社会課題解決入門「社会課題とはどのようなものか」第3回
社会課題の7つの特性を理解するー2
特性3:メンバーが多様で利害対立も多く合意形成が難しい
課題が広範囲であることは、当然関わる人、組織も多様で、そのメンバー間での利害対立も多くなり、合意形成が大変難しくなります。各メンバー組織の一義的な目的でいえば利害はなかなか一致しません。例えば、太陽光発電のケースだと、地域住民の立場でいえば、太陽光発電の設置によって景観が悪化したり、土砂災害の不安があったりすることを嫌います。一方、地球環境保護の一義的な目的としては、一つでも多くの太陽光発電の設置が必要であると考えます。各人や組織の一義的な目的では、利害が対立しやすく、合意形成はかなり難しいものとなります。社会課題はそのメンバーが多様ですから産業内や社内のテーマと比較し困難さのレベルが格段に異なります。
特性4:計画に時間がかかり、その計画自体が陳腐化しやすい
特性1から3までで述べた通り、社会課題の多くは、定義や範囲の設定が難しく、また多様な利害関係者が存在します。社会課題の分析と解決策の探索には時間がかかり、解決策が見つかったとしてもその計画に時間がかかります。
政府が主導するマイナンバー制度は、古くは1968年に当時の佐藤内閣が「各省庁統一個人コード連絡研究会議」を設置したことから始まったと言われています。その後「納税者番号制度」「住民基本台帳ネットワークシステム」などの議論を経て、2009年平成22年度税制改正大綱で議論され、2013年(平成25年)のマイナンバー法の成立に至りました。長くみれば40年以上、短く考えてもこれまで10年以上導入のための計画に時間を費やしています。マイナンバー制度を検討、計画している間に、スマーフォンやアプリや電子マネーなどの多くのITが普及しました。また東日本大震災などの巨大災害なども経験し、個人を特定することに関する国民の認識も大きく変わってきました。おそらく担当行政の方々は相当に苦労して計画自体何回も書き直してきたのだと思います。
社会課題のテーマによりますが社会課題解決のための計画は、一般的に長い時間を費やし、環境変化により計画を何度も見直す必要性が生じることがほとんどです。同様ですが、課題そのものと環境変化もあり、たとえ仮に範囲を設定したとしても課題の範囲もまた常に流動的なものとなります。