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第11回ブレークスループロジェクトが求められる背景にある、「未来に向かった価値観の変化」とは 人が集まり、互いが成長する組織 ~人・組織への投資と、学習・成長の仕掛けによる戦略~

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

ブレークスループロジェクトのような現場起点の活動が、人・組織面、ビジネス面などあらゆる点で効果を発揮するのはなぜでしょうか。その背景には「仕事に関する価値観の大きな変化」があります。それは、「昔こうだったのが今はこうなった」という過去形の話ではありません。今まさに起きつつあり、これからも続いていく変化のことです。ブレークスループロジェクトは、この「未来に向かった価値観の変化」を先取りしているからこそ、参加者はみな前向きに、元気に取り組むことができるのです。

そんな「未来に向かった価値観の変化」の中から代表的なものをいくつか取り上げてみましょう。

変化1:誰もが多くの情報にアクセスできて、指示を受けなくても自律的に仕事ができる環境になってきた
以前と比較すると、上司から指示を受けなくても仕事を進められる人が多くなりました。理由はいくつかありますが、最大の理由は、誰もが仕事に関連する情報に簡単にアクセスできるようになったこと、そしてチャットツールなどで常に情報共有が可能になったことでしょう。仕事の状態がわかっていれば、自分のミッションが明確である限り、やるべきことはおおよそ見えます。

個人の生活も同じです。様々な情報に容易にアクセスできる今日、どうすればいいかわからないときも、検索さえすればたいてい解決できます。つまり、仕事上でも生活上でも、誰かが細かく指示したり管理したりする必要がなくなっているのです。必要ないのに指示・管理されると、人は効率の悪さを感じ、リズムが崩れて仕事も生活も楽しくなくなります。

その点、ブレークスループロジェクトでは基本的に指示・管理は行われません。すべてのメンバーが自律的・有機的に動くことを前提としているので、プロジェクトが進むにつれ各メンバーの裁量権はどんどん広がっていきます。その結果、組織は活性化していくのです。

変化2:組織の上位者に意思決定を仰ぐよりも、AIなどを活用してその解析結果データから自分で判断したほうが早くて的確、という場面が増えてきた
仕事の中でAIを活用する機会が増えています。過去の経験知やデータが十分に蓄積されていれば、AIが解析結果を瞬時に出してくれます。それに基づいて判断するなら、誰がやっても結果はそう変わらないことが多くなってきました。例えば「V特性を持つ地域店舗でA広告とD店頭販促を投入した結果について、他の3つの方法を採用した場合と比較すると、効果が30%以上高かった」とわかれば、その効果的な手法を使うという判断は誰でもくだせます。

しかし現実にはどうでしょう。こうすればいいとわかっているのに上位者に判断を仰がなければならず、そのために時間を要したり、無駄な会議に出なければならなかったり。場合によっては決定を先延ばしされたりするかもしれません。これではフラストレーションもたまります。

今後さらにAIが仕事の中に浸透してくると、意思決定は現場の最前線で進むようになります。意思決定→行動→行動結果のデータ解析→振り返り→次の意思決定と、仕事のスピードと精度はどんどん上がっていくでしょう。

ブレークスループロジェクトでは、行動した結果のデータをできるだけ記録し、次の効果的な行動の資源として投入します。意思決定はメンバー自身、もしくはコンパクトなプロジェクト組織内で迅速に行いますから、上述のようなフラストレーションは発生しません。

変化3:職場は「お金を稼ぐ場」であるだけでなく「自分のやりたいことを追求する場」と認識されるようになってきた
今は人手不足が深刻で、労働市場は産業にかかわらず売り手市場です。人が会社に選別される時代から、会社が人に選別される時代になったのです。転職機会も多くなりました。同じ会社内でも、もはや社内公募は当たり前。そんな状況下で、以前は基本的に「お金を稼ぐ場」だった職場に対し、お金以上のものが求められるようになっています。

「お金以上のもの」とは、自分のやりたいことができるかどうか。つまり自己実現やそのための学習と成長の機会に他なりません。そうした機会が2~3年に一度の社内研修だけというのでは社員は辞めていくでしょう。やりたいことがわからないという人でも、学習と成長の機会が与えられれば次第にやりたいことが見えてきます。毎週、いや毎日でも自己実現・学習と成長の機会があることが、モチベーション維持に不可欠なのです。組織にとっては、この「学習と成長の機会」のサイクルを高レベルで提供し続けることが、優秀な人材獲得のために非常に重要だということがおわかりいただけるでしょう。

ブレークスループロジェクトでは、メンバーはこれまであまり経験していないテーマに関して毎日小さなアクションを起こし、振り返りを行います。規模は小さくても頻度が高い、そしてフィードバックまでの時間が短い。これこそまさに「高サイクルの学習と成長の機会」と言えます。

変化4:一人で仕事するよりも組織で仕事する方がクリエイティビティは高まる、ということがわかってきた
業務効率化・デジタル化のおかげで仕事は究極まで分業が進んでいます。加えて2020年初からのコロナパンデミックでは多くの人が在宅勤務を余儀なくされ、「一人でする仕事」がますます増えました。

一方で、「一人仕事」の限界も判明しつつあります。会話が少なく、自分と異なる発想やアイデアに触れる刺激が少ない、対話から得られるアイデア創発の機会がない、大きな仕事へのチャレンジが難しく、こぢんまりとなって大きな達成感が得られにくい、などなど。多くの方に思い当たる節があるのではないでしょうか。

今後AI活用などでDXがさらに進めば、人には人にしかできないことが求められるようになります。それは、新しい物事を創造するクリエイティビティです。クリエイティビティを生み出すために重要なのは、異なる文化・価値観・専門知識・年代間の対話やコラボレーション。すなわち、いかに効果的な対話やコラボレーションの場をつくれるかが勝負になります。

ブレークスループロジェクトは、多様なバックグラウンドのメンバーで構成されます。ファシリテーター役を置き、効果的な対話を行います。そして実行段階では、スピード感の高い、リズムやテンポのよいコラボレーションが行われます。その結果、思ってもみなかったアイデアやコンセプトが誕生するのです。

変化5:偶然も含め、人や組織とのご縁・つながりが自分の未来を切り拓くということを理解する人が増えてきた
自分の人生を振り返って「あの人とのご縁がなければ今の自分はない」といった意味の発言をされる方が少なくありません。出会いやつながりはそれほど重要だということです。人と出会い、つながることが、自らの気づきや新しい物事の発見を促してくれる。そうやって未来の自分が次第にできあがっていくのだと、多くの方が認識されているのではないでしょうか。

「良きご縁」を生むプロセスは、まず個人が情報発信や問題提起など自発的に行動を起こすことから始まります。それを促すには、その行動を起こさなければいけないような適度な刺激のある環境が必要となります。そして、同じくらい重要なのが、その行動をきちんと受けとめてくれる「場」があること。そのような「効果的な場」で自発的行動が行われて初めて、一見偶然のような出会いから「ご縁」が生まれるのです。

SNSはじめネット環境が隅々まで普及した現在、ただネット空間で一方的に発信しているだけでは自分の人生は前に進まないことを、多くの人が理解し始めているのではないでしょうか。受けとめてくれる効果的な場があってこそ、行動が「良きご縁=つながり」を生む、という認識が広がってきていると思います。

ブレークスループロジェクトにおいては、まず心理的安全性が担保された環境で自発的行動が誘発されます。それらの行動がプロジェクトチームという「効果的な場」で受けとめられることによって、強いつながりが誕生します。つながりは次第にプロジェクト外部にも広がっていくでしょう。このプロセスを通じて学習が起こり、人は大きく成長するのです。

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