社会課題解決入門「社会課題とはどのようなものか」第4回
社会課題の7つの特性を理解するー3
特性5:影響要因が多様でかつ相互に影響し合い変化しやすい
課題の影響要因が多様でかつ相互に影響し合っていることも社会課題の定義を難しくしています。太陽光発電普及のテーマでいえば、既存の電力事業者は太陽光発電が導入されると、収益が悪化し安定電源や送電線への投資が難しくなり、相反する関係です。自然環境保護団体が、太陽光発電システムの設置に対して森林保護の観点から反対すれば、太陽光発電の普及が遅れ、地球環境は悪化する方向に進むかもしれません。このように課題の要素は複雑な相互関係にあり、何が課題なのかを明確するのが難しいのです。
課題自体や課題の影響要因を取り巻く環境が常に変化しています。太陽光発電普及のテーマを例にすると、従来のシリコンをベースにしたものに比べて高変換効率で、曲面にも設置できるペロブスカイト太陽光発電などの技術開発の進展や、ロシアのウクライナ侵攻による各国のエネルギー政策の変化、エネルギー価格高騰による消費者の節電志向の高まりなど、様々な環境変化があり、社会課題そのものも変わっていきます。
特性6:通常の意思決定のやり方が通用しない
これまでの社会課題の特性でも述べた通り、社会課題は定義や範囲特定が難しく、様々な影響要因が相互に絡み合っているため分析も難しく、課題解決の手法も特定しにくいことがほとんどです。課題の分析、解決手法の特定が難しければ、社会課題解決の選択肢を比較し、最良のものを論理的に意思決定することが困難といえます。課題を部分的に切りだし、分析し、意思決定していったとしても、また新たな問題や課題が発生すると思われます。また意思決定の責任を問うにも、社会課題の範囲やかかわるステークホルダーが多く、責任の範囲もあいまいになりがちです。社会課題に関する意思決定は、その考え方や体制、方法を根本的に見直す必要があります。