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社会課題解決入門「独自の社会課題を構想できるかが勝負となる」第1回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

「企業内の最適化」だけから「社会の最適化」を目指すことが必須に

ここ数年「パーパス」というキーワードがよく使われるようになりました。パーパスは理念とどう違うのか、単なるバズワードではないかとも思いますが、時代背景が変化してきたことにより、あえて「パーパス」と呼ぶ意味もあるように思えます。その違いは「企業がどうしたいのか」から「企業は社会をどう変えるのか」といった、社会課題にストレートに向き合い、企業が社会に対し積極的に働きかけることにあります。では、多くの企業はなぜ「社会をどう変えるか」といったパーパスを真剣に考えるようになったのでしょうか。

それはこれまでの企業活動が、ともすると企業内の最適化、具体的には財務的利益追求に偏った経営をし、その基盤となる地球環境や社会に悪影響を及ぼしてきたことへの社会全体からの見直しです。例えば、多くの産業が石化燃料に依存してきたことによる大気汚染や地球温暖化などの地球環境悪化や、一部の人や組織への富の集中による経済格差の拡大による社会の活力の低下、犯罪の増加などです。企業内の最適化=内部経済の最適化だけではなく、社会の最適化=外部経済の最適化も追求しなければならなくなりました。

パーパス以外でもこれまで、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)やCSR(「企業の社会的責任」Corporate Social Responsibility)や、SV(「企業の社会的責任」Creating Shared Value)といった類似のキーワードが話題となってきましたが、企業が地球環境維持や社会課題の解決に積極的に貢献することは、企業が存続するための必須条件であるというコンセンサスがすでにできているといえます。

「企業が積極的に社会課題解決に貢献する」ことは、顧客、株主、国や行政などすべてのステークホルダーから厳しくチェックされるようになりました。企業理念で「豊かな社会に貢献する」「社会の発展に寄与する」などと言葉で表現するだけでは許されません。具体的な投資やアクションが求められています。顧客は社会的にマイナスな影響をあたえている企業の製品やサービスは購入しません。その情報はネットなどで一瞬のうちに広がり、不買運動につながります。一方で、社会課題解決を具体的に行っている企業は、ステークホルダーから高い評価を受け、結果として業績も向上します。米国パタゴニアは、自らのビジネスを変えるだけでは不十分と判断し、2019年にパーパスを「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」に変え、新事業として、ユーズド品のリサイクル事業である「Worn Wear(新品よりもずっといい)」や「リジェネレティブ(環境再生型農業)」「食品業界への参入」をスタートさせ、業績も伸ばしています。

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