かしらの顧客のデーが常時企業側に入ってきていますから、マーケティングリサーチを素早く行い顧客経験価値仮説を見直すことは容易です。
新商品開発のマーケティングリサーチで重要なのは、仮説として設定された顧客経験価値が本当に存在するのかと、それを創り出す商品やビジネスモデルは、その顧客経験価値を満足させるものになりえているかどうかです。単に商品に対するある時間の、あるシーンの断面での満足度を検証することではありません。経験価値という時間的な流れにそって満足しうるかどうかを検証する作業です。
顧客経験価値重視の商品開発のためのマーケティングリサーチは以下のようになります。
①顧客の経験価値とマクロトレンド分析
PEST分析=P(Politics:政治) E(経済:Economy) S(社会:Society) T(技術:Technology)などのマクロトレンドが、顧客の感覚、感情、思考、行動、共感などの顧客経験価値にどう影響を与えるかを時間軸で分析します。PEST分析の個々の要素からいくつかのシナリオが構想でき、そのシナリオ別に顧客の変化を予想します。例えば世界的な新型コロナの影響は、直接人の感覚、感情、思考、行動、共感などの顧客の経験価値を大きく変え、その結果消費行動を変えました。また新型コロナは、PESTの各変化要因に多大な影響を与え、それらの変化が複雑に絡み合いながら、顧客の経験価値に影響を与えています。マクロトレンドが大きく変化する時は、顧客の経験価値も大きく変わり、今までなかったビジネスチャンスも生まれるのです。
②顧客の経験価値とエコシステム(業界構造)分析
マクロトレンドが変化すれば当然エコシステム(業界構造)も変わります。エコシステムは、産業生態系と訳していますが、その生態系が変わるのです。具体的には、エコシステムを構成するプレイヤーやその数が変わり、新規参入プレイヤーが増加したり、撤退したりします。そのプレイヤー同士の関係もまた変わります。例えば、川上、川下のプレイヤーの力関係の変化などです。エコシステムの変化は、顧客経験価値に影響を与えます。顧客経験価値は、エコシステムやその中のビジネスモデルやそれを構成する企業や組織が生み出す商品や情報提供と顧客の関係で創生されていきます。エコシステムと顧客経験価値は相互関係ですから、その分析は単に原因と結果の関係だけでなくシステム構造的な関係で変化していくと思われます。
③有望市場分析
有望市場分析とは、仮説として企画された顧客経験価値と商品やビジネスモデルにとって有望と考えらえる複数の市場に関し、獲得可能性のある市場領域はどこかということと、その市場特性とそれらの動向を分析することです。市場特性とは、市場ライフサイクル、市場規模、成長性、参入企業の数、規模、顧客の数、規模、ニーズ特性、技術特性など市場を特徴づける要因です。その要因の現在の状況と将来の変化の方向を把握し、どの有望市場が獲得可能かを探ります
④ターゲット顧客分析
有望市場の中で獲得可能性のあるターゲット顧客を絞り込み、その属性(特徴)の現状と将来の変化を把握します。ターゲット顧客の感覚、感情、思考、行動、共感などの顧客経験価値の時間軸での変化、つまり現在から将来の変化の動向を探るのです。ビジネスチャンスはこのターゲット顧客の経験価値の変化にあります。そして現在企画している商品、ビジネスモデルなどが変化する顧客経験価値を支援し、良い方向に発展させることができるかどうかを考えます。